婚約者が逆ハーレム要員になったので私はハーレム要員になります 〜だってその方がやりたいことを自由に出来ますもの〜
プレスティー王国の魔法学園では、現在問題が起こっている。
プレスティー王国王太子であるアンガスを始めとし、上級貴族の令息達がチュリパ男爵令嬢ベサニーを囲んでちやほやしているのだ。
ベサニーも王太子や上級貴族令息達にちやほやされて調子に乗っている状況である。
アンガスの婚約者であり、ピオーニア公爵令嬢ロレッタはその状況を注意しに行く。
「アンガス殿下、他の方々もですが、国の未来を担う貴方達が公然の場で揃いに揃って一人の令嬢を贔屓するのはいかがなものかと存じます。ベサニー様も、婚約者がいる男性と関わる際はベタベタと触れてはいけませんのよ」
銀色の艶やかな髪に、ガーネットのような紅の目のロレッタ。
毅然としており、公爵令嬢として満点の態度である。
「ロレッタ様、そんな……。私が男爵家の娘だからって酷いです」
的外れなことで泣き出すベサニー。
ピンクブロンドの髪にアパタイトのような水色の目ので、庇護欲そそる見た目だ。
ロレッタは呆れてしまう。
「ロレッタ、お前はいつもそう口煩いことばかりだな。ベサニーが可哀想だと思わないのか? 変な魔道具の開発みたいなことばかりしていないで、もっとベサニーを思いやれ」
「本当ですよ。公爵令嬢だからと言って、ベサニーに対してその態度はどうかと」
「俺の婚約者だけでなくロレッタ嬢までこうとは。それに、魔道具開発だの魔法薬研究だの、俺の婚約者含め皆珍妙なことに夢中で目障りだ」
アンガス達は揃ってロレッタを非難した。
的外れな非難にロレッタは余計に呆れ、その場を去った。
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ロレッタは令嬢達が集うサロンにやって来た。
「ロレッタ様、どうでした?」
ロレッタにそう聞くのは、ローゼス侯爵令嬢クレア。
「クレア様、申し訳ないけれど効果はなかったわ」
ロレッタは軽くため息をつき、ソファに座る。
「ロレッタ様の言葉も聞き入れてくださらないなんて……」
クレアは肩を落とす。
「私達にはもうどうすることも出来ませんわね」
「ベサニー様も問題ありますが、男性陣にも問題がありますわ」
「このまま婚約者の所に嫁ぐのが億劫です」
リリーズ侯爵令嬢ダイアナ、ディリア伯爵令嬢フレデリカ、ジャスミナ伯爵令嬢グロリアも、そう口々にため息をつく。
クレア、ダイアナ、フレデリカ、グロリアはロレッタの友人である。五人共学年は同じだ。
そして彼女達の婚約者もベサニーに熱を上げており、注意しても全く聞いてくれないのだ。
「こうなったら婚約破棄でも突き付けて魔法薬研究の道に進むのも良いかもしれませんわ」
「まあ、クレア様、それ素敵だわ。それなら私はずっとやりたかったけれど婚約者や家の為に我慢していた魔法植物や魔獣の研究を始めようかしら? こっそりこのメンバーにしか見せていないレポートの数も増えて来ましたし」
そう話し始めるクレアとダイアナは先程よりも少しだけ表情が明るくなっていた。
「それなら私は家や婚約者の意向を完全に無視して小説を書いて出版したいですわ。今まで書いた物語は、このメンバーにしか見せたことがないのですもの」
「私は本格的に画家の道に進みたいです。フレデリカ様がお書きになった小説の挿絵を描くのも楽しいかもしれません」
フレデリカとグロリアも楽しそうである。
「ロレッタ様はいかがです?」
クレアにそう聞かれ、ロレッタは少し考える。
「私は……やはり魔道具の開発をしたいわ。それで、多くの方々の暮らしをより良くするのよ」
想像しただけで、ワクワクした。
ロレッタは幼い頃から魔道具を分解し、その仕組みを見ることが好きだった。叶うことならば魔道具開発の道に進みたいと思っている。ロレッタも新しい魔道具の開発案をクレア達に見せたことがある。
