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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
17/51

17話 俺と真田と

自分の気持ちを三崎(みさき)さんに伝えた数日後、梅雨の晴れ間を使って急遽練習試合が組まれることとなった。


(たちばな)、その後本屋の女とどうなったん?」


練習後のロッカールームで真田(さなだ)に突っ込まれた。


「…言わなきゃダメ?」


「何、かわい子ぶってんだよ。レポートを手伝った俺には聞く権利がある。」


「おい、真田。それだってお前が交換条件つけて勝手にやったやつだろ!」


ガチャ。室内練習場でトレーニングをしていた同級生がぞろぞろとロッカールームに入ってきた。


「おい、橘。廊下まで聞こえてたけど何大きい声だしてんだ?」


「え?東條(とうじょう)、それ聞きたい?」


真田と東條がいけない笑みを浮かべている。止めようとしたが時すでに遅し…、真田がチームメイトのやつらに三崎さんのことをたれこんでしまった。


「橘、それは次の練習試合に呼ぶしかないんじゃないか?橘と言えば野球。野球と言えば橘でしょ。俺今まで言ってなかったけど、橘が野球してるときたまに惚れそうになるくらいカッコいいときあるんだよな〜!」


「東條!それ、俺わかる!スチール見逃さずバックホームから二塁さすやつとか超ヤバイ。どんな肩してんだ?それに女子マネほとんど橘推(たちばなお)しらしいぜ。く〜、羨ましすぎる!」


「は?東條も武内(たけうち)もいい加減なこと言ってんなよ!」


「ほら善は急げだ!スマホ出せよ!今からメッセージ送って練習試合に誘うんだ!俺見てみたい、本屋の女!」


何だかあらぬ方向へと話が進んでしまった。


「お前らさ〜、ぜってー楽しんでるだけだろ!」


「そんなことないぜ。何なら俺が代わりにメッセージ送ってやろうか?」


「いーよ、それくらい自分で打てっから。」


カバンからスマホを取り出すとパイプ椅子に座ってメッセージアプリを立ち上げた。うーん、いざ試合に誘うとなると何て打ったらいいのか、ぱっと思いつかない。その(かん)も俺の話題で盛り上がるやつらをよそにメッセージを打ち直していた。


『土曜日の午後、大学で練習試合があります。よかったら見に来ませんか?』


こんな感じか?


「まぁ、可もなく不可もなくだな〜。橘って意外と奥手なんだよな。野球のことになるとかなり熱いんだけど。」


「武内!覗くな!」


「ほらほら、送信しなきゃ意味ないでしょっと。」ピッ。


は!?武内め、今勝手にメッセージ送信ボタン押したな!!まだ心の準備が出来てなかったのに。


「お!早速既読になったじゃん!」


「おい、東條まで覗くな!」


既読になったはいいが、いきなりだったし、告ってから会うの初だし、どうしたらいいんだ。来るって言われても緊張でいつもの以上のプレイがちゃんと出来るだろうか。いや、そんなことより三崎さんは気まずくないだろうか。うーん。


「橘、写メないの?写メ!」


「そんなもんあるわけ無いだろ!」


「土曜までおあずけか〜。俺まで楽しみになってきた!じゃ、今日はこの辺でお先に〜。」


はぁ〜、あれから一向に返信こないけど、仕事忙しかったり、友だちと出かけたり、飲み会あったり…まぁとにかく返信する時間が取れないわけで俺と会うのが嫌とかそういうわけでは…ない…はず…。あーーー、クソ!数日返信こないとかでこんなに気になるなんて。俺も大概余裕ないのか。


「一馬くん、朝からスマホとにらめっこしてるけど大丈夫?」


「あぁ蒼井、もう授業終わり?」


「うん、土曜日の練習試合の準備しておくくらいかな?それより私でよければ、話聞こうか?」


蒼井はだいたいの話知ってるし、ここは藁にもすがる思いで経緯を説明する。


「…とゆうことは、告白をした後、練習試合に誘ったけどまだ返信が来てないことに関して、相手がどう思ってるか知りたいってこと?」


「うん、そうゆうこと。」


「多分なんだけど、告白されて気持ちの整理が出来てないうちに一馬くんのテリトリーに誘われて少し戸惑ってるんじゃないかな?」


「…迷惑だったってこと?」


「うーんと、すごく真面目な人なんじゃないかな?それだけ時間かけて一馬くんのこと真剣に考えてくれてるんだと思うよ。」


蒼井が淡々と事実整理をするのをじっと聞いていた。


「か、一馬くん、そんなにじっと見られると恥ずかしいかも。」


蒼井がさっと顔をノートで隠した。


「あ、ご、ごめん、俺そんな見てた?悪い。」


ドカッと、俺と蒼井の間に真田が割って入ってきた。何故か真田に睨まれた。


「なんだよ?」


「なんでも!!」


最近、真田がわからない時がある…。



今回も一馬目線でした。野球部仲間もようやくちょこちょこ登場させられ少し満足です!結構スポーツも好きなのでそのうちガッツリ、スポ根ものも書きたい野望が…。


少しですが、真田の行動に変化が出て?きたかなー?って感じで、その行動に振り回される一馬も面白い感じにしたいですね。


◆野球部3年生◆

東條周平(とうじょうしゅうへい)◆東利大教育学部中等数学課程専攻。将来は中学か高校の数学教師志望。そして野球部顧問希望。祖父は東條グループ代表取締役、結構有名企業の孫。真面目。181cm、O型。ポジションはファースト。


武内奏多(たけうちかなた)◆東利大経営学部所属。175cm、B型。ムードメーカー、単純。彼女募集中。ポジションはサード。他校のチーム分析に長けている。

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