28話 魔鎧の可能性
※宣伝失礼しますm(__)m
本日より、本作
「勇者の教室〜元勇者の俺が魔術学校の教師になって問題児達を更生させることになった件〜」
がコミカライズとして、ニコニコ漫画様、COMIC熱帯様より配信されました。
お時間あれば見に行っていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本編へどうぞ。
「ふぁ~あ、授業すんのかったりぃな~。なぁ~休んでてもよくない?」
「何言ってんのよ、もう傷は治ったでしょ」
腹を掻いて欠伸をしながらそうぼやくと、戦争時代からの仲間であるクリスティーナにペチンと尻を叩かれる。
こいつの言う通り、魔族との戦いで負った怪我は一週間かけてようやく完治した。けど一週間も休むと働くのが面倒臭くなるんだよな。やっぱりニートが一番よ。
そう言うとまたクリスにクズニートが! 怒られるだろうから言わないけど。
「ほら早く行ってきなさい、生徒達が貴方を待ってるわ」
「へいへい」
多額の借金をクリスに肩代わりしてもらっているため、拒否することはできない。だから俺は、面倒臭くとも先生として授業をしなくちゃならなかった。
クリスに背中を押された俺は、ひらひらと手を振りながら訓練場へ向かう。
「「おはようございます、アレン先生!」」
「おう、何だ何だ……」
訓練場に着くや否や、先に居た生徒達がかけ走で集まってきて大きな声で挨拶をしてくる。やけにやる気だな~って思ってると、違和感を覚えた。
「ん? 今日はやけに人数が多いな」
今まで俺の授業を受けていたのは男子生徒だけだったのだが、今日は女子生徒も加わっている。
根性訓練なんかやってらんね~ってボイコットしていたのにどういう風の吹き回しだって首を捻っていると、女子達がこう答えた。
「私達、この前の戦いで凄く悔しかったんです」
「先生や男子に助けられなきゃ、私達は死んでました。また魔族が襲ってきても足手纏いにならない為に、先生の授業を受けてもっと強くなりたいです」
「ほ~、そんでやる気になったのか」
このオルトラール魔術学校では、男子よりも女子の方が立場が強い。
その原因は【五人の魔女】っつ~馬鹿強い五人の女子生徒のせいでもあるんだが、兎に角それで女子は偉そうに踏ん反り返り、男子は肩身を狭くしていた。
だが、その立場は魔族との戦いで逆転する。
根性訓練のお蔭で体力がついた男子が、へばって戦えなくなった女子を守ったからだ。守ってくれた相手を馬鹿にすることは流石にできないだろう。
(だから強くなりたい、ってか。こいつら根性あるな)
生徒達の中には、魔族に殺されそうになった者もいるだろう。初めての戦争で恐い思いをしたのにも関わらず、心が折れていない。
兵士の中には戦争で心が折れてもう戦えないって人間は多いのに、こいつらは逆に燃えている。立ち上がれるだけでも凄いと思うぜ。
流石、選ばれた才能ある子供達ってだけはあるな。まぁ、馬鹿にしていた男子に助けられたのが悔しいってのもあるだろうけどよ。
「先生、ごめんなさい!」
「「ごめんなさい!!」」
「おうおう、急にどうした」
女子全員がいきなり頭を下げて謝ってくるので困惑していると、続けてこう言ってくる。
「私達、先生のこと馬鹿にしてました」
「うん……そうだね」
「でも、先生が魔族と戦っているところを見て自分達の愚かさに気付いたんです。先生はやっぱり勇者様なんだって」
「服はダサいけど、凄くかっこよかったです!」
「一言余計だろ」
ジャージの良さがわからないとは、まだまだガキだな。
「これからは真面目に先生の授業を受けます!」
「だから先生、私達に強くなる方法を教えてください!」
「先生、僕達もお願いします! もっと強くなりたいです!」