しかし、プレスティー王国では女性にあまり選択肢が与えられないのが現状だ。
その事実に、ロレッタの表情は暗くなる。
「でも、貴族の娘は所詮政略の道具。家から、夫となる方から与えられたものでやっていかなくてはならないのよね……」
ロレッタは再びため息をつき、用意された紅茶風味のマドレーヌを食べる。
大好物のはずだが、あまり味を感じることが出来なかった。
他の四人も、今のプレスティー王国では自分の夢を叶えることが出来ないことに、表情を曇らせていた。
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ロレッタは学園が終わった後、大聖堂に来ていた。
プレスティー王国の大聖堂には光の女神ポースと闇の神スコタディの像がある。
光の女神ポースと闇の神スコタディは夫婦神で、この地に降り立ち魔力を作り出したと言われている。
よってプレスティー王国があるこの大陸では光の女神ポースと闇の神スコタディが信仰されているのだ。
ロレッタは、光の女神ポースと闇の神スコタディの像の前で祈りを捧げていた。
「光の女神ポース様、闇の神スコタディ様、私はどうしたら良いのでしょうか? どうか私をお導きください」
ロレッタのそのガーネットの目は憂いを帯びていた。
悩み事があるとロレッタはよく大聖堂に行き、こうして光の女神ポースと闇の神スコタディの像の前で祈りを捧げるのだ。
(光の女神ポース様、闇の神スコタディ様、私は未来の王太子妃として、未来の王妃として出来ることをやっていきます。ですが、婚約者であるアンガス殿下ともう少し上手くやって行くにはどうしたら良いでしょうか……?)
ロレッタは前で両手を組み、目を瞑る。
(……本当は、魔道具の開発をして活躍してみたいのですが……贅沢は言いません)
ロレッタは手を下ろし、ゆっくりと目を開けた。先程よりも少し穏やかな表情である。
気休めではあるが、祈ることで少しだけ心を落ち着けることが出来た。
「随分と熱心に祈っていたね」
突然声が聞こえ、ロレッタは肩をピクリと震わせた。
声の方向にいたのは、ロレッタと同い年くらいの青年。
ブロンドの髪に、紫の右目と黄色の左目。まるでアメトリンのようなオッドアイ。
誰もがハッと息を飲むような美しさの持ち主である。
「ソルセルリウム帝国の皇太子イーノック殿下……」
予想外の人物に、ロレッタはガーネットの目を大きく見開いていた。
大陸一の国家と言われているソルセルリウム帝国。豊富な資源と進んだ魔道具開発技術を誇る大国だ。
そんなソルセルリウム帝国の皇太子であるイーノックは、知見を広げる為プレスティー王国の魔法学園にて留学している。ロレッタと同学年である。
「ロレッタ嬢、よくここに来るのかい?」
「はい。悩んでいる時や落ち込んだ時、光の女神ポース様と闇の神スコタディ様に祈りを捧げると、少しだけ気持ちが軽くなるのです」
ロレッタは光の女神ポースと闇の神スコタディの像に目を向ける。
神々しい二神の像は、見るだけで心が洗われるようだ。
「なるほど。つまりロレッタ嬢は、今何かに落ち込んだり悩んだりしているということか。ここで会ったのも何かの縁だ。私にそのことを聞かせてもらえないだろうか?」
「そんな、イーノック殿下の貴重なお時間を奪うわけにはいきませんわ」
「気にすることはないさ。それに、私の直感が君の話を聞くべきだと告げているんだ」
優しく自信がある様子のイーノック。
ロレッタはそんな彼を見て、今抱えていることを話してみようと思うのであった。
「実は……私の婚約者、アンガス殿下との関係に悩んでいまして。アンガス殿下は、一人の男爵令嬢に夢中のご様子で、私が注意しても聞き入れていただけないのです。もうすぐ卒業で、アンガス殿下と結婚するのですから、せめてお互いを尊重し合える仲になれたらと思うのですが」
