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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
第二章
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05話 マネージャー

「橘、どうだった?」


後から真田と奈美さんが合流した。


「全治1か月だって。そっからリハビリらしい。」


「1か月って…お前、それ…。」


「ごめん…。秋大は…吉村に任せる。」


そう言葉に出すのがやっとだった。ここまでやってきたのに、3年の秋にチームを離脱せざるを得ないなんて。真田と蒼井の顔が見られなかった。


「じゃ、俺車回してくるわ。お前も行くぞ。」


康介さんが気を利かせて奈美さんを連れ出す。


「一馬くん大丈夫?安静にしてたらきっと早く良くなるよ。」


三崎さんが俺を心配して話しかけてくれる。


「あの!そんな無責任なこと言わないでください!今が一馬くんにとってどれだけ大事な時期かわかって言ってるんですか?プロ契約だって、ケガってわかったらどうなるか…!」


蒼井が俺の前に立った。


「蒼井、ありがとう。でも三崎さんには関係ないだろ。俺のした事だし、俺が決める事だから。三崎さんはただ心配してくれて…。」


「そんな心配なら私がするし、授業のこともリハビリのことも私が全力でサポートする!お願いだから、一馬くんは余計なこと考えないで怪我を治すことだけ考えて。」


俺の方を振り返った蒼井の肩は震え、その大きな瞳には溢れんばかりの涙が溜まっていた。


「…蒼井。」


「ごめん、橘。ちょっと色々混乱してるっぽいから俺が蒼井送ってくわ。三崎さんもすいませんでした。ほら、行くぞ。」


真田に抱えられて蒼井が病院の入り口を出て行く。


「…すいません。何か、きっと、マネージャーとしてずっと俺らのこと見てきてくれてたから…。」


「私こそほんと無責任なこと言ってアオイさんのゆうとおりだよね。ごめんなさい。」


三崎さんが無理して笑顔をつくっていることくらい俺でもわかる。いつもなら、無理をしている三崎さんわわ真っ先に抱きしめたいと思うのに、今はこれからのこと、怪我の痛み、それから蒼井のことが気にかかってそうゆう気分にはなれなかった。


「荷物これだけだな。」


「ありがとうございます。よかったら上がってって下さい。」


アパートまで三崎さんと康介さんが荷物を運んで来てくれた。


「いや、俺らはこれからちょっと用事あるから帰るわ。その代わり奈央は置いてくから、親御さん迎えくるまでこき使って。」


そうゆうと康介さんは奈美さんとアパートを出た。父さんは仕事終わって9時までに迎えに来るとのことだった。一人暮らしじゃ生活が不便だとゆう事で、大学からは少し遠くなるが実家に帰ることになった。


「三崎さん、何か飲みます?」


さっきから隣で難しい顔をしている三崎さんに声をかける。


「ううん。…大丈夫。」


「もしかして蒼井の言ったこと気にしてますか?」


三崎さんは、はっと顔を上げ俺の顔を見ている。


「ほんと多分、真田の言うように少し混乱してただけですから蒼井の言ったこと気にしないでください。」


すると三崎さんはまた俯きぽつぽつと話し始める。


「アオイさんに言われて、私一馬くんのこと全然知らないことばっかりだったって…。アオイさんはきっとずっと一馬くんのこと見てきて、支えてきて、私よりよっぽど一馬くんのこと知ってて…。私には関係ないって…。」


「三崎さん待って、もしかして蒼井に妬いてます?」


そんなことないよって軽く流されると思っていた俺は、三崎さんのムキになったその表情かおから目が離せなかった。


「え?三崎さん…?」


「一馬くんが大変なときにこんなこと子どもっぽいって思うかもしれないけど、一馬くんの近くでいつも一緒だった女の子って特別だし、一馬くん、その…、私は苗字呼びで敬語なのにアオイさんのことは名前呼びしてるし。」


三崎さんがそんな風に思ってるなんて微塵も感じなかったのに、俺の隣でヤキモチを妬いているのは紛れもなく俺の彼女に違いない。


「三崎さん。」


あばらが痛いのも忘れて俺は彼女を自分の腕に閉じ込める。


「一馬くん、ケガは!?」


少し抵抗する彼女をソファに押さえつけると、彼女に口づけする。


「あの…、あんまり可愛いこと言わないで下さい。俺ケガで何も出来ないんで。それに三崎さんに関係ないって言ったのは、野球のことも将来のことも三崎さんを理由にしないって意味で。」


「あ、また苗字呼びに敬語!!」


三崎さんは拗ねたふりをすると顔を背ける。俺はあごを手を添えると自分の方を向かせた。


「奈央…キスしていい?」


名前で呼ぶと三崎さんが少し緊張してるのが伝わってきた。彼女は少し俺の顔を見ていたが、ゆっくり目を閉じる。


俺はゆっくりと彼女の唇に触れた。


「…ちなみに誤解があると嫌だからゆうけど、蒼井の名前は確か友梨ってゆうから。」


「…え!?」


三崎さんは恥ずかしさのあまり俺の胸に顔をうずめる。そんな彼女の髪を撫で名前を呼ぶと顔をあげる。また引き寄せられるように唇を合わせた。

蒼井の気持ちが前面に。それでも一馬は奈央の味方とゆう、立場のないところをすかさず律がフォローに入りました。一馬しか見えていない蒼井、蒼井のことしか見えない律。この三角関係はどう動いていくのか。

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