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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
18/51

18話 膨らむ疑念

『練習試合、見に行きます。ただ1人では緊張してしまうので、この前一緒にいた幼馴染連れて行ってもいいですか?』


天国と地獄とはまさにこのことだ。三崎さんが来てくれるのは嬉しい!けど、あの幼馴染と一緒に。俺、試合に集中できるのか??


てか、何で幼馴染と一緒に来るんだよ。


『大丈夫です!楽しみです。』


心とは裏腹な内容を返信する。これくらいで嫌とか言ったら子どもすぎだし、そもそも付き合っても無いんだから嫌と言う権利なんて持ち合わせていない。俺は色々な感情に蓋をした。


予報通り土曜日は曇天で絶好の試合日和となった。駐車場で三崎さんたちを待っていると黒のSUV車が入ってきた。助手席には三崎さんの姿が。車から降りてくる2人ははたから見たら彼氏彼女にしか見えないだろう。


「こんにちは。」


先に幼馴染に挨拶をして三崎さんの様子を伺った。今日は前回のレストランのときとは違い、スニーカーの似合うカジュアルめな服装だった。


「たーちーばーなー、アップ始めるぞ!」


グラウンドから武内が呼んでいる。大きな声を出して三崎さんの注目を集める作戦だな!俺は2人をネット際まで案内するとグラウンドに戻った。


「橘!あれが噂の本屋の女か!」


声を潜めながらも興奮がおさまらない武内を尻目にキャッチャースボックスに入った。すると真田がマウンドからおり、俺の方へ近づいてきた。


「おい、試合始まるぞ!切り替えろよ。」


俺がそう声をかけるも心ここにあらずって感じで俺のところまでやってきた。


「橘、本当にあれが本屋の女か?」


「なんだよ、そうだけど、何か?」


真田は少し考える様子を見せた。まもなく試合が始まるというのに俺の私情でチームに悪い影響も出かねないこの状況。とりあえずこの場を適当におさめなければ。


「か、可愛いな!けど隣のイケメンは誰なんだ!?」


武内のやつあまり突っ込まれたくないことをズケズケと…!


「幼馴染らしい。」


「それってどうなの?実は付き合ってるとか、付き合ってないにしても特別な関係とか?」


東條、俺が一番気にしていることを。でも三崎さんは違うと言っていたんだから…。さんざんそれぞれが好き放題言っているすきに真田が三崎さんのところへ駆け寄り何やら二、三会話をして帰ってきた。


「真田、何話してきたんだ?」


「別に。」


「別にって、おい!」


マウンドに戻る背中に声をかけた。


「…試合始まる。」


一言そうゆうとマウンドの土を蹴散らした。なんかメラメラと嫌な闘志を感じるのは気のせいか?案の定、真田のピッチングはいつも以上に力が入っていた。試合は序盤から東利大の優勢で進み、最後までその勢いは止まらなかった。


試合の後、俺、真田、蒼井、三崎さん、康介さんの5人で居酒屋に行った。三崎さんは少し緊張している様子だった。世間は狭いもので真田が三崎さんの従兄弟だったにも驚いた。それよりも何よりも、康介さんの存在が気になって仕方がない。


「幼馴染の佐伯康介だよ。」


真田に三崎さんとの関係を聞かれたときもそう答えたが、いくら幼馴染だとしても好意を寄せている相手の誘いに同行するって違う気がする…。その日は頃合いを見て解散となった。


『酔ってたみたいだけど、ちゃんと帰りましたか?』


一人暮らしのアパートに帰ると一番に三崎さんにメッセージを送る。スマホを充電器に挿すとベッドに置き、シャワーを浴びることにした。24時を回ったところで眠気に襲われる。最後に三崎さんからメッセージが来ていないか確認をしたが、既読にすらなっていなかった。


『実は付き合ってるとか、付き合ってないにしても特別な関係とか?』


昼間の東條の言葉が頭をよぎる。枕に頭をあずけると、次第に(まぶた)が重くなってきた。彼女は康介さんのことをどう思っているのだろうか…、いったい俺のことはどう思っているのだろうか…。考えれば考えるほどどんどんと意識が薄れていくのだった。

今回もside一馬でお送りしました。


彼女でもない奈央にどこまで踏み込んだらいいのか悩む一馬。康介の存在にも、メッセージが既読にならないことにも、ただただもやもやしています。


野球ではいつも堂々としていて、冷静でいられる一馬も奈央のことになるとなかなか上手くいかないことが多いです。それでも奈央のまでは精一杯大人ぶっているところが可愛い一馬です。

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