01話 月一会
「おい、橘!いい加減そのダラシない顔をどうにかしろ。」
「え?俺、そんな変な顔してるか?いたって普通だけど。」
真田には三崎さんと付き合うことになった翌日に報告していた。あれから3日は経ったけど毎日同じようなこと言われてる…。
「いいから、蒼井の前では普通にしてろよ。」
なんだかんだで真田は蒼井のこと気にかけてるよな。けど、俺のことと蒼井のことは関係するのか?
「橘、真田、そろそろあがるぞー。」
「おー、今日いつものとこだよな?」
恒例の月一会。野球部の仲のいいメンバーで月一回ファミレスに行く日なのだ。3年の真田、東條、武内、葉山、俺の5人で構成されている。東條が車を出してくれるおかげで、大きな荷物を店内に持ち込まなくて済んでいる。さすが東條グループの跡取り。
「いらっしゃいませー。」
店員が席に案内するとそれぞれメニューにかじりつく。あらかた決まったところで注文をし、ドリンクバーに直行した。
「で、橘は報告しないといけないことがあるんじゃないの?」
全員席に着いたところで東條がすかさず話題をふってきた。まぁ、隠すことでもないし、薄々みんなも感づいてるみたいだし、ここは正直に。
「三崎さんと付き合うことになりました。」
その報告を聞いた途端、真田を除く3人が矢継ぎ早に質問してきた。
「まじかー!え?いつからやねん?」
「この前、練習試合にイケメンと来てた人だよな!」
「4日前。そう、あの人は幼馴染。」
武内が興奮気味に真田に絡む。
「真田も何か聞いたらいいべ。さっきから興味なさそうにしてよー。」
「人の恋愛なんて興味ねぇよ。ましてや奈央姉のなんて。」
そりゃそうだ。家族でないにしても、仲のいい親戚のお姉さんの恋愛事情を他から聞かされるなんていい気はしないだろうに。
「そういえば真田の従姉妹やんな?もしかして、初恋はその人やったりしてな。」
「んなわけねーだろ。とにかく付き合う以上、奈央姉のこと泣かしたら俺はお前を許さんからな。」
鋭い眼光から葉山が放ったあの質問はあらかた間違いではなかったことを証明した。
「で、もうしたの?」
「ごほっ!!は?な、何を!?」
俺は想定外の質問にメロンソーダがあらぬ場所に入りかけた。今度は真田を除く4人が素早く反応する。
「え?何って初デートだけど?って、あれ?その反応はもしかして…。」
「おい、おい、まじかよ!橘って見かけによらずやること早いな。」
「ちょ、ちょっと待て。勝手に想像を膨らますな!」
ますます不機嫌になる真田をよそに話はどんどん進んでいく。
「ほな、俺たちの想像とちゃうって言うなら実際どこまでやったん?ここまでゆうたんなら全部はいたほうが身のためやんな?」
葉山にそこまで圧をかけられては観念せざるを得なかった。
「なーんだ、キスしかしてないんだ!」
「おい、武内声でかい!」
「ほーか、そこで部屋着はエロいわ。そりゃいただくしかないなぁ。」
「けど、そのシュチュエーションでキス以上なかったって何かあったの?」
冷静に分析する東條。いやいや、それしちゃうパターンすか?って、まぁあわよくばって気持ちもあったっちゃー、あった訳だけど。
「まぁ、色々と。」
そこまで話すと納得したのか、それ以上深掘りはされずにすんだ。
「けど、付き合ってんのにまだ苗字呼びに敬語ってどうなん?年が離れてるって言ってたし相手も気にしてるんじゃないの?」
「そうゆうもん?俺は付き合ったからって、いきなり変えるのはどうかと。」
「俺は奈央姉に敬語なんか使わないけどな!」
ここで真田が俺の方が親密アピール!お前は子どもか!と武内に突っ込まれても気にもしてない様子だった。
名前呼びか…。真田は奈央姉で、康介さんは奈央って呼んでたな。他にも、奈央ちゃんとか?いやー、今の段階ではどれもしっくりこない。でも確かに俺は名前で呼ばれてるし…。
そうこうしているうちに話題は次の練習試合のことになっていた。
割とゆる〜い感じの男子会でした。やはり秀才東條氏と真面目な葉山氏がうまい具合に回してくれているからでしょう。
付き合うと名前呼び問題ありますよねー?