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晴れた

更新が滞ってしまいごめんなさい。

これからもよろしくお願いします!

 突然スイッチが入ったように目覚めた朝。昨晩カーテンを閉め忘れ、外では太陽がせっせと働き光を世界に運んでいた。明るすぎて目の奥がジンジンと痛んだ。

 まだ覚醒しきれてない体に鞭を打ち体を起こす。大きな欠伸を詞ながら、部屋の端に掛けてある制服に袖を通した。

 不意に目をやるとデスクにある一冊の大学ノート。それは紛れもなく昨日自分が置いたノート。勿論、書いた内容もハッキリと覚えていて。斎藤の会話も忘れてはいなかった。

 その事に一瞬の覚えていたことに歓喜も存在したが大半は落胆だった。

「忘れなかったか……」

 斎藤との事全て忘れたら少しは気持ちも晴れたかもしれない。それは斎藤の事情を知っておきながら今更無視するわけにもいかなくなってきたのだ。

 生憎、俺は無視するような図太い神経をしてるわけでも、忘れた振りが出来るような器用な奴でもなかった。

「どうすっかなー」

 寝ぼけた頭で必死の模索するが一向に考えがまとまらなかった。気づかず時間が押していたのか下の階にいる母親から「朝ごはんよー」と早く来いと催促が来た。

 まだ、思考が蚊帳の外だが鞄を持って下へ降りる。ごく普通の四人テーブルの上には、白く湯気が上がっているご飯と仄かな味噌の香りがするお味噌汁。ネギが刻んで入っている卵焼きと母が最近凝っている手作りフルーツジュースだった。

 俺の横には今年中学1年になったばかりの妹の真弥。毎朝忙しそうに整えてるショートボブは今日は少しだけ寝癖が目立つ。そんな真弥は美味しそうにネギ入り卵焼きを頬張る。

「おにぃちゃん、おはよう」

「おう」

 一応、真弥が朝挨拶する確率は二分の一だ。世間から見れば仲が良いのかは疑問だが、よく友人からは「お前らなかいいよなー」と羨望の眼差しを向けてくる。

 確かに喧嘩はしない。それは仲が良いどうのこうのの問題ではなく、ただ単にお互い干渉していないのだ。

 こうして会うのも朝ぐらいで帰る時間が違えば会話も減る。

 多分、家の中で姿を見ても「いたんだ」程度だろう。

「真弥、ゆっくり朝ごはん食べているがいいのか時間」

「大丈夫だ……よ。……行ってきます‼」

 時間を見るなり慌ただしく家から出ていく妹。

 すると母親が「あらあら、あのトジは誰に似たのかしら?」と洗濯物片手に首を傾げてるが、一つ言えるのは間違いなくあんただということだ。家の母親は俺が小学四年だった頃だろうか、遠足の弁当に白ご飯を入れ忘れるという悲劇、店で買った物を店内に忘れることもしばしば。そういうときは毎回良心あるお客がサービスカウンターまで届けてくれるのだった。

 朝食も終え、学校へ向かう。外へ出ると日差しが強くなりつつあって夏が近づいてることを感じる。


 教室に入ると決まった顔ぶれが挨拶をしてくれる。

「おはよう!」

 朝っぱらから元気な山田。

「おはよう」

 穏やかな声と、愛らしい容姿で俺を癒してくれる聖母島崎。

「……おはよう」

 俺もいつもと同じで、多分二人から見れば覇気のない挨拶。それなりに理由はあって。

「浩史君、元気無いようだけど大丈夫?」

島崎が眉を下げながら、見上げてくる。

「あぁ、大丈夫。チョット気分がローテンションなだけだ」

「そうなんだ、元気出して! 浩史君!」

とびっきり笑顔の島崎を見たら元気出た気がしてきた。島崎にそのまま伝えると「え、あーーそんなんだ」とテンパった様子で走り去っていった。

島崎がたまに分からない時があるが出会ったきた女子で素直で優しい子だと思う。

定位置の俺の席の隣には昨日ぶりの斎藤がいた。相変わらず艶やかな髪だ。

斎藤はこちらに目を向けたがすぐに目を逸らされた。これもまた相変わらずの反応に不思議な安堵を抱きつつ、

「斎藤、俺忘れてなかった。全部、覚えてる」

「ーーそう、残念」

たった一言の反応だったが、それだけで十分だ。俺が斎藤のことに全部分かるほど知ってるわけじゃない。だけど、何年も死にそうになったこと、危険な眼にあったこと忘れられて辛く無いわけない。そのことぐらいなら俺だって分かるさ。

「斎藤」

「何」

不貞腐れた様な顔をされるのも既に慣れてしまった。

「斎藤のこと、今まで起きたこと出来る限り忘れないようににするよ」

「ーーはっ?」

戸惑いの色を隠せないでいる斎藤は口をあんぐりとさせたまま、俺の顔を呆然と見ていた。

「何かをするっていうのは難しいかもしれないけどさ、協力する。いつでも頼れ! 暇だし」

「あんた……バカじゃないの」

今度は怒りの色に顔を染めた斎藤。

「そんなことされると迷惑なんだけど! それに今まで一人で頑張って来たのに急に無責任に私に優しくしないで」

その言葉は斎藤自身の魂を絞り出したように呻く寂しいと泣く、心の叫び声だ。

だからこそ、俺は斎藤のこと忘れてはいけないんだ。無責任な優しさは時に人を傷つける。そんなこと分かってる。

「斎藤、これは俺の自己満足だと思ってくれていい。折角お前のこと覚えてる奴がここにいる。いい材料じゃないか? 理不尽な運命から逃れる為にさ」

「ーー勝手にすれば」

斎藤は呆れた溜息を落とし、窓の外へと顔を向ける。




朝から抱えていたモヤモヤはいつの間にか消えさっていた。










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