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Be Free 〜翼竜の物語〜  作者: 森 日和
プロローグ
3/48

フィー検査

もう、元の世界に未練はない。

こんな幻想的な世界を、私はずっと夢見ていた。

だから、泡を吹いてしまうほど嬉しかった。



私のバディ、プティ。

プティへのコンタクトの仕方、乗り方などを私は母に一から教わった。母は私のことを記憶喪失だとか言ってとても心配してくれる。だからこそ、学校に行って頭を冷やせと言う。


矛盾だらけではないか?そう思いつつ、私は教わった通りにプティに乗ってみた。


「プティ、飛べる?」

私が言うと、プティは勢いよく翼を広げ、天に舞い上がった。力強い筋肉の流動が私の体を震わせた。

「いいよ、プティ!」

感激した。体中を巡り巡る興奮の波動が、私を掴んで離さなかった。やっぱり…この世界は最高だ!そう感じた。

「はは…ハハハ!」

こんな天真爛漫な笑みを浮かべたのは、いつ頃だろうか…子供の時の、空を飛ぶ夢以来だ。

「楽しいね、プティ!」

私は叫んだ。アルコールが入ったかのような、すっかり楽しい気分になっていた。

「さあ行きましょう、学校に!」

「クェ!」


プティは風に乗って大きく飛び立った。羽ばたく度に風を感じた。冷たい風、肌がゾゾっと逆立つような風だった。寒かったけれど、楽しかった。これからどうしよう、どうやってこの世界で暮らしていこう…そんな不安は全部吹き飛んだ。プティが、その不安を消してくれた。

十分ほど飛んだ後、周りを水堀で囲まれた大きな建物が見えてきた。ローマのコロッセオを五倍ほど大きくしたような石造りの建物。あれが…学校なのか。改めて緊張してきた。


プティは安全だった。高高度を飛んでいるはずなのに、怖さは無かった。着地の時も、左右に揺れずにまっすぐと着地してくれた。


私たちは、校内のど真ん中にある広場に降りた。


「ありがとう。次もよろしくね」

「グェ!」

勿論任せて!とプティが言ったように感じた…気のせいだろうか。



「待っていたよ。フィー」

声がしたので振り向くと、私よりも高身長でスタイル抜群の赤髪の女性がいた。

「私の名前…知ってるかい?」

「え…いえ」

「…ありゃ」

宝塚歌劇団の男役のような勇ましい女性。それが第一印象だった。

「私はシュクジン。君の担任さ」

「え⁉︎」

思わず声を出してしまった。

「いやぁ、君のお母さんに言われて予想していたことだが、記憶喪失はどうやら本当らしいな。随分と大人しくなったじゃないか」

「…はい」

「とにかく、記憶喪失は深刻だ。下手すれば一回生からやり直しになる。…と言っても分からないだろうが、とりあえず頑張れってことさ。付いてきな」


シュクジン先生に連れられるがまま、私はとある部屋に連れてこられた。

「検査室だよ。ここで待っているから、レア先生に診てもらいな」

「分かりました」

パタン…扉が閉められると、再び孤独が私を襲った。シュクジン先生…なぜか、とても親近感が湧いた。

「こんにちは!」

「こ、こんにちは…」

レア先生は黒髪のショートボブと黒縁眼鏡に、白衣を着ていた。まるで菫の花のような可愛らしさと凛々しさを兼ね備えていた。だが、私の中の第一印象は第一印象は“可愛い声だなぁ”だった。

「私はレアです、保健室の先生をしています。記憶喪失の疑いがあるので、入念に検査しますね」

「記憶喪失というより、入れ替わっていると言った方が…」

「何か言いましたか?」

「い、いいえ」

「そうですか。では開始しますね」

こうして、一通りの検査が行われた。フィーの過去にまつわるエピソードやいとこの名前、友達の名前を訊ねられた。分かるはずがない、何しろ私とフィーは別人なのだから。

フィーよ、早く帰ってこい。


「終わりました。これは…駄目ですね」

レア先生から通告された。

「明日から特別授業に配属してください」

「特別授業…」

「まあ、今のあなたなら分からないでしょうが…詳しくはシュクジン先生に聞いてみてください」

「はい、分かりました」

「頑張ってくださいね。きっとあなたなら立ち直れますよ」

「はい!」


レア先生との話で、フィーの過去を私は少しだけ知ることができた。

フィーは天才であり、十三歳の飛び級で大学に入学し、十六歳で卒業している。その後は研修生として、この大学で働いていたらしい。

でも、わたしにはフィーの凄さが分からない。そもそも、竜学部竜学科がどんな組織なのかを確認しないと、是非の判断は下せない。だから、色々とんでもないことになったけれど、明日からは…頑張ってみようかな。そう思った。

5/23

文章欠落を改善しました。

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