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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
第二章
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14話 握手会

初日とは打って変わって職場は戦場のようだった。どうやら昨日は初日の私に気遣いにより、いつもより穏やかな雰囲気を作り出していたようだ。


「……三崎さん、この手配お願い」


「あ、はい。わかりました!」


菅原さんからも少なからず仕事が回ってくるようになった。なんだかこのめまぐるしさも懐かしく思う感覚で、私には心地いいものだった。


「これは先週何度も確認したわよね!!」


一瞬にして部内の空気が張り詰めた。蓬莱さんが穏やかでない空気で問い詰める。


「あ、あの、すいません……」


あれは確か今年度入社の北条さんだ。髪は肩にかかるかかからない程度のボブで、背は小さく、第一印象は小動物のリス?とか小鳥のような?男子なら誰もが守りたくなる存在であろう。


「三崎さん、ちょっといい?」


「は、はい!」


え?私?蓬莱さんに呼ばれるようなヘマはまだしてないはず!!しかしその迫力に背筋が伸び、心臓もうるさい。


「今日15:00から開催の真咲あかり先生の握手会があります。手違いで会場の準備がまだ終わっていないの。三崎さんは北条の補佐に回って、書店との打ち合わせと会場設営まで14:30までに終えてきて」


14:30って、最低でも今人気のある『真咲あかり』の握手会なら2時間前には会場設営が厳守なはず、時計をみるともうすぐ正午を知らせようと針が動く。


「菅原!あんたは真咲先生のピックアップお願い!私も出来る限り早めに現地に入るから」


「……はい」


隣では何をしていいかわからずおどおどしている北条さんがいる。ここは私がしっかりしなきゃ!握手会なら何度も経験してる。大丈夫、やれる。


「北条さん、行きましょう」


私は北条さんに声をかけるとデスクから必要な書類を集め書店へと急いだ。


書店についたのは12:20分を回った頃だった。


「四つ葉さん、どうゆうことですか? 困りますよ! 昨日の段階では午前中には会場設置まで終える予定だったのでは? すでに握手会の列ができ始めてて……」


「大変申し訳ございません。早急に会場の設営と、来場者の誘導を行わせていただきます」


深々と頭を下げる。


「……もしかして、三崎さん?」


え?顔を上げ書店の責任者である女性を見上げる。


「柴咲さん!?」


「やっぱり三崎さんだ! 急に担当から外れていなくなっちゃうからびっくりしたんだよ! ちょうど片岡ハジメのフェアやってたときだよね? ……でも今は四つ葉にいるの?」


柴咲さんは前の会社に勤めてたときに知り合った書店員さんで、好きな作家が一緒だったこともありすぐに意気投合したのだ。


「……あー、まぁ募る話は後ほど! 今は真咲先生の握手会成功に向けご協力のほどよろしくお願いします!」


またまた深々と頭を下げる。


「頭を上げてください。三崎さんがいてくれるなら安心して任せられるわ。私たちにも何か出来ることがあったら言って」


「……柴咲さん」


先程より穏やかに私たちの話を聞いてくれ、何とか握手会に向けてスタートを切ることが出来た。


まもなく蓬莱部長も到着し謝罪をすると、握手会の設営について柴咲さんと話を進めていく。北条さんもお客さんの誘導や真咲先生用の待合の準備など、自分で出来ることを率先して取り組んだ。なんとか真咲先生の来場までに一通り準備が終わった。


「まもなく真咲あかり先生入られます」


いつもののんびりペースとは違い髪もしっかりセットして、ハキハキと話す菅原さんが真咲先生を待合に案内する。真咲先生を拝見したのはこれが初めてだったが、噂どおりの美人女子高生だった。


「よろしくお願いします」


可愛らしい声でそう挨拶すると待合に入っていった。ここからは部長と北条さんがサポートに入り、握手会終了まで様々な雑務に追われる。


「じゃ……僕たちは会場の方に移動しようか」


菅原さんに声をかけられ私も会場へ移動した。


「初め、誰だかわかりませんでしたよ」


「……これ?」


菅原さんが髪を少量つまみクルクルと指先で遊ばせる。


「……普段は省エネなので」


「そうなんですね。そっちのが断然爽やかな感じで素敵ですよ」


菅原さんは私の方を見ると嫌そうな顔をする。あれ?変なこと言ったかな?


「……普段はさぞ、見苦しい姿をお見せしてしまい申し訳ありません……」


「……いやー、菅原さんそうとりますか」


「じゃ、どうゆう意味ですか?」


「……あー、まぁいいです」


菅原さんが肩を落とすのがわかった。菅原さんの違う一面を見れて、少しだけ菅原に近づけたような気持ちになった。そうこうしている間に握手会が幕を開けた。



明日から雨模様。GW中休みです。一日中書けるかな……なんて。

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