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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
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04話 3月のひそか雨

大学は春休みに入ったが、野球部は練習漬けの毎日を送っていた。4月から3年生の俺は部の中心として6月に迫った大会に向けて追い込みをかけていた。


今日はたまたま雨がひどく、室内トレーニングにメニューを切り替えていた。練習時間はいつもより短く夕方前には各々練習を切り上げていった。


「橘、お前もそろそろ上がれよ。」


「おう、お疲れ真田。」


帰り支度を済ませ駅前まで来ると、母から頼まれた本のことを思い出した。自宅とは反対方向の電車に乗り二駅の所にある本屋へ向かった。駅を出ると先程より雨足が弱くなっていた。


「いらっしゃいませ。」


カウンターから店員の声が響いた。スマホを取り出し、本の題名を確認する。今話題の新刊だったようで目立つところに陳列されていた。一冊手に取りレジに向かう。前に並んでいた人が会計を済ませ立ち去ると、俺はカウンターへと足を運んだ。


カウンターに傘をかけ、本の会計をしようとすると店員は俺と目が合うと何故か固まっている。俺なんか変な格好してるか?いや、さっきロッカーでちゃんと確認してから出てきた。それとも、どこかで会ったことあったか?ぐるぐると頭を働かせるが思い当たることは出てこなかった。


「三崎さん、大丈夫?」


隣の店員が心配そうにその『三崎』とゆう店員に声をかけた。店員は我に返ったようで、俺から本を預かり会計を始めた。なんかよくわからんけど、そこまで赤くなられるとこっちまで意識してしまう。会計も終わり商品の入った袋を受け取ろうとしたとき、


「あ、あの!」


その店員に呼び止められた。くっきり二重のその両眼が俺を捉えている。彼女の肌は白く余計に頬の赤みを強調した。まるで初恋の人物を見るように…、ヤバい俺まで意識をもってかれそうになる。初めてあったのに胸が早鐘を打つかのように彼女の存在を意識し始めそうになる。


「あの…。」


意識を振り切るように彼女に声をかける。


「あ、ありがとうございました!」


威勢のいい挨拶にこちらは冷静さを取り戻した。


「ありがとうございました。」


お礼を言い商品を受け取ると店を後にした。店を出ると冷たい春の風が頬を冷ます。ふぅ、と息を吐くと駅に向かって歩き出した。ちょうど来た電車に飛び乗り、イヤホンを取り出すとスマホにつなぎ今お気に入りの曲を流した。

この話から数話、一馬目線のお話になります。

初めて会ったあの日から、奈央の誕生日まで一馬はどんな生活をしていたのか?


一馬は大学3年なので、奈央とは同じ干支です(笑)

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