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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
24/51

23話 2人の過去

「近くのファミレスでいいよね?」


そういうと社員駐車場に停めてある白のスポーツカーの助手席ドアを開ける。伊東さん意外とこうゆう車乗ってるんだ…じゃなくて!


「い、いやいやデートではないので…。」


「わーってる。本社勤務の件でしょ?店長からだいたいのこと聞いとるから。ほら、乗って。」


ま、紛らわしい。助手席に乗り込むと流石スポーツカー、結構車高が低い。しかもツーシート…伊東さんは180cmオーバーなので距離もいつもより近い気がして落ち着かない。シートベルトを締めようとするが変な緊張で上手く引けない。


「じっとしとって。」


しびれを切らした伊東さんが私に覆いかぶさる形でシートベルトを締める。別に他意はないのに、肩の近くに置かれた手や少しでも動いたら触れてしまいそうな距離に神経が反応している。本当自意識過剰にも程がある!でも慣れてないんだからしょうがないじゃん!


「ぷっ!三崎さんって言いたいことだいたい顔に書いてあるタイプやね。」


「…すいませんね。いろいろ慣れてないもので!」


「え?俺はわかりやすくていいと思うよ。女子は基本何考えてるかサッパリわからんから。」


おー、おー、今かるーく女子枠から外したな!私だってれっきとした女子なんですけどねっ!そうこうしているうちに近くのファミレスに到着した。


「いらっしゃいませー。2名様ですか?空いてる席へどうぞー。」


ちょうどランチやカフェ客が退店する時間帯とゆう事もあり店内は比較的静かだった。伊東さんについて空いてる席に座り、とりあえずドリンクを注文した。


「甘いもんはいいの?」


「お気づかいなく。早速なんですけど、伊東さんがいた出版部について聞きたくて。」


「じゃー、俺クラウンメロンパフェ頼も。すいませーん。」


すごいマイペース…てか、全然話進まないじゃん!


「そう、かりかりしないでよ。三崎さん元は出版業界にいたんだから少しはうちの話きいてるでしょ?まぁ、出来て10年ほどしか経ってない部署だし元のようにはいかないにしても、君がやりたいことに近い仕事が出来るはずだよ。」


確か伊東さんは期限付きで今の店舗のマネージャーをやってるって言ってたな。


「…あと1年したら戻るんですよね?」


「俺?まぁ、多分ね。三崎さん、もしかして…俺にもっと早く戻ってきてほしい、とか?」


「ち、違います!ただの確認です!」


真面目な話してたかと思うとすぐにふざけた事ゆうのはこの人の生態なのかもしれないが、私は苦手なタイプだなと思う。その後部署内の人員や細かな仕事内容など色々なことを聞くことができた。


「部長は特に仕事の鬼だから覚悟した方がいいかな。あの人、クリスマスも誕生日もだいたい仕事してるから。」


そう話す伊東さんはどこか思い出を懐かしむように優しい笑顔を見せた。


「何そんな驚いた顔してんの?」


「いや、伊東さんもそんな風に笑うんだなぁと…。」


「人をサイボーグみたいにゆうなや。そんなんやったら三崎さんは最近顔緩みっぱなしじゃない?」


「いや、それはまぁ、色々と。」


きっと伊東さんはその鬼部長さんとのいい思い出がたくさんあるんだろうなぁくらいには私にも伝わってきた。伊東さんがメロンパフェを食べ終わる頃には、思っていた以上の話が聞け本社移動への見通しも立ち始めた。


「言ってなかったけど、俺三崎さんのことはうちに来る前から知ってたんだよね。」


「え?」


「すごい出来る若手の編集がいるって噂で聞いて、ちょくちょくパーティとかで顔見たりしてたから。」


「そうなんですねぇ。ははは。」


昔の話はあんまりしたくないんだけどな。あの頃、編集の仕事は好きだったし、やり甲斐も感じていた。色々あって前のとこは辞めたけど全てを切り捨てられず、本に関わる仕事先を選んだのも確かだ。


「で、そんな出来る編集がなんであんな大手をやめてただの書店員になったわけ?」


急に伊東さんの声のトーンが落ち軽蔑するかのような表情に変わった。今まで見たことのない伊東さんの表情に私はその質問には最後まで答えられなかった。


伊東さんは私のことを知っていると言った。何をどこまで知っているのだろうか。もう忘れたいと思っていた過去がチラチラと見え隠れする。

奈央の編集時代の同僚などなど、ここから少しずつキャラが増えてきます。

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