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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
29/51

重なる想い ー彼目線ー

は?何言ってんだ?いや待て、今までの三崎さんとの関係上それはあるのか?


どうゆう意味の『付き合う』なんだ!?


「つ、付き合うって、今度どっかに買い物に付き合うとか…。」


情けないが思わず俺はそう口走っていた。


「そ、そうじゃなくて。」


いつもと様子の違う彼女を見て覚悟を決める。


「はっきり言ってください。そうじゃないと俺の勘違いで終わりそうなんで。」


多分そういう意味で言ってくれているんだろうと心の何処かで思ってはいたが、やはり言葉にしてもらわないと確信が持てない。


「か、彼氏彼女として。」


その言葉を彼女から聞いた途端、この腕で抱きしめたいと思うのと同時に身体が動いていた。抱きしめた三崎さんからは柔軟剤なのか、シャンプーなのかわからないがひどく甘い香りがした。柔らかいその感触と腕の中にすっぽり収まってしまうサイズ感に女の子を改めて感じる。


彼女が浴室に案内してくれて、今俺は三崎さん家のシャワーを使っている。夢でも見ているかのような感覚に陥った。


「…夢…じゃ、ないよな。」


眼鏡を外しているせいで視界が悪い。俺今どんな顔してんだ?曇った鏡を手のひらで拭うとボヤッと自分の顔が映る。


「一馬くん、入るよー。」


薄っすらと彼女の声が聞こえ、脱衣室の扉が開く音がしてシャワーを一度止める。


「ちょっと小さいかもだけど、着替え置いておくね!」


急いで脱衣室を出て行く三崎さんの影を目で追いながら、再びシャワーをひねる。三崎さんもきっと冷えてるはず。俺は適当にシャワーを浴び軽く拭いた後、眼鏡を探すと分かりやすいようにスウェットの上に置かれていた。眼鏡をかけ借りたスウェットを着ると髪もほとんど乾かさないままリビングへと足を踏み入れる。


彼女にシャワーのお礼を言い交代する。


「じゃ、ソファとか冷蔵庫とか自由に使って。あとテレビとかもつけて大丈夫だから。」


自由に…と言われても初めて入る彼女の部屋をあまり物色するのも気がひける。ソファに座るとまだ濡れている髪をタオルで拭く。すると浴室から思った以上にシャワーの音が漏れ聞こえる。


「………。」


三崎さんが今シャワーを浴びている。もちろんシャワーだから、服も…下着も…つけて…ないわけで。シャワーの音を聞くだけで色々な妄想が頭をよぎる。


落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け落ち着け落ち着けーーー!!!


「そ、そうだテレビでもつけて!」


ソファから立ち上がりテーブルの上のリモコンを取ろうとした瞬間、テーブルの脚に小指をぶつけた!あまりの痛さに涙が出そうになる。しかし、痛さのおかげで冷静さは取り戻せた。無事にテレビのスイッチを入れた。


少しすると彼女がリビングへと戻る。テレビから彼女へと視線を移すと、今までの大人なイメージから想像出来ない可愛い感じの部屋着に身を包んでいる。しかし、ネイビーのチョイスは可愛いさの中にもどこか上品な感じで彼女らしさを感じた。


「や、やっぱり服おかしかった?」


そう言う彼女に正直な気持ちをぶつけると慌てた様子で寝室のドアに手をかけた。


「ま、待って。」


彼女の後ろからドアを押さえる。びくっと彼女の肩が跳ねるのがわかった。少し怖がらせてしまったか…。


「そのままで大丈夫です。」


出来るだけ落ち着いた声で静かに話しかける。すると俺の腕の中で彼女が振り返った。少し恥ずかしそうに俯いたまま、それでも俺のことを意識していることは肌で感じた。


「…一馬くん。」


シャワーを浴びたせいか上気した頬に潤んだ瞳で彼女が俺の名前を呼んだ。思わず彼女の頬に触れていた。彼女の存在を確かめるように手を首に回す。リップも何もつけていないはずなのに、彼女の艶めかしい唇が俺を誘った。


優しく顔を引き寄せると唇が触れる。今乾かしたばかりの髪の甘い香りが鼻をくすぐる。柔らかいその唇は何度重ねても満たされることはなく、欲望のまま唇を重ねた。


「…はぁ。か、ずまく…ん。」


時折苦しそうに俺の名前を呼ぶ彼女に煽られる。これ以上は…と思ったのも一瞬、キスとキスの間に見せる彼女の乱れた姿に俺の理性はとんだ。


「ん、…ん。はぁ。」


彼女の腰へ手を伸ばすと、服の下の素肌に触れた。


「…ん。」


その瞬間彼女が身動ぐ。ヤバイ、もう止められない!


ヴーー、ヴーー、ヴーー、そのとき寝室からスマホが着信を知らせる音がした。一瞬気を取られるものの、止められる余裕もない。しかし一度切れるものの、スマホはしつこく持ち主を呼び出した。


……仕事の電話とか、大切な用だったら申し訳ない。そう思い直すと、もう一度だけ彼女の唇にキスをした。


「…電話、出てください。」


「う、うん。」


彼女は申し訳なさそうに寝室に入ると電話をとった。このタイミングで電話とかよかったのか、悪かったのか複雑な気持ちでいっぱいになる。寝室から漏れる声に耳を傾けると、どうやら仕事関係の電話らしい。


電話も終わりリビングに戻ってきた彼女をソファに誘う。手を差し出すと、恥ずかしそうに彼女が手を取る。


「一馬くんの髪の毛、私と同じ匂いがする。」


そう言って俺の肩に寄りかかる彼女はもう天使にしか見えなかった。

一章完結となりました。お読みいただきありがとうございました(^^)

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