LEVEL2「あの日」
太古の昔、軍事国家「ライズ国」、「ルド国」という2つの大国を中心に世界規模の大戦が行われていた。その最中、ルド国に自らを波動士と名乗る青年が現れた。その青年は「波動」という未知の力に関する知恵を授け、どこかへ消えていった。
その後、ルド国は「波動」を使い、をライズ国を1ヶ月で壊滅へと追い込み大戦を終結させた。
LEVEL2「あの日」
「その方法は―――」
そう言うと、師匠は懐から小瓶を取り出した。その小瓶の中には、血のように赤い粘液が入っていた。
「何ですか、これ?」
「毒だ。」
毒―――その言葉を聴いたダンは、何を言っていいのか分からなかった。動揺しているダンを見て、リュウは微笑した。
「まあ、毒といっても苦しんだり死んだりするわけじゃない。五感が無くなるだけだ。」
「五感が……無くなる?」
(ふざけんな…)
「お前、今ふざけんなって思ったな?」
驚いたダンの表情を見て、リュウは言った。
「まあ、そう思うのも無理ない。現に俺もこの修業を始めるときそう思ったからな。」
ハハハ、と笑うと師匠は急に真剣な顔つきになった。
「これからやる修業は波動士になる素質が無い者が行うと、必ず死ぬ―――。」
「何で…武器作りに命まで賭けなきゃいけないんですか?」
「……話は最後まで聞け。」
そう言うと、師匠は懐から分厚い本を取り出した。
「これに波動の全てが記されている。明日までに全部読んでおけ。」
師匠はそう言ってダンにその本を渡した。
――――その夜、ダンはその本を読んでいた。
波動は、人体に一つしかない奇跡と呼ばれる箱を取り巻く死者の思いで、それを操るということ、その方法はは自分自身の魂の思いで奇跡を振動させ、死者の思いを支配するということ、波動士が使う武器は「ウエポン」ということ―――――。
その本には、ダンが今まで知らなかった波動の原理について事細かに記されていた。しばらくして、ダンはその本を読み終え床に就いた。
――――次の日の朝、修行が始まった。
「俺が今から言うことをしっかり聞いとけよ。」
「はい…。」
「五感が失せると自分が今何をしているか分からなくなる。その中で一筋の光を見出せ。それが奇跡だ。」
武器とは、奇跡の中に自らの魂の思いを詰め込み、それを媒介に死者の魂を圧縮し具現化する―――。ダンは昨夜読んだ本に書いてあった一節を思い出した。
「その一筋の光に自らの思いを詰め込め。そしたら光が戻る。これがこの毒の唯一の解毒法だ。」
「師匠、どうして命まで賭けなきゃいけないのか良く分からないんですが。」
師匠は呆れたようにため息をついた。
「阿呆、波動は奇跡で操るんだぞ。空より自分の魂の思いが入ってた方が操りやすいだろ。」
全てが繋がった。第二段階の全てが―――。
「さあ、修業を始めるか。」
そういうと師匠は「毒」をダンに渡した。
「覚悟が決まったら飲め。」
ダンはその「毒」を眺めながら、村を旅立った日のことを思い出していた。
三ヶ月前―――――
「―――おーい、ダーン!」
その日は、朝からとても日差しが強かった。
(サークか?何だこんな朝早くに。)
ダンがカーテンを開けると、村の少年・サークが釣竿を持って外に立っていた。
「川行こーぜ!」
「お前とつるむつもりは無い。」
ダンはそっぽ向いた。
「そう言うなよ!釣り好きだろ〜?」
「釣りなんて…」
そう言いかけた時、母の声が聞こえた。
「ダン〜、昼食の食材なんでもいいから採って来て〜」
「………」
ダンは仕方なく釣りに行くことにした。
「釣れた〜」
サークの釣竿には手のひら大の魚がついていた。ダンはそれを無視し、黙っていた。
二人はしばらく黙っていた。
「ダン」
沈黙を破ったのはサークだった。
「お前、波動士になるってホント?」
「ああ、今日俺の師匠になる人が来て、明日一緒に行く。」
しんみりとした表情で、サークは続けた。
「まぁ、お前は昔から波動がつかえたもんな。」
ゴゴゴゴゴゴゴ―――――村の方で地響きが聞こえた。
「!!」
二人は驚いて竿を手放し、立ち上がった。そして、村のほうへと走っていった。
二人が村に駆けつけたとき、民家は全て壊されて田畑は燃え、村人は全員屍と化していた。
「お…親父!お袋!」
サークは見るも無残な姿になった両親の元へ駆け寄っていった。ダンは呆然として、その場に座り込んでいた。
「おい!ガキ!」
「っ!」
男の声がした、と同時にダンはその男に殴りかかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
フシュゥゥ―――――ダンの拳は男の掌で止められた。
「なっ!」
「ほぉ、波動を使えるのか。お前か?俺の弟子とやらは。」
「どけダン!」
斧を持ってサークが走ってきた。
「ハァ〜、どいつもこいつも……。」
そういうと男は波動を放ち、サークが持っていた斧を破壊してサークを押さえつけた。
「放せ!このヤロー!!」
ため息をついて、リュウは語り始めた。
「落ち着け……。俺はリュウ、波動士だ。村を襲った野党なら、さっき追っ払った。」
ダンは、それを聞きヘタっと地面に座り込んだ。そして、暴れていたサークも落ち着きを取り戻しかけていた。
「今から修業場所へ向かう。さっさと支度を済ませてこい。」
「なっ…何行ってんだ!」
ダンとは驚き、叫んだ。しかしサークは冷静に、そして何か篭った声で言った。
「……いい、行って…こいよ。後始末は…俺がやっとく、お前は……強くなれよ」
ダンは何か言おうとしたがサークの顔を見て、黙ってリュウについていった。
(もう…誰も悲しませない……。誰よりも強くなってやる………。)
TO BE CONTINUED