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  作者: スガナミ舞
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04:変化

「…最近さー正文おかしくね?」

「おかしい?…あー何かわかる。ぼーっとしてるっつーか」

「あれかね?女でも出来たか?」

「えー!だとしたらますますらしくねーなー!」


ライブが始まりフロアにはバンドの関係者っぽい人間がいるだけで

バーカウンターに居る正文の同僚がたわいも無い話をしていた。


「なーに根も葉もない噂話してんのよっ!」

其処に志乃が加わった。

「えーだっておかしくね?何かぼけーっとしてるっつーかさぁ気の抜けた顔してるっつーか」

「良い言い方すると穏やかな雰囲気になったよなあいつ」

「……だったら何だってーのよ」

志乃は少し不機嫌そうに呟いた。同僚2人は何となく不機嫌な原因がわかっていたが

面白がってあえて突っ込んだ。

「いやーあいつ女出来たんじゃね?って俺らなりに出した結論なんだが…どう思う、志乃?」

志乃は一瞬止まるものの即座に返答する。

「どう、って気になるなら本人に聞けばいいじゃない。」


そんなやり取りをよそに当の本人、正文は別フロアのバーカウンターで黙々と掃除をしていた。




…玲が遊びに来た日から1週間程経った。その間特にメールも電話もしていない。

正文の玲に対する感情は募るばかりだった。それは傍から見たら「恋煩い」に見えるものだった。

だけど正文にはそれを「恋」と断定出来なかった。恋以外の複雑な彼女への想い。

全てがぐちゃぐちゃに交じり合い、恋だ愛だと語るには少し重いものだった。




「菅波さんおはようー、あ、お疲れ様かしら?」

いつもより遅めの帰り。管理人の奥さんに出くわした。付近の掃除をしていたみたいだ。

「あー…そうっすね、お疲れ様です。」

「昼夜逆転の生活はやっぱきつそうね〜」

「慣れればそうでも無いですよ」

「でも凄く細いわよ〜。羨ましいくらいなんだけどぉ。でも男の子なんだからちゃんと食べないと

人間、体が一番の財産なのよー?」

「はは…確かに。」


管理人に言われたのが気になったのか滅多に乗らない、その昔付き合ってた女に貰った

体重計を引っ張り出し乗ってみた。

「……54。…前より減った?」

そういえばここ最近1日に1食くらいしか食べて無いなぁ…とぼんやり思い出した。

「…これ、だしにしてみようかな。」

何やら考え出した。眠かったはずなのに考えていたら寝ることを後回しに。

考え込んだら正文は携帯を取り出し、メールを打ち始めた。

メールは普段連絡ぐらいにしか使わないので苦手なものだったが正文の指の動きは

リズム良く動いていた。そして出来上がった文章を見直して送信する。




「玲、携帯!メール来てるよ」

同級生に言われ机に出していた携帯を見る。

「…菅波正文?彼氏ぃ?」

「え!玲いつの間にーー!?何で教えてくれないのー!」

「……!違うって!昔近所に住んでた幼馴染のお兄さんだよ!」

携帯を横から覗かれて誤解を解こうと玲は焦った。

「幼馴染…お兄さん…。いいなぁーそうゆうの」

「?…そう?何で?」

「年上でしょー?やっぱさー付き合うなら断然年上だよぉ」

「あーわかる!同い年だとねーなんつーかガキだよねーまだ」

「…いや…付き合って無いけど…ね」

年上の男について議論する同級生を横に玲はメールを読む



「久しぶり。元気?俺は今日マンションの管理人の奥さんに

痩せ過ぎって言われて体重計に乗ったら54キロでびびった。

身長170後半位なのに。飯ちゃんと食おうと思った。

玲もちゃんと食えよ飯。お前も結構細かったし。

でさ来週の金曜の夜暇?俺その日早番であがるの早いから

一緒に飯食いに行かない?

その日うちの店でやるライブ結構楽しい見たいだから

飯の前にライブとかも見てみたら?スタッフ関係者なら

ただで見れるからさ。ライブ興味ないなら飯だけでもいいよ。」




風呂に入りベッドに倒れこむように身を委ねる正文。

そして枕元に置いた携帯を開き送信メールを開ける。

「…俺もこんな長文打てるんだな」

自分で送ったメールに妙な感心を覚える。こんな長文送ったのはいつ振りだろう?と…。


そのまま携帯を開いたまま眠りにつく正文。

すぐに深い眠りに入ってしまったのか、数十分後に来たメールに気付かなかった。

そのメールを見たのは夕方近くになった。



「お久しぶりです。私は元気です(*^-^*)

正文君54キロしか無いんですか?!ちゃんと食べてくださいよー!

私は食べすぎなくらい食べてますよwデザートとか大好きだし♪

来週の夜、大丈夫ですよ!ライブも見たいな〜。

来週楽しみにしてます。詳しいことが決まったら連絡ください。」



「…ふー。」

メールを見て一息つく。返事は時間が無いので後にした。

これから仕事だ。何だか少し気合が入る。今日は別に大したバンドが出るわけでも無いのに。




「正文今日何か違うよな」

「あー…何だろう、あれかな香水つけてね?今日?」

「あ、それかなー。てかあいつって香水付けるんだねー…。」

「…」

「…」

正文の同僚2人は同じタイミングで同じ言葉を口にした。


「女…出来たんかな?」



その香水はいつ買ったかわからないけど特別なこと、例えば中学、高校の同窓会や

…彼女とのデートに付けていた物だった。


爽やかで息苦しくないその匂いは、一緒にバーカウンターでドリンクを作っていた

志乃にも届いていた。

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