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きみと6月の雨  作者: 藤井 頼
始まりの雨
13/51

13話 翠雨(すいう)

俺の恋はいつだって始まる前から終わっている。


初恋は緑が鮮やかな小1の5月だった。久しぶりに会った従姉妹の奈央姉に恋をした。高校生という存在それだけで俺の嗅覚を刺激した。だけど、奈央姉には同じ高校に男がいた。


それからの俺は出会ったばかりの野球に没頭していった。中学に上がる頃には投手としての頭角を現し、野球の名門校にスポーツ推薦で入学したのだ。


「真田くん、付き合って下さい。」


「…いいけど、俺野球で忙しいよ。それでもいい?」


2年に上がる頃には、甲子園常連の強豪校にもかかわらずエースとしてマウンドに上がるほどの実力をつけた。そこそこの顔面偏差値と野球部のエース、あまり話さずミステリアス…そんな要素が俺の価値を上げていった。だから自校に限らず知らない女子からの告白は絶えなかった。


「やっぱり私、もう真田くんとは付き合えない。」


「そう。わかった。」


来る者拒まずで告白されて彼女がいなければ何となく付き合った。だけど、最後は決まって別れを切り出される。最後は大抵『真田くんは私のこと好きじゃないでしょ?』なんて言われるのだ。


俺なりに野球と勉強をしながら彼女のこともそれなりに考えた。彼女の望みは出来る限り叶える努力もしたつもりだ。


だけど、俺はスポーツ推薦で野球をするためにこの高校に入った。そこら辺の適当に勉強して部活して、バイトなんかしてるやつみたいな時間の融通が利く彼氏にはなれないわけで、時に上手く言葉をかけられず誤解も多かった。


「はじめまして!真田律くん。私、野球部マネージャーの蒼井友梨(あおいゆり)です。よろしくね。」


笑顔がキラキラまぶしくて、誠実そうなその瞳がひどく心を揺さぶった。蒼井に会ったのは高校1年の春。たまたま席が近くて、野球部で。


蒼井は今まで出会った女子とは違い、俺のことを特別扱いはしなかった。野球部のマネージャーとして、しっかり仕事をこなしてみんなを支えてくれた。いつしかそんな蒼井のことを心から大切な存在だと思うようになったのだ。


「真田くんはモテるけど好きな子いるの?」


「俺は…今はいない。」


「そうなんだ。じゃ、野球が恋人だね!」


いやいやその流れでそうなるの?そうゆう話するってことは少なからず俺に興味あったりするんじゃないのか?


「蒼井はいるの?好きなやつ?」


「えっと…いるよ!他校だけど、彼も野球やってて。」


そうゆうこと。てか、そんな恥ずかしそうに話すなんてよっぽどそいつのこと好きなわけね。


「ちなみに付き合ってんの?」


「とんでもないよ。彼も野球一筋だし、だいいち私話したことないもん。ただの片想いだよ!」


ただの片想いって。また俺の恋は始まる前から終わってんだな。


「そう、頑張れよ。」


「うん、ありがとう真田くん。」


そんな屈託のない笑顔見せられても、本当は応援出来るわけないだろ。俺はお前のことが好きなんだから。


「…橘一馬か。」


それから間もなくして秋大準決勝で当たったチームの正捕手が蒼井の片想いの相手だと知った。なかなかきれる頭脳派の捕手で、投手一人一人の個性を最大限に引き出す力をもっている選手だった。


俺は橘一馬(たちばなかずま)が蒼井の片想いの相手だということと、こいつとバッテリーを組んだら面白そうだということ2つの事実で頭がいっぱいになった。


「緑ヶ丘城西の真田…だよな?」


運命のいたずらか俺は大学で橘と再会した。思いも知れず、橘とバッテリーが組めることになり投手の俺はアドレナリンが出まくっていた。


「あ、はじめまして橘一馬くん。野球部マネージャーの蒼井友梨です。よろしくね!」


そうだった。一瞬にして現実に引き戻される。蒼井はきっと長かった片想いを一歩前に進めたに違いない。じゃ、俺は?高校1年の春から何も変わっていない。このまま2人のそばで、行く末を見守っていくんだろう。


「2人には話とかないと…、俺、好きな人が出来たかも。」


大学3年になり状況が一変した。5月、その日は珍しく朝から雨が降り続けていた。まだ小さな新緑を打ちつけながら…。

律の恋愛にクローズアップしました。

初恋は実は奈央だったんです!


そして数々の恋愛では律なりに彼女を大切に思っている反面、あまり話す方ではないためすれ違いから周囲にかなり誤解される存在となってしまいました。


しかし律は蒼井と出会い長らく片想いをしています。その間も前ほどではありませんが、チラホラ彼女もいました。ただ、大学生になってからは一馬との野球に重心をおき節度ある生活をしてきました。それはやはり蒼井のためでもあったりなかったり…?

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