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  作者: スガナミ舞
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01:再会

帰りは朝方になる。何故なら正文はライブハウスの店員だからだ。

周りとあまりに時間が合わなくて、友達減るわ呑みに行くのも少なくなるわで辞めたいと思いつつやっぱり好きだし…と、こんな調子でやっている。女も長続きしないのが何とも切ないが、最近正文の彼女代わりは野良猫達なのであまり寂しくは無いようだ。ただ、たまる一方。


―目覚めたのは夕方、正文は今日は休みらしく2度寝に突入しようと思ったが、唐突に思い出す。


「あー、…家行かんと」

どうやら実家に行く予定を入れていたらしい。

実家はここから自転車で20分程の距離。

心配症な母はよくご飯を作っては正文を家に来るよう電話する。

ここ最近ろくに取り合わなかったので、今回は行かねばと思っていた。



見慣れた景色を横目に自転車を跳ばす。

私鉄、汚い川に架かる橋、生活には困らないけど地味で落ち着く地元へ。

「ただいまー」

「あー正君、お帰りぃー。て、また痩せたんじゃない?ちゃんと食べてるの?」

「食ってるから生きてんじゃん。今日何作った?」


母の心配丸出し話を聞き、父と仕事について語り(半分父の説教)

久しぶりに逢うOLの姉と関西に転勤した兄ついて語ったりした。久々に家族で(1人欠けてはいるが)晩飯はなかなか良いものだったらしく、正文は予定より長く実家で過ごした。


「じゃあね正君気を付けてね。ちゃんと食べなきゃだめよ!」

「わかってるよ。」

「じゃあねぇー正文♪死ぬなよ餓死で。」

「いや食ってるから!姉ちゃんまで言うなって!」

「また飯食いたくなったら来なさい正文。」

「…父さんまで。」

正文は確かに小食であるが、全く食べないわけではない。が、生活リズムが狂い、胃も小さい上太らない体質なので家族以外からもよく心配されていた。



今日はよく食ったんだけどなー、とぼんやりと家を出た。手を振る母と姉、仁王立ちする父に見送られて。


自転車に跨り漕ぎ出し、ライトを付け忘れ大通りへの近道を行こうとすると……人が居た。

「わっ」

正文はブレーキをかけた

「きゃっ…!」

ぶつかりはしなかったもののスレスレのところだった。気付くのが遅かったら確実に直撃してた。

「あ、大丈夫ですか!?怪我は!?」

「…あ、平気です大丈夫です…。」

「そか?良かった…。」


会話中に正文は懐かしい感覚になった。何がどう懐かしいのかわからない

「………正文…君?」


正文は名前を呼ばれようやく懐かしい記憶を思い出した。


「…玲?」


―2軒先にある、アパートに母と二人暮らしをしていて、小さい頃妹や弟が欲しかった正文にとって家庭内事情によって同級生からいじめられてた彼女、月代玲は妹的存在でよく彼女を守っていた。心無い親達から意味も理解してないのに吹き込まれた彼女たちへの差別から。


「…!正文君!うわー久しぶりだねぇ。地元にいる?」

「いや、ここから20分くらいのとこに部屋借りてる」「へー…すごいなぁー。今何の仕事してるの?」

「あーライブハウスの店員ー。玲は…ってまだ高校生かー若いなー。」

「正文君も若いじゃん。3つくらいしか差がないじゃん。え、どこの…」

「あ、もう遅いからこの辺で。てか良ければメアドとか番号教えて?」

「え…!良いよ!えーとね…」


玲は満面の笑みを浮かべていた。懐かしい彼女はすっかり可愛らしい女子高生になっていた。

少し怯えたような、垂れた大きい眼。小さめな口。筋の通った鼻。

……顔はそこまで変わってないか、と思いつつ アドレスと番号を交換し終えた。


「じゃあ気を付けてね玲。」

「ふっ、すぐそこだよ」

「だな。」

「…連絡、していいですよね?」

「もちろん。今度はゆっくり話そう。」

「……うん!楽しみだなぁ。」


そう言って玲は家路についた。時折、正文を振り返り見たりして。

それには気付かずに、正文は懐かしいく可愛くなった妹的存在に思い出を辿りつつ自転車を走らせた。


ライトはもちろん付けていた。

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