ロレッタは困ったように肩をすくめ、ため息をついた。
「それは大変だね。アンガス殿は一体何を考えているのか」
イーノックはこの場にいないアンガスに対して呆れていた。
「私の努力不足ですわ」
ロレッタは悲しげに目を伏せた。
「そんなことはない。学園での君の頑張りは私も見ているから。……でもロレッタ嬢、それは君の本当悩みなのか? 私には、君がもっと別のことで悩んでいるように思える」
イーノックのアメトリンの目が、真っ直ぐロレッタを射抜く。
ロレッタは思わずドキリとした。
(私の本当の悩み……)
ロレッタの心の中で、諦めて蓋をしたものが再び熱くなる。
このまま本当にやりたいことが出来ないのは嫌だと、心が叫び始めている。
「ロレッタ嬢?」
「私、やってみたいことがありますの。新しい魔道具を開発して、人々の暮らしを良くしたいのです。でも、それが出来ないのが悔しくて……!」
ロレッタの本音が溢れ出す。
「私の友人達も、本当にやりたいことが出来ずに燻っておりますわ。クレア様は魔法薬の研究、ダイアナ様は魔法植物や魔獣の研究、フレデリカ様は自分の小説を出版すること、グロリア様は画家に、それぞれやりたいことがあるのに、今のままではそれが出来ない人生になりそうですわ。私も、他の皆様も自分の興味のある分野のレポートを書いてみたり、小説や絵を描いたりして仲間内で見せ合うだけですの。このまま家や婚約者の意向に従うだけの人生は嫌ですわ」
秘めた情熱や燻っていた思いが爆発するロレッタ。
「それに、私達の婚約者やベサニー様にも色々と思うところがありますわ。色々思い出したら本当に悔しくて仕方ありません」
今まで我慢していたせいか、湧き水のようにどんどん言葉が出て来た。
「やっぱりロレッタ嬢の話を聞いて良かったよ。ロレッタ嬢の、君達のその思い、私なら全てを叶えることが出来る」
ロレッタの話を聞いたイーノックは力強く微笑んだ。
「……本当ですの?」
イーノックの言葉を聞いたロレッタは、半信半疑だが少し期待が生まれていた。
「ああ。ロレッタ嬢の、そして君の友人達の燻っている思いについては、私に任せて欲しい。君達の、それからこの国の女性の為になることだ」
イーノックのアメトリンの目は、真っ直ぐロレッタに向けられていた。
ロレッタはイーノックを信じることにした。
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卒業パーティーの日になった。
アンガスは自身の側近候補達と共にベサニーをエスコートし、会場入りした。
(最近はロレッタが絡んで来なくて助かる。女の分際で魔道具開発をしていることは目障りだが。まああんな奴、このパーティーで婚約破棄を突き付けて捨ててやろう。それでベサニーを俺の婚約者にするんだ)
アンガスはそう目論んでいた。
しかし、いくら会場を見渡してもロレッタの姿はない。
(ロレッタの奴、どうして会場にいない? あいつがいなければ、俺の計画が進まないじゃないか。それに、俺の側近達の婚約者もどこにもいないぞ)
アンガスは内心苛立っていた。
早くロレッタに婚約破棄を突き付けてベサニーを新たな婚約者として迎えたいのだ。
「アンガス様? どうしたんですか?」
ベサニーは小首を傾げ、可愛らしく微笑んでいる。
アンガスはその笑みのお陰で苛立ちが少し収まったようだ。
「いや、何でもない。ベサニーは何も気にしなくて良いぞ。いずれベサニーは俺と結ばれるのだから」
「まあ、アンガス様、嬉しいです。私が未来の王妃だなんて」
ベサニーは嬉しそうにはしゃぎ出す。
淑女として失格なのだが、アンガスは無邪気で天真爛漫なベサニーに夢中だった。
「ならば俺達は未来の王妃であるベサニーを守るとしよう。ベサニーを悪く言う俺の婚約者も捨ててやるさ」
「俺も、ベサニーの為なら何だってするさ。手始めに、婚約者にこっ酷く婚約破棄を突き付けよう」