女子生徒が真剣に頼んでくると、ユーリを筆頭に男子生徒も頼んでくる。やれやれ……ここまで頼まれると断れね~じゃねぇか。
はぁ……とため息を吐く俺は、ポリポリと髪を掻きながら熱血な生徒達にこう伝える。
「分かったわかった。かったりぃけど、やってやるよ」
「「よろしくお願いします、先生!!」」
「じゃ、一先ずぶっ倒れるまで一っ走りしてこい」
「「はい!」」
根性訓練を命じると、生徒達は嫌な顔せず行動する。
あんだけ俺のこと馬鹿にしてたのに人って変わるもんだな~と関心しながら生徒達が走っている姿を見ていると、後ろから声がかかる。
「アレン先生」
「よぉセンコー、ちょいと面貸せや」
「ステラとレオナか」
俺に声をかけてきたのは、生徒達から【五人の魔女】と怖れられるステラとレオナだった。
この学校にいる生徒達は第二世代っていう新世代の魔術師なんだが、セカンドでの中でもこの二人の実力は圧倒的に抜きん出ている。
才能は天井しらずで、まさにダイヤモンドの原石ってところだ。
が、才能に恵まれたからこそ、調子に乗って授業を受けなかったり教師を追い出したりと問題児になっちまったそうだ。
まぁステラとレオナに関しては会心して今は真面目に授業を受けている。
他の三人については知らん。本人にやる気がないのに俺が強制しても意味ねーからな。
「二人お揃いで何の用だよ。カツアゲされても俺は金なんかもってね~からな」
「冗談言ってないで、真面目な話なんだから」
「真面目な話ね~、あんま聞きたくないけど一応聞いてやるよ」
小指で耳をほじりながらダルそうに聞くと、レオナが真剣な顔を浮かべて口を開く。
「オレ達、もっと強くなりてぇんだ」
「今でも十分強いと思うけど?」
「強くなんかないわ。私達二人共、四天王に全然歯が立たなかったもの」
奥歯を噛み締めながら悔しそうに告げるステラ。
魔族との戦いで、この二人はかつての魔王軍四天王が一人、【暴虐】のクルーエルと戦ってボロ負けしちまった。
だから悔しいんだろう。これまで自分達が誰よりも強いと思っていたプライドを粉々に打ち砕かれたんだからな。
「オレ達は完全に遊ばれてた。眼中になかったんだ! クソが、思い出すだけで腹が立つぜ!」
よっぽど悔しいのか、腕を組むレオナが狼の尻尾をバシンバシンと地面に叩きつけている。
眼中になかった、か。確かにそんな感じだったな。
あの時は二人共、他の魔族との戦闘で魔力や体力を大分消耗していた。けど、万全な状態であってもクルーエルには勝てなかっただろう。あいつはあいつで全力を出していなかったからな。
「でも、先生は違った。私達の攻撃は通らなかったのに、先生の攻撃は四天王に効いていた」
「んでテメーはあの野郎に勝った。でも納得できねえんだよ、何でオレ達が歯が立たなかった四天王にセンコーが勝てたのかがよ」
「先生が勝った理由を教えてください。そして、どうすれば先生のように強くなれるのか教えてください」
真剣に問いかけてくる真面目な生徒に、教師である俺は腕を組み「う~ん」と唸ってじっくりと考えてから、二人にこう告げた。
「無理だな」
「……はぁ!? 無理ってなんだよ! 真面目に答えやがれ!」
「落ち着けよ。話は最後まで聞けって」
ガッと胸倉を掴んで問い詰めてくるレオナを諭すと、俺は無理だと言った理由を説明する。
「俺とかクルーエルはただ強いんじゃなくて、“打たれ強いだけなんだよ”」
「打たれ強い?」
「そっ。俺達は長い間生死を懸ける戦いをし続けてきた。戦い続ければ自ずと身体も頑丈になるんだよ。実際、お前達の攻撃はクルーエルに効かなかっただけでヒットはしてただろ? それに俺と奴の戦いも泥臭いように見えたんじゃないか?」
「それは……」
ステラとレオナの速度はクルーエルを上回っていたし、ヒットアンドウェイの作戦も有効的だった。
