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斎藤の誘拐II

はぁ、はぁ……はぁ。

息が上がる。肺が空気を求め、俺を急かせる。

妹の真弥と離れ、闇雲に走る訳には行かなかった。斎藤を助けるにはタイムリットがあった。

斎藤の事実はある一定の時間が過ぎると、その事実は消えていく。

だから俺は一刻も早く斎藤を助けなければならない。

幸いあの人ゴミだ。目撃者は数多くいて助かった。どうやらさ 斎藤を誘拐した奴らは、斎藤を消そうとする誰かに操られているのか、それとも誰かに仕込まれて事実が消えてしまうことを知ってるようで、こんなに大胆に犯行に及んだかもしれない。

しかも、これは文明の利器で誘拐はネット上に拡散されている。


【さっき、俺氏は誘拐現場を目撃してしまった!!】

【マジでーー!】

【あ、それなら私も見た。あれリアルガチなの?】

【あれはマジモンでしょー!誰か連絡した?】

【白いワゴン車に黒髪ロングの女子高生誘拐笑笑】

【白いワゴン車? 今目の前通った笑笑もしかしてそれ?因みに〇〇町だけど爆笑】

【おいおい、そんな流暢なこと言ってる場合かよ】

【マジそれな】

【草】




そこまで見て、電源を落とした。

ネットの情報なんて鵜呑みにしてはいけない。だか、しかし。誰かさんが言ったように流暢なこと考えている場合じゃないのだ。

幸い、〇〇町は隣町でデマという可能性も低い。

とりあえず走るしかないのだ。

俺は俺の出来ることしか、斎藤を救う術はない。

目の前にいて一歩も動けないのは俺のミスで、愚かなことだ。

過去を悔やんでも今は変わらない。けれどやっぱり人間というのは振り返ってしまうのだ。あぁ出来たらと。致し方ないことでは済ませられない。悪足掻きを思考の中で永遠と繰り返す。それは今の俺で誰にでも当てはまる。

後悔する。

分かっているのに。変わらないと。


隣町の看板を見たときには汗はダクダク。身体は既に疲労感に包まれていた。

「暑い……」

斎藤が誘拐されてそんなに時間は経っていない。と言ってもあれから40分。斎藤は、今頃どうなっているか見当もつかなかった。

しかし、最悪の想定を考えたくなかったというのもある。

今は前は進むべきだ。

最後の目撃は、あの如何にもの随分使っていない小さな倉庫。

当たりに白いワゴン車などは見当たらない。だが、物凄く怪しい倉庫だ。

確信するには余りにも単調な考えてだと分かっていても疑わずには居られない。

息を押し殺し、なるべく低姿勢で倉庫に近づく。

倉庫の燻んだ壁に耳を当てるが何も聞こえない。

「ハズレか……」

そう思った刹那だった。

「ごめんなさい!! ちょっとした悪ふざけなんです!」

「そうです。だから命ばかりはお助けを!」

そして、肉が蹴られた鈍い音が聞こえた……ような気がした。

「……え?」

壁に耳を当てたまま、俺がそう口に出すのは許して欲しい。間違えてドラマの現場に入っちゃったかな?という勢いのお決まりの台詞が大分磨いた演技のようなものが聞こえたのだから。

俺は、悪くない筈である。……多分。

そっと小さな窓枠から覗き込むと、男三人が土下座している。本気で。

そして、椅子にゴミカスを見るような目で足を組んでいる……

「斎藤! お前何やってるんだよ!」

思わず叫ぶ俺。

窓に振り向く斎藤の髪がさっと広がり、夕日が顔を照らす。

「何って、制裁だけど。何か?」

平然と言った斎藤は何だかカッコよく見えた。

「……」

俺は何も言えなかった。何も言える筈がなかった。

斎藤が次に言ったのは、

「それにしても、佐々木遅かったわね」

と、皮肉を含んだお言葉を頂いたのだから。

素直に

「……すみませんでした」

と、答えるしかなかった。









斎藤って、一体……?


















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