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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
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22.5話 一馬にとって

「一馬くん、じゃ柚のことお願いします。」


京子おばさんから、柚ちゃんを1日子守して欲しいと頼まれた。何でも急な仕事で家をあけることになり、うちの母親に子守を頼んだのが昨晩のこと。


「柚、ちゃんと一馬くんのお話聞いてね。」


で、その肝心の母親はというと朝から熱でダウン。ちょうど部活が休みだった俺のとこに子守の任務が回ってきたとゆうわけだ。


「ごめん姉さん調子悪いのに。託児も休日だし、今日に今日は空きがなくて。」


「いいよ、これくらい寝てれば治るから。一馬もちょうど休みだったし、大学生なのに予定のひとつもないみたいだから。」


とゆう流れで、俺の休日は従姉妹、小学2年生の葛木柚かつらぎゆずと1日過ごすことになった。



「柚ちゃん、どこか行きたいとことかある?」


まぁ、天気も悪くないし病人のいる家で1日過ごすのはどうかと思い外出を提案した。柚ちゃんとはちょくちょく家に来ては一緒に公園に行ったり、本好きの柚ちゃんの希望で図書館で本を読んだりしていた。


「ほんやさん!」


「図書館じゃなくて?」


「すっごいすきなお話の本で これだけはいつもかってるの!」


一番近い本屋はうちから歩いて行ける距離にあるけど、それじゃ結局家にいる時間が長くなっちゃうからなー。ちょっと遠出してお昼食べて帰るくらいがちょうどいいかな。


それでやってきたのが、三崎さんのいる四つ葉書店。今日は多分仕事の日だったような…。


「柚ちゃん本の場所わかる?店員さんに聞こうか?」


「だいじょうぶ、これはわたしのみっしょんなの!そこのおねえさんに きいてみるから!かーくんはここでまってて!」


そういうと柚ちゃんは近くにいた店員さんに話しかける。まさか、あの後ろ姿は!振り向いたその店員はまぎれまなく三崎さんだった。三崎さんは髪をひとつに束ね、書店の名前が入ったエプロンをしていて初めて会った日の事をふと思い出した。


あれから色々あったなぁなんて思いにふけっていると、ついこの間の三崎さんがお見舞いにきてくれた日のことが頭をよぎった。あの日は熱があって正常な判断が鈍っていたからあんな大胆な事ができたんだ!と、1人反省会をしつつ、柚ちゃんが戻るまで立ち読み客の1人となった。


「かーくん、かーくん!あったよ、これ。」


柚ちゃんが大事そうにお気に入りの本をかかえて戻ってきた。


「そっか、ミッションコンプリートだね。」


「一馬くん?」


声のする方を振り返ると、三崎さんが気づいて声をかけてくれていた。今日は顔が見れたらいいなぁと思っていたのだが、思わぬ形で話をすることができた。柚ちゃんが三崎さんのことを『彼女か』と聞いたとき、三崎さんは答えに困っている様子だった。


「柚ちゃん、この人は俺の好きな人で今は彼女じゃないけど、そのうち彼女になってくれたらいいなぁと思ってる人だよ。」


俺はそう柚ちゃんに耳打ちした。



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