02話 どうしても欲しいもの
三崎さんと付き合うことになって数日、全国的な梅雨明けが発表され日差しの強い夏がやってきた。あの動物園デートがあと数日後だったらこの展開はあったのかと少々不安になった。
「一馬くん、早く行こ。」
いやいや、俺は三崎さんと付き合っている。これが事実だ。少し先を行く三崎さんを視界におさめる。白を基調とした花柄のワンピースが目を癒す。
今日は前回の動物園デートのリベンジとして、三崎さんの地元の花火大会に行くことになった。
「律くんも早く!」
俺はできることなら付き合って初めて出かけるのは2人っきりがよかったよ。俺の視線に気がついたのか、してやったり顔の真田。
「ま、お前1人増えたってどーってことねーよ。だって…。」
「奈央ちゃーん!こっちこっち。」
今日は三崎さんの地元=康介さんの地元とゆうことで、佐伯兄妹、三崎さん、俺、何故か用事で三崎家にいた真田での花火大会になってしまったのだ。
「はじめまして!佐伯奈美です。25歳、乙女座、空港勤務です。よろしく。」
「おーい、大学生相手に媚び売るな。」
何かすごい勢いある人だな。
「え!?だって奈央ちゃんの彼氏なんでしょ。私だってこっから合コンとか、合コンとか、合コンとか…で可愛い若い子ゲットしちゃうかもよ。」
「合コン連呼すな。」
少し年が離れている兄妹のせいか何かと大切にされてる感じは否めない。
「で、どっちが奈央ちゃんの彼氏なの?」
「あ、俺。」
すかさず真田が名乗り出る。
「律くん!冗談言わないでよ!」
三崎さんが少し恥ずかしそうに律をいさめると俺の方を見た。
「三崎さんとお付き合いさせていただいてます。橘一馬です。こっちは俺の部活仲間で、三崎さんの従兄弟の真田律。」
「一馬とりっくんね。じゃ、今日はお姉さんと楽しんじゃうよー!」
そう言って河川敷の屋台の列の間をどんどん進んで行く。後を追うようにみんなもそれに続いた。すると服の裾が軽く引かれ振り返ると、三崎さんが恥ずかしそうに俺の顔を見上げていた。
「迷子になりそうだったから、その…。」
ヤバイ!今日の三崎さんはいつも以上に可愛い過ぎる!今すぐ抱きしめたい!とゆう衝動を必死に抑え左手を差し出す。
「迷子になったら困るんで。」
三崎さんが嬉しそうにすっと指を絡める。
「おーい、イチャイチャしてないで行くぞー!」
前方から佐伯さんが声をかける。奈美さんを見るとすでに、りんご飴、イカ焼き、たこ焼き、唐揚げ…こんな短時間によくあんなに買い込めたな、という量の食料をゲットしていた。
俺たちも花火会場に向かう屋台の列で、ちらほら見て回り食べ物を買う。そうこうしているうちに日も落ち、花火大会開始30分前になっていた。康介さんオススメの穴場の神社の階段に着くとそれぞれ座って一息つく。
「康介さんまじエロっすね。花火大会でこんな穴場知ってるなんて…。」
真田が真剣に尊敬の念を送っている。
「うちの兄貴、欲しいもんは基本どんな手使っても手に入れちゃうエゲツないタイプなもんで。」
「え?そんなん基本じゃないの?」
ニコニコしながらサラッとすごいことを言う。…とゆうことはやっぱり三崎さんに対してのは家族愛みたいなもんだったのか?
「…あー、でも一個だけどうしても欲しいんだけど手に入れてないもんあったわ。」
え?どうゆう意味だ…?その瞬間、真剣な表情の康介さんと目が合う。
「どんなレアなもんですか!?」
真田が興味津々に康介さんに詰め寄る。
「ひみつー。」
意味ありげな笑みを浮かべると、早々に話を切り上げる。手に入れてないものって、俺の考えすぎか?でも今の…まさか?
「はい、一馬くん。」
声に反応しても三崎さんを見ると、先ほど買ってきたポテトを一本差し出している。この距離はかなり微妙…どうぞと差し出しているのか?それとも、あーんとしてくれているのか?いや、どっちでも構わない。俺は迷わず彼女手からポテトを食べる。
「うん、美味しい。」
三崎さんは案の定予想外の出来事だったらしく、俺の顔を見て真っ赤になっている。こんなことをしたってどうなる訳ではないけれど、少しでも康介さんに対しての牽制になればと思ったりもした。
「あー、またそうやってリア充見せつけて!」
「うるさい。ほら花火始まったぞ。」
「あ、本当だ!きれいだね。」
「た、ま、や〜〜〜〜!!」
みんなで行った花火大会でいつもと様子の違う康介。一馬はその違和感に少しずつ気づき始める。一方、奈央はそんなことつゆ知らず本社移動の件と一馬で手一杯。




