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夏休みの一日

暑い……暑い……。

働き者には程があるんだぞ! と太陽に諭してあげたくなるぐらいデリケートな俺の肌に照りつけてくる紫外線。

今、ある男との待ち合わせだ。

決してそっちの方じゃないぞ。勘違いしないように。


引きこもり体質の俺にとってはクーラーの効いた部屋で、読書に励みたいものだ。

ようやく夏休みとなるが、時間の流れは早いもので8月中旬。たまーに斎藤の生存確認の連絡をするくらいで、無駄に多い宿題を片付けたりと俺の休みは、充実としたぼっち休みだ。

このまま、新学期を迎えると思っていた。願っていた!!だが、静寂な私室にバイブ音が鳴り響く。画面に表示された【山田椿】。大体こいつからの着信は嫌な予感……いや、確実にロクなことしかないと定番化なのだ。出るべきではない、そう、俺は学習している。







それは去年の夏休み。夏休みの間、音沙汰無しだった山田。まぁ、携帯をとって「何だよ。よりによって夏休み最終日にー」とあからさまな拒絶感を出した。

すると、

「いやぁーその参ったなぁと思って。それで真面目な佐々木様な一つお願い事がありまして……」

と、フラグの立つ言葉から始まる。流石に察するだろう。

「宿題なら手伝わないからな」

「そこを何とか!!マジで間に合わない!俺とお前の仲じゃないか?いいじゃんかー手伝ってくれ!!」

無性にいらつく。

「あぁん?それが人に頼む態度か?」

「ひぃっ!すいません、親分。この件に関しては力を貸してくれませんか!義理堅い親分なら、きっと!!助けて下さいますよね!!」

「何だ、その恩気せがましい言い方は?……はぁ、分かったよ、手伝えばいいんだろ?」

山田は、電話越しでも分かるほど水を得た魚のように元気になった。

「ありがとうごさいやんす!!感謝しきれませんーー!!」

「お前、キャラの統一しろや……」

「返すお言葉もありません」





という風に、痛い思い出がある。

なので、無視させて頂こう!





数十分後……。




ピロロロロ……ピロロロロ……ピロロロロ。


「あぁー鬱陶しい!!何ださっきから電話しやがって!!」

ムシャクシャしながら履歴を見ると悍ましいほど同じ名が。

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】

【山田椿】……。

「気色悪ぃ」

口から自然と出た。


そして、俺の手中でバイブとピロロロロと呆れるほど聞いた着信音。

溜め息をして、力のない親指で、通話ボタンをタップする。

「おぉー!やっと出てくれたーー!!俺のマイハニー!」

「何だよ、さっきから。お前のマイハニーでもないが」

「つれないこと言うな。相棒」

相変わらず、キャラらブレる山田。

「んで、何だよ。今年は課題手伝わないからな」

「ぎくっギクッ!ま、まぁ、それは置いといて……」

「聞けよ」

今年も恒例の如く手伝わせる気満々だった。

「何だよ、用件は?」

「ある場所に来て欲しい。この後すぐにだ!」

「何だ、その勿体ぶった言い草は?」

「まぁまぁ、落ち着け浩史。物事を客観的に見るのは何にでも大切な事だからな」

言っている意味が分からん。何を言いたいんだ?この暇人は。

「うん、なんか俺、今なんか貶された気がする」

「山田……当たりだ」

「ohーそんなことを言うなんてイタズラも程々にな、子猫ちゃん?」

は、吐き気が。

「んで、何だよ。さっさと答えろ。いい加減切るぞ」

「それは待ってくれたまえ! 俺……」

「ん?」

急に山田の声色が重くなり、何かあったのかと思ったが、

「今すぐ、早急に俺はお前に会いたい!!」

俺は携帯を耳から離し、一度本当に山田かどうか確認した。

山田だ。頭でも打ったのか。うん、そうに違いない。

躊躇いもなく、通話終了をタップした。すると、直ぐにかけ直してきた山田は「もう、急に切るなよぉー、寂しいじゃないかー」と撫で声だ。気色の悪い。

山田は咳払いを一つすると、「浩史、理由を聞かず今から俺と会ってくれないか?」と、妙な低いトーンに変わった。

「何かあったのか?」

「聞かないでくれ、浩史。お願いだから、午後2時に公園の噴水前で待ってる」

「ちょっと待て。おまえ俺の家知ってるだろう?おまえからくればいいものの。しかも、今クソ暑い時間帯だぞ。明日でもいい用件じゃないのか?」

「あぁ、ダメだ。今日じゃなきゃ。じゃぁ、待ってるぞ。浩史」

プツーーーー。

こちらの返事を聞かないで切ったというわけはそんなに急ぎなのかと思う。

相変わらず外は働き者の太陽のお蔭で、ユラユラと世界が揺れ、暑そうだ。

「やれやれ」







っで、やって来たわけだが。

「何故来ない」

とっくに約束の時間はオーバーしている。だが、山田が来る気配がない。痺れを切らし山田に電話してみる。

「山田、早く来い」

「あぁ、すまない。マイハニー、急に用事を思い出して。マイハニーの顔を見れなくなったぁよー」

「ふざけるな」

「おぉ、怒ってるかぁ。そんなマイハニーも可愛いよ!ところでマイハニー、お詫びといってもアレだが、特別なゲストをそちらに送っといたよ。彼女と仲良くな?」

山田の奴。覚えておけ。

山田の腹立たしい気持ちもあったが、今から来るゲストとやらと話しをつけてさっさと帰ろう。

「あなたが、佐々木浩史?」

振り向くと、不思議な雰囲気を纏うレモン色のシンプルなワンピースを着た少女がいた。この暑さを、感じさせない無表情で。

肩ぐらいまである、生暖かい風になびく色素の薄い栗原希乃の髪。

「そうですが、えーっとー」

「私は栗原希乃くりはらきの。斎藤桃花について話がある」

栗原希乃と言う奴は俺が状況を飲み込む前に淡々と告げる。

「斎藤桃花に関わらない方がいい。ただそれだけ。忠告はした」

「意味が分からないが」

「それでいい。ただ斎藤桃花に関わらない方が佐々木浩史のためだ」

なんで、斎藤の名前が出て来るんだ。


真夏の世界のせいか、俺の頭は働いてはくれなかった。


それは、どういう意味だ。



正直、この栗原希乃か知らんが斎藤については心当たりがあって認めたくなかったのかもしれない。



「これは佐々木浩史、忠告だ」









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