ただそれ以上にクルーエルは打たれ強く、打たれ強いことを利用してカウンターに打って出た。肉を切らせて骨を断つって感じでな。あいつは脳筋な見た目だけど、意外と頭脳派なところもあるんだぜ。
俺との戦いだって泥臭い消耗戦だ。
血反吐を吐きながら目の前の敵に噛みつき、相手が倒れるまで戦っただけの話。特別なことは何もしてない。
そういう風に説明すると、二人は口を閉じて黙ってしまう。
「打たれ強くなったのは長い間死に物狂いで戦ってきたからであって、一朝一夕で身に付く訳じゃねぇんだよ」
「じゃあ、私達はこれ以上強くなれないの?」
「そんな事言ってねぇだろ」
「はぁ!? テメエさっき無理だって言ったじゃねぇかよ!」
「俺は、俺のように強くなれるかって聞かれたから無理だと言っただけで、お前達が強くなれないとは一言も言ってねぇよ」
「ッ……そっか!」
「んん? 何が言いてぇんだ?」
ステラは気付いたようだが、レオナはまだ意味を理解していないようだ。仕方ねぇ、できれば自分で気づいて欲しかったがもったいぶらずに教えてやるか。
「お前達セカンドの強みはなんだ?」
「オレ達の強み? 才能があるってことだろ?」
「もっと具体的に」
「……魔鎧ね」
導き出したステラの答えに、「正解」と返す。
「お前達セカンドは皆マギスが使える。魔力を全身に纏うことで、身体強化に加え防御力も兼ね備えた攻防一体の鎧になる。自分達がどれくらい自覚してるかわかんねえけど、マギスは凄えんだぜ。魔族と戦争して生徒が誰一人死んでねぇんだからな」
十年前じゃ考えられねぇよ。
魔族との戦争では、戦士も魔術師も関係なくバンバン死んでいた。なのにマギスを使えば、あんなヒヨッ子のガキ共だって十分戦えるし、死ぬ可能性も限りなく低くなる。
その変わり、魔力量が豊富だったり魔力制御の才能がある者しかマギスを扱えないんだがな。
誰だか知らないが、マギスを発明したことは人類に大きな進歩をもたらしただろう。
「だからマギスが使えるから何だってんだよ。今までと変わりねーじゃねーか」
「違うぞレオナ、マギスは進化できる」
「はっ!? どういう事だよそれ!」
再び胸倉を掴んで身体を揺さぶってくるレオナに、待て待てと落ち着かせてから俺なりの見解を話す。
「二人共、【六魔将】のなんとかって奴のことを覚えてるか?」
「ええ、覚てるわ」
「あいつのマギスはお前達のようなオーラを纏っているだけじゃなくて、まるで本物の鎧を纏っているようだった」
実際に戦ったから分かる。
途中まで生身の筈だったのに、マギスを使った途端に本物の鎧を纏っているみたいだったんだ。
実際に木剣で殴った時も鎧に弾かれた感触がしたし、アレは恐らく魔力で鎧を具現化していたんだろう。
「鎧のマギスはあの野郎が防御力に特化させた自分だけのマギスなんだろうぜ。いわば、“固有魔鎧”って言ったところか」
「オリジンマギス……」
「ここまで聞いたら、俺の言いたいことが分かるか?」
「ええ、分かったわ。私達も自分の持ち味を生かした自分だけのオリジンマギスを編み出せばいいのね」
「そういうこった。レオナもわかったか」
「おうよ、何となくわかったぜ!」
これだけ説明しても何となくなのね……。
もし二人があの【六魔将】と同じように自分の持ち味を持ち出したオリジンマギスを扱えるようになれば、今よりも大幅に強くなれるだろう。
だが、まだオリジンマギスはこの二人しか扱えない。
あそこでランニングしている生徒達じゃまだまだその段階には至っていない。
膨大な魔力量と天才的な魔力制御を誇る二人だから勧めたんだ。
「今よりも強くなる為の方向性は示した。後はお前達が自分の持ち味を生かし、何を特化させ、どんなマギスにしたいかを考えるんだな」
「ありがとう、先生。絶対に私だけのオリジンマギスを編み出してみせるわ」
「見てろよ! あッと言わせてやるからな!」
「おう、楽しみにしてるぜ」




