僕、久賀琉威は最高にDKYだ
「なあ、久賀。お前これから用事ある?」
部活も終わり家に帰る気満々の僕に、空気を読まずに話しかけてきたのは凪センパイだった。
「別に……ないっスけど」
口ではそういったが、僕にこれからの予定がなかった訳じゃない。
7時から、僕の大好きなアイドルグループの特番が放送される。
熱狂的なファンとして何としても見たいわけであった。
しかし、僕の心情など伝わる訳もなく。
「そうか! じゃあ、これからいこうぜ」
凪センパイはにこやかに僕の手をとり、歩きだしたのだった。
「でな、お化けだと思ったら昶だったんだよ! 俺びっくりしちゃってさ」
某ハンバーガーチェーン店で、気持ちよく話続ける凪センパイとは違い、僕は最高に気分が悪い。
だが、聞いてほしい。僕が機嫌が悪いのは完璧に彼のせいなのだ。
彼のせいで僕は愛しのアイドル特番を見逃した。
これは母に録画を頼んだからいいとしよう。
だが、二時間ぶっ通しで話倒していることはどうか。
さながら機関銃の如く話続けるである。
これではあらゆる事に寛大な僕もうんざりするものだ。
「おいどうした久賀? そんなDKYな顔して」
センパイは不思議そうに尋ねてくるが、僕にとってはその『DKY』とかいう謎のアルファベットの方が不思議でたまらない。
これ以上この機関銃攻撃に耐えられないことを悟った僕はセンパイに用事があると告げ、身支度を整える。
「またこうして話そうな」
凪センパイは笑顔で見送ってくれた。
嫌に決まってるだろ。馬鹿かお前。