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贅肉魔法物語 ~そこは、体脂肪率が魔力の強さに直結する異世界でした~  作者: 御手々ぽんた


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もうすぐチョコレートの時期ですね。見切り品という名のご褒美。

 ミレーナとゲコリーナが互いに向き合って立つ。


 先ほどのガンゾールとマンルーのように話すこともなく、互いに剣を納めたまま、静かに佇んでいる。


 ミレーナはいわゆるレイピアのような細剣を一本、右の腰にさしている。

 何でも、とある国の戦士階級の出らしいのだが、放浪癖があり、ふらふらと世界を廻っていたらしい。その左手一本の剣で食ってきたと聞いた。しかし、どこも飢餓が酷く、コレー村まで流れて来たそうだ。

 こいつは俺と直接雇用契約を結んでいる。


 時折小さく、げこげことゲコリーナから聞こえてくる。


 ゲコリーナは顔を隠すようなフード付きのポンチョを着ている。


(マンルーといい、獣人はポンチョ好きなのだろうか。)


 ゲコリーナは見た目が二足歩行の蛙そのもので、しかも身長も初めて会った頃のリリーヌーと同じくらいしかない。

 しかし、モレナの見立てでは、この二人が黒水隊の強さトップらしい。


「それではこれより模擬戦闘、最後の試合を始める。ミレーナ、ゲコリーナ、互いに相手に重傷を負わせることの無いように。では、はじめっ!」


 モレナが掛け声を掛ける。


 はじめに動いたのは、ゲコリーナだ。


 ゲコリーナが何かした、と思ったら、ガキンッと金属同士の擦れる音が辺りに響く。ミレーナが抜剣し、ゲコリーナの何らかの攻撃を弾いたようだ。


 その後も立て続けにガキンッ、ガキンッと金属音が響き渡る。


 俺は目を凝らして、よくよく見ると、どうやらゲコリーナが舌を伸ばしてミレーナを攻撃しているっぽい。

 しかし、ミレーナも涼しい顔をしてその攻撃を細剣の突きで打ち返している。


「モレナは見えるか?あれ。」


「はい、ゲコリーナは舌装剣(ゼッソウケン)という舌に装着する刃を使います。蛙人でも極々僅かしか使い手のいない剣技ですね。」


 目にも止まらぬ早さで振るわれるゲコリーナの舌に、それを涼しい顔をして的確に一つ一つ突きを当てているミレーナ。

 俺は早々にモレナの解説に頼むことにする。


「解説頼む。」


「あっ、はい。今は、ゲコリーナが様子見の攻撃をしているところですね。ゲコリーナは八つの舌装剣を次々に舌先に換装して、変幻自在の舌の動きで全方位から多様な飽和攻撃をするのを得意としています。その様子が八重の花びらのような影を地面に落とすことから、減光の八重刃という通り名を得ていて、ここらの辺境では有名です。」


 互いに最初に立った位置から動かずにひたすらに打ち合う二人。

 その距離は五メートルは離れている。


「ここまでは準備運動みたいなものでしょう。そろそろですよ。」


 ミレーナに動きがある。

 一歩、また一歩と、はたから見るとまるで散歩をしているかのように気楽な様子でゲコリーナに近づいて行く。

 もちろん、細剣と舌装剣との衝突は続いている。距離が縮まれば当然、その衝突はより激しさを増していく。

 耳をつぐまんばかりの金属音が、俺にはまるで前の世界の工事現場を思い起こさせる。


 俺にはミレーナの腕の動きもゲコリーナの舌の動きもとうに追えなくなり、ただ、耳を両手でふさいで成り行きを見守る。


「あと一歩です。」


 モレナがそう呟いたとき、ゲコリーナが、高く高くジャンプする。

 蛙の獣人らしく、驚異的な高さをみせる跳躍。


 両手足を縮こませ、丸くなるような姿勢で、ミレーナの頭上に回転しながら落ちてくる。


「あ、換装しています。三枚の刃……」


 モレナの解説。


 俺の目には舌の動きが速すぎて、ゲコリーナの丸い姿から何本もの舌が花弁のように広がり、ミレーナに襲い掛かっているようにしか見えなかった。


 ミレーナの完璧だった細剣での迎撃に、ついに綻びが見える。腕にいつの間にか切り傷ができ、そこから血が舞う。


「そこまで!」


 モレナが静止の声をあげる。


 地面に降り立ったゲコリーナが口を開く。


「私の負けげこ。模擬戦に三の刃まで使わされたのは初めてげこげこ。」


 俺はそういうものなの?って顔でモレナの方を向く。


 モレナはミレーナとゲコリーナに向かって口を開く。


「ミレーナは血を流している。例えゲコリーナが先にミレーナのプレッシャーに負けての行動だとしても、ゲコリーナの勝ちとする。」


「私は構わない。」


 ミレーナが言葉すくなに答える。


「わかったげこ。」


 ゲコリーナは何を考えているか非常に分かりにくい表情でそう答える。


 経緯があまり理解できていない俺はとりあえずゲコリーナに健闘をたたえ、二人に皆と同じように黒飴を渡して、ミレーナの傷を癒す。


「これにて、模擬戦闘は終了とする!全員、駆け足で黒水寮まで戻るぞ!先導はミレーナ!」


「了解。」


「ガンゾールと、あと二名備品の回収。」


「了解です。」


 ガンゾールは答え、手早く二名を指名する。


「では、最後にユタカ様、お願いします。」


 何故か俺に話を振ってくるモレナ。


(いや、そういうの、やめてほしい……)


 俺は仕方なく立ち上がり、皆を見回す。

 一人一人と視線を合わせるように、ゆっくり時間をかけて見回したあと、口を開く。


「皆、黒水隊の初めての模擬戦闘、ご苦労。素晴らしい戦いだった。俺は、君たちなら最強になれると確信している。」


 一度、話すのをやめて、皆を見る。


(まだ話さなきゃいけない雰囲気だ。)


「今日のご飯は、米だ。大量にある。たらふく食べるぞっ!」


 俺が付け足す。


 黒水隊の面々がそれに応えて歓声をあげる。

 モレナが掛け声を掛ける。


「静粛に!では、行動開始!」


 その日は、皆がはち切れんばかりに米を食べた。俺も当然誰よりも食べた。和気あいあいとした食事風景、大量にある料理。

 俺は幸せな気分でいた。


 カテンルーが不吉な知らせを持ってくるまでは。







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