表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
第二章
49/51

16話 ネコ

連日の終電ギリギリで帰宅すると深夜0時を軽く回っている。帰ってから食欲があるわけでもなく、その辺にあるチョコをつまんではぼーとする毎日。


スマホ確認し……な、きゃ……


顔を洗う余力もなくベッドに横たわる。朝ぎゅっと握ったままのスマホのアラームで目が覚める。


一馬くんに連絡しなきゃと思いつつ、時間がないのをいいことに後回しにしていた。どっちにしろ浮気した私を一馬くんは快く思わないだろう。それならいっそのこと……。


「だめだめ!」


寝不足がたたり思考がどんどんと後ろ向きになっている。とりあえず今日の業務を遂行すべく、シャワーを浴び着替えを済ますとすぐにアパートを出た。


「おはようございます」


「三崎さん、おはよう。昨日頼んだ書類上がってる?」


出勤してすぐ蓬莱さんに声をかけられた。


「あ、今持ってきます」


自分のデスクに着くと、書類の山で今にも雪崩が起きそうになっていた。やばい。書類、書類、昨日帰りがけにプリントアウトして……


「あ!」


隣のデスクの佐倉さんが声に驚いて足をデスクにぶつけていた。


「す、すいません。佐倉さん大丈夫ですか?」


佐倉さんは声にならない声で大丈夫と合図を送る。すると私の声に反応して菅原さんまでやってきた。いつも通りの髪の毛ボサボサ、やる気の見えない菅原さんに少しホッとした。


「……どうかしましたか?」


「頼まれた書類プリントアウトするの忘れてて……今からやります」


「……その机でですか?」


今にも崩れそうな書類はパソコンのキーボードをも侵食し、まずはこの書類をどうにかしないとダメなことに気づく。


「……よかったら俺のデスク使っていいので」


「え? でも」


菅原さんがふいに蓬莱さんを見やる。そうだった! 仕事の鬼、蓬莱部長は時間には厳しい。このまま片付けなんてしていたら、自己管理能力をズタボロにディスられ再起不能になるのは間違いない!


「あ、ありがとうございます!」


すぐに菅原さんのデスクに着くと、私のフォルダを開き必要な書類をピックアップしていく。菅原さんのデスクにはほとんど無駄なものというか、物自体がないのに驚かされる。きっとあぁ見えて仕事出来るんだろうな……なんて考えているとデスクの端に可愛いネコの置物がちょんと置いてあった。


まじまじとネコを見つめていると菅原さんが戻ってきた。


「ありがとうございます。書類助かりました。菅原さんってネコ好きなんですか?」


「……自由でいいです」


この人から自由を求めている発言が出るとは!? 十分に自由な感じしますけど……とは言えず、そそくさと退散し蓬莱さんに書類を提出した。


「……うん、だいたいいいかな。ここだけもう少し分かりやすくまとめて」


「はい」


「三崎さんが来てくれて本当に助かったわ。この辺の仕事はほぼ一人で菅原が抱えてたから」


菅原さんが……それにしても今は分担しながらでやっとなのに、今までこれを一人で菅原さんがこなしてたなんて。さっきの自由が欲しい発言もうなづけるかも……。


午後ひと段落すると、屋上テラスへ足を運んだ。社員が利用するこのテラスにはベンチやちょっとした菜園が併設されており休憩にはもってこいの場所である。


私はスマホを取り出すとメッセージアプリから一馬くんの名前を探す。


「元気にしてる?」


そこまで打って、アプリを終了した。こんなことメッセージで伝えるのはなんか違う。だけど、直接会ってわざわざ「私浮気しました」なんて言うの?


「……はぁ」


けどあの花火の日以来、一馬くんからの連絡もない。きっとリハビリが忙しかったり、一馬くんのことだから私の仕事を気遣って連絡を控えてくれているに違いない。


会いたいような、会いたくないような複雑な気持ちを抱えたまま午後の業務に取りかかるためテラスを後にした。

私生活がまるで見えない菅原さん。ネコが好き。何故なら自由だから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