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Be Free 〜翼竜の物語〜  作者: 森 日和
マランバの日々
6/48

校内探検

小鳥のさえずりと明るい日差しが部屋一杯に射し込んで、私の顔を眩しく照らした。

「ん…」

体を伸ばして、大きなあくびをしながら私は立ち上がった。周りを見ると、一瞬、ここが何処か分からなくなった。

「夢じゃ…なかったんだ」

何気ない朝の起床。その中で、私は何か大切なものを得た気がした、そして、何か大切なものを失っていく気がした。

私は…フィー。

私は…フィー?


「起きたかい?」

扉を開いたのは、シュクジンだった。

「特別授業はここの真下、地下一階講座室で行われる。昼からの授業だから、朝のうちに学校探検でも済ませておこうか?」

「…はい」

「そういうことで、じゃあ準備ができたら読んでくれ。これ、私の番号だから」

シュクジン先生は紙切れを丸めて私に投げた。それを解くと、“0524”と書かれてある。

「地上フロア、五階二十四号室が私の部屋だから、用意を済ませたら来るんだよ」

「分かりました」

「じゃあ、そういうことで〜」

パタンと扉が閉められると、じんわりと寂しさが広がった。



初めて着る制服。着慣れない服装に違和感を感じながら、五階二十四号室に着いた。この校舎は石造りで、比較的涼しい。反面私はかなりの軽装だから、少し肌寒い。

「お、早いじゃん」

「いいえ、これくらいは…」

「じゃあ、行こうか」

シュクジン先生は正装だった。黒い布のようなもので全身を覆っている。

「その服装は…?」

「ああ、これね。うざったらしいんだけど…先生たるもの生徒の模範。だから、これを付けなくちゃいけないんだ」

「…なるほど」

「まあ面倒くさいよ。それよりも、似合ってるじゃんか」

「…本当ですか?」

「ああ。でも、今フィーが来てるのは竜に乗る時の為の服装だね。言い換えると“正装”になる」

「…なるほど」

「まあ、服は何でもいいよ。みんな大学生だし、青春しちゃいな」

そう言って、私とシュクジン先生は顔を合わせて笑った。

「行こう。長話をしていても無駄なだけだ」



こうして、私たちの校内探検がスタートした。

まず学校の構造だ。前に述べた通り、学校はコロッセオのように広場を囲んだ構造になっており、地下三階、地上七階の計十階構造になっている。この中に浴場、食堂などの施設が完備されており、生活ができる。更に、生徒には自分の部屋が与えられるので、“住んでください”と言っているようなものだ。

ちなみに、私の部屋は“0281”である。

「学校が全部石造りなのは、温度管理にあるの。竜達の居住区は地下三階にあるんだけれども、そこは夏でも御構い無しに涼しいからね」

「竜は温度にうるさいんですか?」

「そうよ。あと、たまには地下三階に顔を出してやるのよ。プティが待ってるから」

「あ…」

すっかり忘れていた。

「まあ、色々あった訳だし仕方がないよ」

シュクジン先生はとても優しく、とてもカッコイイ。その自信に満ちた顔に、私は危うく惚れそうになった。危ない危ない…



私とシュクジン先生は校舎を一周して、また南側に戻ってきた。

「じゃあ、食堂は昨日連れて行ったから良いとして…浴場ね」

「はい」

「まあ、覚え方としては食堂の丁度一個下の階。ただでさえだだっ広いから、浴場や食堂などの必須施設は東側に集約されているの。だから、東側には全校生徒が集まって来る。故に、食堂や浴場もだだっ広いの」

「全校生徒を収容できるくらい、物凄い広さなんですね」

「そう言うことよ」

「じゃあ、北西南は何があるんですか?」

「南と北は主に生徒居住区。まあ、勿論南の部屋の方がアタリ、北はハズレよ」

「…ですよね」

「まあ、それくらいかな…最低限伝えることは。後は自分で開拓してみなさい」

「分かりました」

「分からないところがあったら何でも聞きなさいよ、この私に」

「はい!」

私は深々と頭を下げた。

「じゃあ、帰って午後の授業に備えます」

「よろしい」

シュクジン先生はにんまり笑って

「頑張れ!」

と、熱いエールと共に拳を突き出してくれた。


校内探検の最中、私はずっと不思議な気持ちに悩まされていた。まるでずっと、この世界に住んでいたような気がして、思い出せそうで思い出せないもどかしさに心が焦燥していた。


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