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拒絶の妖術師(ソーサラー)  作者: 大西 けんや
6/6

恨み

卒業試験2日目。

俺はまた(ゆき)と会場にきてきた。


「よく眠れたか?」

「まあ、そこそこね」


俺はなんとなく雪に聞いてみると、

そっけない返事をしてきた。

まぁだいたいそうだよな。

俺はだいぶ緊張しているが、雪はそんな事はなさそうだ。

きっと余裕なんだろな。

あいつならまた瞬殺にするんだろな。

しかし、昨日つかさから聞いた、話しが頭によぎる。

あれは何なのだろう。

今は気にしても仕方ない。

とりあえず試合に集中しなきゃ。

次々と試合が終わっていく、つかさペアはもちろん二回戦通過をした。

さすがに強いな、俺でも見たらわかる。

つかさの魔法攻撃、回復能力はとても優れていた。

そして、俺らの番がきた。

ステージに立ち、雪は小声で言ってきた。


「昨日の同じように、私がすぐ終わらすわ」

「……わかった。でも気をつけろよ」


俺はチラリと、近藤の方を見る。

何か笑みを浮かべているように見えた。

そして、試合開始のブザーとともに、


「始め!」


昨日と同様、雪が勢いよく向かって行った。

近藤と相打ちになる。


「よぉ、氷堂。この時を待ち望んでいた」

「何?私はあなたを知らないわ」

「そうだろうな、俺はお前の母親の事を言ってるんだからな」

「私のお母さん!?何を言ってるの!?」


何か話しているのか、あまり聞こえづらい。

雪は何か動揺してる様にも見えた。

そして、少し距離をとり、近藤を睨んでいる。

近藤がいきなり笑い出した。


「俺はお前を殺すんだよ…。南野!!」

「ほ、本当にやるんですか……?」

「当たり前だ!いいから早くしろ!」

「は、はいっ!」


そう近藤が自分のペア南野に命令すると、

南野は、何やら暗唱を、結界を作った。


「なんだ?これは?」

「多分、誰も入れなくなる結界。試験では禁止されているはずよ」


雪は俺の横にきて、状況を説明してくれた。

そして近藤は、自分の小刀を取り出し、自分の腕を切った。


「なっ!?何やってんだ!?」


俺は思わず叫ぶ。

雪も驚き、体が震えていた。


「はぁはぁ、これでやっと復習できる…。お父さんの恨みだ……。死ね!!!氷堂!!!!」


切れ腕の周りに魔方陣が浮き出る。

黒いオーラと共に出てきたのが、妖!

4メートルぐらいある、大物だ。


「おい!!なんで妖が出てきた!?」


俺がテンパっていると、雪も冷静を装いながら説明してくれた。


「あ、あれは妖召喚の魔法。禁忌とされている魔法よ。自分を身代わりになり、妖を召喚できるみたいよ」

「そ、それってあいつは……」


雪は首を横に振る。

そして、妖は奇声を出しながらこちらに走ってくる。


「あなたは、隠れていて!!」

「おい!雪!!」


雪は妖の方に走っていった。

得意とする、氷の異能、その斬撃を一撃食らわす。

しかし、それでは効かず、妖は攻撃してきた。


「雪!!」


俺は思わず、駆け出す。


「ダメ!!」


そんな雪の声が聞こえた。

まだ無事みたいで、少し安心していた時。

妖が、俺に気づき、攻撃してきた。

かわそうとするものの、少し当たってしまった。


「龍児!!」


そんな雪の声がして、俺は倒れる。

このままでいいのか?

また何もできない。

雪はあの妖に殺されるかもしれない。

すると、自然に体が動き、さっきまで痛かった傷もひいていく。

そう言えば雪が危ない!

妖に殺される!

