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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
第二章
33/51

04話 リードミス

午前中の試合はうちの地区でも守備に定評のある日北大との対戦は、1年生ピッチャー・日向の好投と打線が粘り強く繋いだ結果6-5で勝利。


昼を挟んで1時から一軍の試合が開始される。相手は司馬学院大。攻守のバランスも良く、打撃に関しては選手層が厚い。


「一馬くん、調子はどう?」


「まぁまぁってとこです。でも勝ちます!」


昼休憩後、グラウンドに入る寸前に三崎に呼び止められ少し話をしていた。


「司馬学は今年の春大優勝してたよな。」


「まぁ、いわゆる秋大の決勝カードみたいなもんなんで、うちも負けられないんです。」


て、また康介さんいるし。野球に関して共通の事柄は私情抜きで話が出来るからいいんだけど…。


「りっくん投げるんでしょ!?楽しみにしてるよー!」


奈美さんまで!真田に向かって勢いよく手を振っている。


「こいつ偶然休みでどうしても行くって聞かなくてさ。」


「…そうなんすね。とにかく、今日は皆さん来てくれてありがとうございます!じゃ、俺行きます。」


「一馬くん頑張ってね!」


最後に三崎さんの声援に見送られ、俺はグラウンドに入っていった。まだそれぞれ準備をしているベンチから出るとレガースを付ける。


「この前の練習試合のDVD見たけど、春大のときと違って結構ラフプレーがあるチームだったぞ。今日クロスプレーあるかもだから、気をつけろよ。」


ブルペンに向かう俺を捕まえて真田が話しかける。


「おう、サンキュー。」


確かに一試合目とは違いみんなピリピリした雰囲気の中プレイボールとなった。


「橘!!」


真田がマウンドからこちらに走ってくるのが見える。少しすると周りに人が集まってくるのがわかった。やっべ、…これ、あばらいったかも。案の定逆転を狙った相手のクロスプレーでわき腹に入られた。


「大丈夫か!?」


あと1つアウトとったらゲームセットだし、今日は三崎さんたちだって応援に来てくれている。


「ツーアウト、…あと1つ。」


そう言って立ち上がるとキャッチャーミットを真田に向ける。真田も俺を信頼してか、自分のグローブを俺のキャッチャーミットに合わせる。


「ダメだったらちゃんと言えよ。吉村は受ける気満々みたいだから。」


ブルペンからいつもの調子で吉村が手を振っている。


「わーってる。」


左のわき腹がズキズキと痛むが、真田への返球自体は右手だけで何とかなってはいる。問題は次が4番だということ。


ツーアウト、ランナーは変わらず2、3塁。だらだらと冷や汗出てきた。あと1人。集中を切らさず真田をリードする。相手も2人返せば逆転のチャンス、そう簡単にアウトはくれない。ファールが続きカウント、ツースリー、この一球で決まる。


真田が投げた球は綺麗に外野まで運ばれてサヨナラとなった。真田の球は球威もコースも完璧だった。…完全に俺のリードミスだ。


「悪りぃ、コース甘かった。」


真田が挨拶のときに俺にそう言った。最低だ、俺の過信でチームが負けたんだ。そう実感したと同時にさっきまでのアドレナリンが切れ痛みに片膝をついた。


「橘!やっぱりお前。」


「一馬くん、車出すよ。」


康介さんがフェンス越しに声をかけてくれた。どうしようか迷っていると、俺の防具を外して真田が肩を貸してくれる。


「早く病院行った方がいい。監督には俺から話しとくから。」


「あの!私付き添います!今後のこととか監督に報告しないといけないので。」


車に乗り込むとき蒼井がベンチから息を切らしながら走ってきた。康介さんも了承してくれ、蒼井と一緒に車に乗り込む。助手席の三崎さんがかなり心配しているのが伝わってくる。くそっ、かっこ悪。


「あばらいってるか?」


「はい。…多分ですけど。」


「後で真田くんが病院に荷物持って来てくれるって。いっつも一馬くん無理するんだから!」


スマホのメッセージを確認しながら蒼井が俺の身体を気遣う。蒼井にもかなり心配かけてるな。その後病院で色々な検査の結果、肋骨骨折で全治1か月の診断がおりた。

何だかんだでずっとバッテリーを組んでいる律と一馬には他にない信頼関係が出来上がっていて、ずっと見守ってきた蒼井には蒼井の考えや気持ちがしっかりとあって。少しずつ関係に変化が。

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