アンガスの側近候補達もベサニーに夢中である。
「私の為に、ありがとうございます。でもアンガス様から捨てられるロレッタ様が可哀想。みんなの婚約者も今日捨てられてしまうのだし」
ベサニーはやや意地の悪い笑みになる。
「あんな奴のことを気に掛けるなんて、ベサニーは何て優しいんだ。でも、悪いのはロレッタ達だ。邪魔な奴らを追い出して幸せになろう」
アンガスはベサニーの手を握った。
「はい、アンガス様」
ベサニーは満面の笑みである。
アンガス達は、自分達が幸せになることを全く疑っていなかった。
その時、会場が大きく騒ついた。
アンガスは何事かと思い、騒ついている方向に目を向ける。
ソルセルリウム帝国皇太子イーノックが会場入りしたのだ。
何とイーノックはアンガスの婚約者であるロレッタ、そしてアンガスの側近候補達の婚約者を侍らせていた。
「この場をお借りして、発表したいことがある」
イーノックの凛とした声が響き渡る。
その声は、誰もが聞き入ってしまう程。
大国の皇太子らしく帝王学を身に付けており、誰もが彼の一声に引き込まれていた。
「私、ソルセルリウム皇太子イーノック・ソルセルリウムは妻としてロレッタ・ピオーニア嬢、クレア・ローゼス嬢、ダイアナ・リリーズ嬢、フレデリカ・ディリア嬢、グロリア・ジャスミナ嬢の五人を後宮に迎えることにした。プレスティー王国の国王陛下も彼女達五人の後宮入りを大層喜んでおられる」
何と、アンガス達の婚約者がイーノックの妻として迎えられる宣言がなされた。
ソルセルリウム帝国はプレスティー王国と違い、一夫多妻制で後宮がある国なのだ。
ロレッタ達に婚約者がいることは皆知っている。しかしイーノックの言葉によると、プレスティー王国の国王が彼女達のソルセルリウム帝国後宮入りを認めているようだ。
会場の者達は少し戸惑いがあったが、国王も認めているということでロレッタ達の後宮入りを祝い拍手が湧き上がる。
「待て! どういうことだ!?」
アンガスは何が起こっているのか理解できず、そう声を上げる。
アンガスの側近候補達も、自身の婚約者がイーノックの妻になるという事実に困惑していた。
「アンガス殿下、見ての通りのことでございます。私は、イーノック殿下の妻となり、ソルセルリウム帝国の後宮に入りますの。私の友人達と一緒に」
ロレッタは未来への希望に満ち溢れているかのような表情である。アンガスはそんな表情のロレッタを見たことがなかった。
クレア達四人も、晴れ晴れとした表情である。
「そんなの酷くありませんか!? ロレッタ様はアンガス様の婚約者だったのでしょう!? 他の皆さんも! こんなの裏切り行為です!」
ベサニーがロレッタ達を非難する。
「まあ、裏切り行為ですって」
「私達を裏切ったのはそちらでしょうに」
「私達のことは国王陛下が正式にお認めになっておりますわ」
「ですから、私達の件は裏切りでも何でもありませんのよ。そちらと違って」
クレア、ダイアナ、フレデリカ、グロリアが順にそう言った。
アンガスの側近達は何も言えなくなる。
「さて、私と彼女達の結婚は政略的なものでもある。彼女達が後宮に入ることで、このプレスティー王国は光の魔石と闇の魔石を得ることが出来るのだ」
イーノックの言葉に会場の者達が大いに湧く。
光の魔石と闇の魔石はとても希少な魔石である。魔道具の動力源になったり、魔法薬の元になるなど、万能な素材なのだ。どこの国も喉から手が出る程欲している。
そんな希少な魔石が、ソルセルリウム帝国で採掘されているのだ。
「皆様がご存知の通り、このプレスティー王国は五つの島から成り立っております。我がピオーニア公爵領があるのは中央のチェントロ島」
「我がローゼス侯爵領があるのは北部のノルドゥ島」
「我がリリーズ侯爵領があるのは南部のスッドゥ島」
「我がディリア伯爵領があるのは西部のエスト島」
「我がジャスミナ伯爵領があるのは東部のオウェストゥ島」
