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斎藤とのきっかけ

 俺の視界を失った時、目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。

「……は?」

 第一声は最大限の疑問の言葉だった。最初に目に飛び込んだ光景は、太陽がサンサンと降り注ぐのを遮るカーテンと、窓際に立つ幻想的に見えてしまうもないくらいの黒髪ーーーー斎藤だった。

 俺の声に気づいた斎藤がゆっくりと髪を揺らしながら、振り向いた。一見冷たそうに見えるその瞳に俺を写し出した。

「……おはよう。あと、ありがとう」

「お……う……」

 今気づいたが、斎藤の声をよく聞いたのは初めてかもしれない。鈴のような声は、心地よく病室の響いた。

「今、呼んでくるから」

 瞬きをする余裕もないくらい見とれ……いや、呆然と斎藤が退室するのを目で追っていた。

「……そうか」

 途中までしか記憶はないが、俺は斎藤を助けれたんだろう。多分。自分の体をよくよく見ると、足は包帯がバンバン巻かれてるし、左腕から何やら管が伸びていた。

 俺はどれくらい寝てたのだろうか。腕は上げられない、上体を起こすことも出来ない。そして、異常にだるい。

 急に襲ってきた睡魔に抵抗することもなく、俺は意識を手離した。








 もう一度目を覚ましたときも、当然ながらベッドの上だった。滅茶苦茶心配してたらしい、家の母親のうっすらと隈があったのを気づいた

「あー、その、ごめん」

 一応謝っておいた。心配させて悪いなと思ったのは事実だ。口先だけの謝罪じゃないことはどうやら届き、

「……ったく、あんたは」

 と、呆れられたお言葉をもらったが、誉め言葉として受け取っておくよ。


 骨折全治1ヶ月らしい。思ったより酷くなくて安心した。寝てたのは一日位らしい。まぁ、頭を打ったらしいけど心配するほどのもじゃなかったらしい。

 兎に角、俺は大丈夫だった。


 あの帰り道の結末はこうらしい。


 ギリギリ間に合った俺は、斎藤を押し出すように突撃し、斎藤の代わり足が鉄パイプの下敷きに。そのとき頭も打ち付けて、斎藤は少しの脚の擦り傷だけで済んだらしい。

 救急車を呼んでくれたと分かったのは後日だった。


 人助けしたのか迷惑かけたのかよく分からん状態になったのは、俺はしらん。



 

 2日間学校を休んだ俺は、若干の気まずさを感じつつも慣れない松葉杖をつきながら、登校した。

「ウイッス、浩史! おばさんから聞いたぜ! 漢になったな!」

 腐れ友人、山田椿。朝っぱらから元気なのは今も昔も変わらない。唯一の取り柄のような気がする。

 昔からの仲がいい家の母親と山田。流石に情報が早いな。

「あーでも、お前がそんなことをする奴とは思わなかったよ。友達歴10年越えでも分からんな」

「あぁ、俺もビックリだ」

 助けたくて助けた訳じゃなかった。何時もの俺なら、何処かで諦めてるよ。あの状況は。でも、あの時は身体が勝手に動いてた気がする。そう、山田に告げると大笑いされ「何処の少女漫画のイケメンだよっ!」と貶されたので、松葉杖で膝を突いてやった。所謂、膝かっくんだ。

 脚を怪我してなかったら、蹴るとこだがな。運いい奴め。


 隣の席の斎藤と言えば、今日は来てないようだった。欠席の理由はよく聞かされてないが、体調不良とのこと。

 まぁ、なんだ。自分の登校した日に休まれると、悪いことしたんじゃないかと思ってしまう。まともに話したことは今まで一度もないので、その可能性は低い。

 その日は憂鬱な気分で過ごしていった。






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