すると、体が動き、妖に攻撃をいれる。


「あなたそれは……?」

「こ、これは!?俺の異能??」


俺は雪に言われて初めて気付く。

俺が手にしているのは、黒い刀。

これが俺の異能なのか。


「雪!大丈夫か!?」

「え、えぇ私は大丈夫だけど、あなたは?さっき攻撃を受けたんじゃなかったの?」

「ん?俺は平気だ。それよりあの妖をどうにかしようぜ」


なんだろう。

今ならあの妖を倒せる気がする。

体が軽く、力が溢れ出てくる。

そして、勢いよく走り出し、妖に攻撃をいれる。

どうやら効いているようだ。

俺は夢中で切り刻んだ。

すると妖の攻撃に気づかず、危ないと感じた時。

氷の結晶が止めてくれた。


「ちょっと!気をつけなさいよ!」

「雪!ありがとう!」


俺は余計に力が入り、刀を振りかざす。

すると、斬撃がでて、妖を切り裂いた。

その斬撃は妖だけじゃなく、結界すらも、キリ砕いていった。


「や、やったな!雪!」


俺は満面な笑みを浮かべながらそう言った。

雪は疲れたのか、その場に座り込んでしまった。


「だ、大丈夫か?」

「少し、力が抜けたわ…。」


そして、急いで先生方や、上級者達が駆け寄り俺たちを医務室に運ばれていった。

医務室で、状況の説明、どうやって倒したのかとかを2時間近く事情聴取をされていた。

どつやら、結界があった為声すら聞こえていなかったらしい。


「はぁー、疲れたな」


俺たちは、その事情聴取をやっと解放され、医務室で休んでいた。


「……ごめんなさい。私のせいで…」

「なんでお前が謝るんだよ」

「きっと私のせいだから」

「どうしてこうなったかわかるのか?」

「確かあの近藤という人のお父さん、私のお母さんと、妖退治のグループだったわ。あの時もね」

「あの時って、Sランクの妖相手にした時か?」

「知っていたのね」


雪はうつむき、少し悲しそうに続ける。


「私のお母さんはそこのグループのリーダーだった。たまたまSランクの妖を相手にする事になって、必死に戦ったけど、負けてしまった。生き残りの人もいるわ。その人達は、お母さんと近藤さんに助けられたって言ってた。近藤さんはとてもお母さんに崇拝していた人だから、きっとお母さんについていったのね」

「でもそれで、お前を殺す理由になるのか?」

「そんな事わからないわよ」


逆恨みってやつなのかな。

よくわらない、結局雪を殺しても何も変わらないのに、それは近藤のお父さんの意思を無駄にしてる気がする。

でもこれだけはわかる、とても近藤はお父さんが大好きだったんだな。

俺には少しわからないが。


「それより、あなたは大丈夫なの?」

「さっきも言っただろ?俺は平気だ!」

「それならいいんだけど」


雪はどこかほっとしている顔している。


「ってかもう「あなた」じゃなくて龍児って呼んでたじゃねーかよ」


俺はあの時の事を思い出す。

そう言えば確か龍児って大声で呼んでたよな?

すると、雪は頬を真っ赤に染めている。


「そ、それはとっさに出てしまって!!あの、いつも夜練習しているとかそんなんは絶対にしてないから!!」


なんだこいつ!?色々キャラ崩壊してるじゃねーか!

でもなんか可愛いよな……。


「練習してたのか……?」

「___!し、してないわ!!」

「それは別にいいんだけど、これからはちゃんと龍児って呼んでくれよ?」


やっぱり仲良くはなりたいからな。

ただでさえ、1人でこの世界にきて心寂しいのに、仲のいい友達はいっぱい欲しいもんな。


「わ、わかったわ……」


まだ顔も赤く照れている様子。


「じゃあ、今試しに呼んでみてくれよ」

「えぇ!?今!?」


俺はそんな雪を見るのが楽しくてついいじめてしまった。

雪は余計顔を赤くし、少し体を震わせながら、


「りゅ、龍児……」


小声ではあるが、はっきり聞こえた。

改めてこいつと仲良くなった気がした。


「あぁ、雪!これからもよろしくな」


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