表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

プロローグ

 ダンジョン。


 それは夢とロマンが溢れる夢の世界。


 どこまでも続く迷宮。


 入った者の命を奪う凶悪なトラップ。


 人を越える力を持ったモンスター。


 ありとあらゆる危険が待っている。


 だが、それでも富と名声を求め、ダンジョンに入る者は後を絶たない。


 皆命を懸け、ダンジョンに様々な夢を見るのだ。


 そういった者たちは、畏敬の念を込めてハンターと呼ばれている。


 ハンターたちは、夢を現実に変えるために今日もダンジョンに足を運ぶ。


 ダンジョンは老若男女問わず、誰からの挑戦も受ける。


 例えば、貴族のパーティーくらいでしかお目にかかれないような高価なドレスを着た少女なんかも、ダンジョンは余裕で受け入れる。


 ――命の保証はしないが。


「嫌ああああ! 誰か助けてええええええええ!」


 助けを乞う少女の悲鳴が、ブロック状の石を隙間なく敷き詰めたダンジョン内に響く。


 黄金色の髪を振り乱し、紅の瞳には鬼気迫るものが宿っている。


 少女は現在、とある脅威から全力で逃げている。


 どれくらい全力かと言うと、顔面の穴という穴から色々な汁を垂れ流し、最早少女と呼ぶことが難しい顔になるくらいだ。


 着ていたドレスはすでにズタボロ。上半身の部分は砂埃の他に、いくつかの裂け目があり、瑞々しい肌を露出している。


 スカートの膝より下はとっくの昔におさらばした。


 一見すると露出度が高くただの痴女にしか見えないが、そんなことはない。彼女は現在進行形で命の危機に晒されている。


 原因は彼女を襲おうとする脅威にあった。


「だ、誰かいませんの!? 鉄球が、鉄球が(わたくし)を追いかけてええええ!」


 少女の身の丈をあっさりと越えるサイズの鉄球が、少女を飲み込まんばかりの勢いで迫っていた。


 少女は荒い息を吐きながらも、懸命に走り続けるが鉄球との距離が徐々に狭まる。


 鉄球は特別早いわけではない。少女が異様に遅いのだ。


 理由は少女の足にある。実はこの少女、裸足なのだ。


 無論初めから裸足だったわけではない。最初の内は一応履いていた――ドレスに良く合うハイヒールを。


 パーティー会場ならいざ知らず、死の危険を伴うダンジョンにそんな格好で来る辺り、少女の頭の悪さが窺える。


 流石に裸足では、転がる小石を踏んだりして、思うように走れない。


「本当に誰かいませんの!? このままでは私、死んでしまいますわああああ!」


 されど助けが来ることはない。


 広大なダンジョンにおいて、助けを求めるような状況に陥ることは死と同義だ。


 それは少女もよく分かっているため、助けを求めながらも少女の顔には諦観の色が見える。


「先立つ不幸をお許しください、お父様」


 鉄球に潰されそうになる直前、少女が踏んだブロック石の一つが不自然に奥に入り込んだ。


「え……?」


 音を立てて、少女の足元の()()()()()()


 足元を見ると、底なしの闇が広がっていた。


「いったい何なんですのおおおお!?」


 状況が理解できずパニックに陥る。


 しかし何かできることがあるわけでもなく、少女は悲鳴と共に落下するのだった。






 ――とある場所にて。


「お兄ちゃん、女の人倒れてるよ?」


「おお、よく見つけたな愛しの妹よ」


「助ける?」


「いや、身ぐるみ剥いでから身体の方は奴隷商人にでも売り飛ばすか」


「でもこの人、お金になりそうなものは何も持ってないよ? 服はボロボロだし」


「……とりあえず持って帰るか」

 


 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