「私達五人が後宮入りすることで、五つの島均等に光の魔石と闇の魔石が手に入りますのよ」
ロレッタの言葉に会場は更に喜びに溢れ出した。
「それと引き換えに、我がソルセルリウム帝国はプレスティー王国で改良されたドラゴン魔獣を手に入れることになる。研究データが揃うから非常に助かる。そしてロレッタ嬢達才ある女性が我がソルセルリウム帝国の後宮に来てくれるなんて光栄だ。後宮の女性達はソルセルリウム帝室の世継ぎを生む役割もあるが、それだけではない。君達は興味のある分野で帝国を発展させて欲しいんだ。研究費、材料費などは潤沢にある。必要なものがあれば申請してくれ。おまけに我が国の後宮に入る者は寿命以外で死なないよう魔法をかけられる。暗殺などを気にする必要はない」
「本当にありがとうございます、イーノック殿下。心置きなく魔道具開発が出来るようになるなんて、本当に嬉しいですわ。このままアンガス殿下と結婚したらそれが叶わなくなってしまいますから」
ロレッタは心底嬉しそうな表情である。そのガーネットの目も、キラキラと輝いていた。
「これで私も堂々と魔法薬研究に没頭出来そうです。イーノック殿下、ありがとうございます」
「私も、ソルセルリウム帝国で魔法植物や魔獣の研究に励みますわ。イーノック殿下、チャンスをくださりありがとうございます」
「イーノック殿下、私もお礼申し上げます。ソルセルリウム帝国の皆様、そして世界の皆様を楽しませることが出来る小説を書きますわ」
「私は、人々の心を動かせる絵を描きます。イーノック殿下、私に絵を描く機会をくださりありがとうございます」
他の四人も心底嬉しそうで生き生きしていた。
すると、会場の女性達が羨ましそうな声を上げる。
プレスティー王国の女性達は色々と抑圧されていたのだ。
そこへ、イーノックがこう言った。
「光の魔石と闇の魔石をプレスティー王国に輸出するにあたって実は条件がある。それは、この国の女性の自由な選択を保証すること。つまり、プレスティー王国の女性諸君はこれから自由に生きることが出来るのだ」
その言葉に、会場の女性達は大いに盛り上がった。
皆口々にやりたいことを話し始める。
まるで水を得た魚のようであった。
「ただ、今の王太子ではそれが実現しそうにない、だからアンガス殿の弟君が新たに王太子になることになったようだ。彼はプレスティー王国を男女平等な権利を持つ国にしてくれるだろう。愚か者は簡単に操作しやすいがつまらない。その点、アンガス殿の弟君とは将来良い取引が出来そうだ」
イーノックはフッと笑う。
その言葉に、アンガスは後頭部をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
「イーノック殿、いくら何でもそれは内政干渉ではないか!」
「この国の国王陛下は内政干渉があっても光の魔石と闇の魔石を得たいということだ。それに、私としても国を乗っ取る気はないさ。賢い相手と取り引きしたいだけだ。それに、女性がどんどん活躍することはこの国にとっても良いことだろう。女性の活躍を認めない貴族にも、廃嫡や引退を求めることになるだろうね」
アンガスは必死に訴えるが、イーノックのその言葉により何も言えなくなってしまった。
こうして、ソルセルリウム帝国の後宮に入ったロレッタ達は世継ぎを生む役割もあるが、大半を自分の好きなことを追求して生き生きと過ごしたのである。
一方、アンガスや彼の側近候補達は廃嫡され、王族や貴族としての権利を一切失って路頭に迷うことになった。
ベサニーはそんな彼らから逃げたが、突然国の価値観が変わりついて行けずに苦しむことになるのであった。
しかし、プレスティー王国で女性達が活躍し始め、国全体が発展して良くなるのであった。
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