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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
第二章
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03話 夏の空気

梅雨明けが発表され一週間。うだるような暑さの中、秋季大会に向けて練習が厳しくなる。各地では高温注意情報やら、熱中症警戒情報やらテレビをつければ何処でも取り上げられていた。


「俺らに運動制限とか適応されたりするのかな?」


この地域の小中学校や高校では気温が高く熱中症の警戒が必要となったとき、部活動で時短や早朝練習などの対策が取られてるようだった。


「練習時間短くなるんは困るやろ。秋季大会まで時間ないんやから。」


「まぁ、それはそうなんだけどな。」


「それにしても年々異常気象ひどなってるな。」


夏休みに入り気温も練習も過酷の一途をたどっている。練習試合も一日に2本組まれる日もザラではなくなってきている。


「明日の練習試合は彼女さん来るん?」


「一応誘ってはみたけど、まだわかんないみたい。」


「なんや、もーはい倦怠期なん?」


「順調と言えば順調だけど、最近仕事が忙しいみたいであんまり会えてはないかも。」


俺もあんまり詳しく聞いてないからよくわかんないんだよな。すると葉山がズバリ質問を投げかける。


「え?まだ付き合って1か月経ってへんのに?毎日とは言わずとも会いたいとか思わんの?抱きしめたいとか、キスしたいとか、それ以上も!とか?」


「だいぶ飛躍したな。まぁ、会いたいとは思うけど、学生の俺とは違って向こうは社会人だし、そう毎日って訳にはいかないだろ。」


「甘いんちゃう?橘。疲れてるときこそ、忙しいときこそ、女ちゅーもんは誰かに癒して欲しいもんやろ。」


「おい、そこは『誰か』じゃなくて『彼氏』でいいとこだろ。」


またまた葉山に痛いところをつかれ、三崎さんに限ってとは思いつつも花火大会での康介さんの意味深な発言や偶然会ったと言う八神とゆう元上司のことも気にかかる。


こうゆうとき『学生』である自分が取り残されている気がして仕方がない。同じ社会人なら、ましてや出来る幼馴染や上司なんて、俺がフォロー出来ないことまでしれっとやってしまうに違いない。


「ま、彼氏の橘にしか出来んこともちゃんとあるやろうから。そー、焦らんでいいんやない?」


「俺にしか出来ないこと…。」


葉山と話した後、色々考えてはみたもののまるで思いつかない。ふと三崎さんの声が聞きたくなり、気づくと彼女に電話をかけていた。


「もしもし、一馬くん?珍しいね電話なんて。」


「その…声が聞きたくて。」


「え!何かあった?」


電話越しでも三崎さんが慌てている様子が目に浮かぶ。


「明日の試合って…。」


そこまで言いかけてやめた。きっと三崎さんも忙しくて試合なんか見にこられる状況じゃないからこそ、返事も保留のまま前日になっているに違いない。


「あ、明日なんだけど、午後からの2試合目ならなんとか調整つきそうって連絡しようと思ってたんだ。」


「でも、今仕事忙しいって。」


「確かに本部に移動になる件で、研修やら引き継ぎやら忙しかったんだけど、明日何とか午後だけでもってスケジュール調整してたらプラスで忙しくなっちゃって。」


そう笑う三崎さんに無性に会いたくなってしまった。仕事だからと割り切っていたのに、俺のためにスケジュール調整までして時間を作ってくれていたなんて。


「俺やっぱり今から三崎さんに会いに行きます。」


彼女の返事を待たずに鍵と財布を持って家を出ていた。もう8時過ぎてるし行き帰りの時間考えたら30分会えればいい。アパートの階段を降り、少しでも会う時間を増やすため駅までの道のりをランニングする。外はもう夏の空気に変わっていた。

季節の変わり目は、夜の空気が好きです。風や温度や匂いが変わって今から来る季節にワクワクします。

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