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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
15/51

15話 音信不通

やってしまった…。部屋着姿のままスマホの画面から目が離せず玄関で固まる。


「おーい、奈央、大丈夫か?ってやっぱりまずかったよな。」


「ち、違うの、康介のせいじゃないから。完璧、私が悪いから。」


ぎゅっとスマホを握りしめるも、この状況を打破する一手は何も思いつかない。


「とりあえず、こっちきて一回落ち着け。今ホットミルク作ってやるから。」


ふらふらする重い足を動かし、やっとの事でソファまでたどりついた。康介が電子レンジからミルクの入ったカップを取り出すと私に手渡した。スプーンで少しかき混ぜると、フワッとハチミツの甘い香りが鼻腔をくすぐった。


「…美味しい。」


「それはどうも。…で、さっきのことだけど、何か変に誤解された感じだよな?もしあれなら俺が直接橘くんと話そうか?」


ハチミツ入りホットミルクのおかげで、幾分気持ちも落ち着き冷静な思考が戻ってきた。


「ありがとう。でも、元はと言えばいい歳して私が康介に甘えてばっかりだったから起きたことだし。ちゃんと自分で解決出来るようにするよ。ほんと、ごめん。」


「ばーか、お前は謝らなくていいんだよ。遠慮なんかするなよ、お前は俺の大切な幼馴染なんだからいつでも助けてやりたいと思うのは当然だろ?」


そう言って康介は私の頭をくしゃくしゃっとした。今は何だか康介の優しさが心にしみた。最低だ…、私何やってんだろ。浮かれすぎて自分のことばっかりで、周りの人の気持ちなんて何も考えてなかった。


「熱はどう?何か食べられそうか?」


康介がコンビニの袋からおにぎりやらプリンやら私の好きな物をテーブルに並べていく。


「うん、熱もだいぶ下がったし、今日しっかり寝たら明日は仕事行けると思う。」


「そうか、じゃ俺は帰るけど1人で大丈夫か?」


「小学生じゃあるまいし!康介、お母さんみたい(笑)」


「お母さんって!心配してやってんのに。ま、ちょっとはマシになったみたいだな。また何かあったら遠慮なく連絡してこいよ。」


ヴヴヴヴヴヴ…。


「康介スマホなってるよ。」


「あぁ、ごめんちょっと出る。」ピッ「はい。」


何だろう、康介がただスマホで通話してるだけなのに様になるこの感じ。私にも少しその要素、分けてくれないかなぁ。


「うん、もう出るからあと20分くらいかな。…うん、迎え行くから待ってて。じゃ、後で。」ピッ


「ごめん、今日もしかして予定あったのに寄ってくれたの??」


「病人は気にするな。俺がしたくてしたことだから。じゃ、ゆっくり休めよ〜。」


そういうと康介は身支度を整え部屋を出た。熱のせいか康介のいなくなった部屋で1人少し寂しさを感じた。そのあと、テーブルにならんだものを食べられるだけ食べた。早く治して康介に心配かけないように、一馬くんとちゃんと話しができるように。今できることをちゃんとしようと心に決めた。


『一馬くんと話がしたいです。』


もしかしたらもう私なんかに会いたくないと思っているかも知れない。それでも何もしないよりはマシだと気持ちを奮い立たせ一馬くんにメッセージを送った。


あとは返信を待つだけ。すぐに既読になったものの、一向に返信は来なかった。次の日もその次の日も…。

奈央は今まで結構、友だち→恋人や同僚→恋人のように相手のことを知っていく中でいいなぁと思ってきたタイプで、今回の一馬のように一目惚れは初めての経験でした。


しかし一馬のこと何も知らない中で『好き』の気持ちだけがどんどん大きくなってしまい不安が先に立った結果が今回の音信不通事件です。


今まで自分の気持ちでいっぱいいっぱいだった奈央ですが、これから一馬との関係修復?に尽力します。

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