魔術学
魔術
魔力を用いて超常の現象を発現させる技術及び現象のこと。後述する術式の作用によりこの世界に何らかの影響を与える現象や能力を魔術と呼ぶ。また、魔術の起源は分かっていない。確実に言えることは、魔術の原動力は魔力であり、それは生物の意志の力に関係している、という点である。物理法則と異なり、魔術は行使する主体がなければ発動されない。これは魔術が、宇宙の成立に必須ではないことを示している。なお、この世界において「科学と魔術」は対立するものではない。魔術学は科学の一分野であって、魔術は論理的な検証が可能なものである。
属性について
魔術は起こす事象の種類によって属性が定義されている。火・水・風・土・雷の5つの属性とそれらに分類されない系統の6種類が広義な属性の分類とされており、あらゆる魔術はこれが前提として作られ使用される。だが、この属性の定義は今でも議論が尽きなく、一例としては水が冷やされ固形化した氷ではなく、冷気としての氷属性を加えた6属性とすべき、という意見も存在している。
無属性とは
上述した4種の属性に当てはまらない属性。とは言っても、魔力を操作するだけの一番基本的かつ多様な魔術。実際には無属性があるのではなく、属性がないからこその”無”属性。魔力を操作するだけでよいため、術式を構築する必要がない術も存在する。
術式とは
魔術を行使する際に、構築する脳内イメージの事。これにより発動した魔術がどのような効果を発揮するのかが決まる。ただ漠然と火が燃える様子を思い浮かべても効果が薄く、もっと具体的に薪を構成する繊維が酸化によって発熱し、発光するとイメージしたほうが術式の完成度は上がり、それに比例して魔術の効果や威力、成功率も高まる。術式を構築し発動さえできればなんできるのだが、原理的に可能であるだけで現実に可能であるとは限らない。また脳内イメージで魔術を作るということは、すなわちイメージできないことは実現できないということでもある。例えば時間を止めたり巻き戻したりする魔法は原理上可能ではあるが、「時間が止まるとはどういうことか」を厳密にイメージできなければ実現は不可能である。
詠唱とは
魔術を発動する為の補助動作。口に出して言葉を紡ぐことで、術式(脳内イメージ)の構築を助けてくれる。詠唱とはただのイメージの補助動作に過ぎないので、術式さえ構築できるのであれば、詠唱する内容は人それぞれで良い。また、行使する魔術が大規模なものであるほど、構築する必要のあるイメージの情報量は増えていく。その為、大規模な魔術を行使する際には長い詠唱が必要となってしまう。ただし、書名を唱えるだけで物語にも匹敵する情報を一言一句間違えず脳内に描き出せるのであれば、詠唱なぞほとんど必要ないのかもしれない。
魔術適性
魔術の発動に使用する、術式を構築する適性。要するに脳内でどれだけのことをイメージできるのかというイメージ力で、火の玉をイメージできても風の塊をイメージできないと言ったように人にそれぞれ想像しやすい事象と想像が難しい事象が存在する事と同じ意味合い。そのため、魔術には術式毎に得意不得意の傾向が存在し、珍しい適性を持つ者だけしか扱えない術も少なくない。
魔術師とは
魔術を扱う事に長け、その知識や技術をもってして職業としている者たちの総称。これは大衆が使うことにより自然と定着した言葉だが、のちに魔術協会によって定められた正式名称でもある。そもそも、魔術を扱うためには、実際にその事象を注意深く観察したり、その事象の物理的・化学的挙動を厳密に計算することなど、現象に習熟することが求められる。その上で普遍的な人類は魔術を使う能力に疎く、魔力量は原始的で簡易的な魔術を1、2発放つのが精々程度の量しかない。それ故に自然科学を極め、魔術の扱いを学び、訓練で魔力量を増やし、魔力消費を抑える為に効率化された高度な難しい魔術を習得した学徒が尊敬の念を込めて「魔術師」と呼ばれる。
魔術士とは
あまり魔術が、その中でも属性魔術が達者でなく、魔術師でありながらも強い術を発動できない所謂落ちこぼれを意味する蔑称。自然科学に通じていても魔力操作や術式の構築が拙かったり、逆に魔術を扱う能力は高くとも知識が薄い者を指す。また、魔術を扱えても、それで生活の糧を得ていなければ魔術士と貶まれる。魔術師とほとんど同じ発音であるためにわかりづらく、それゆえに使い嘲ったとしてもバレにくい。
魔導師とは
各国の軍隊で使われる魔術師の別称であり、魔術師で構成された兵科を指す言葉。軍に於いて魔術を扱う者は通常の軍人とは区別されて考えられる上、外野の魔術使いとも分ける為に別の呼称を用いる。広義でいえばこれも魔術師な為、型式的には魔術師の中に魔導師という括りがある。また、比較的新しい兵科であるため、各国では適切な運用方法が十分には確立されていない状況にある。
魔力切れ
魔術は魔力を消費することで発現させている。そして、魔力は有限である以上いつかは魔力が枯渇することになる。魔力切れの軽症、生命活動に支障がない余剰分の魔力「使用できる魔力」が減少しただけならば血の気が引き、頭痛や立ちくらみのなど貧血に似た症状を引き起こすだけで命に別状はない。ただし「使用できない魔力」である、生命活動に必要最低限の魔力を少しでも消費してしまうと、すぐさま体の痙攣、心不全などを引き起こし、死に至る。
魔力抵抗
生物の保有する魔力に反発されて外的な魔力を伴う現象の一切が減衰する現象。簡単に言うと魔力量が多い者に対しての魔術攻撃は効果がわずかに減少するということであり、魔力量が多い魔物に対しては魔術が効果的でない可能性もあると言うことでもある。しかし、前述したように効果の減衰は僅かなもので、通常の人間・魔物相手にはほぼないものと考えてよく、魔力抵抗が発揮されるのは膨大な魔力を持つ上位の魔物に限られる。
略式詠唱
詠唱を省略し、術号だけで魔術を発動させる技術。魔術の発動に必要なのは術式、すなわちイメージ力であり、本来詠唱というものはイメージを保管するための手段に過ぎない。つまり、イメージさえ出来るのであれば詠唱を省略しても全く問題ないのだ。しかし、この技能を扱うには優れた術式構成能力が必要となる為、誰にでも出来るという訳ではない。
並列術式
2つ以上の魔術を同時に発動させる技術。理論は確立されているが、実現するには思考の並列処理と2つ以上の術式を、同時にかつ魔術の発動が可能なレベルまで描くことを要求されるのに加え、魔力の消費量も単純に加算されるため非常に難しい技術であると言える。更に戦闘で扱うものならば、戦況を確認し敵と交戦しながら、複数の魔術の術式を同期させる必要があり、常人離れした思考処理能力が必要となって来るため、戦闘に使用するのには向かない。
詠唱破棄
呪文を詠唱することなく魔術を発動させる技術。無詠唱とも言われる。これは略式詠唱の発展形の技術であり、なんの要素もないまっさらな紙から炎が燃える原理など関係のない要素を描き始めることができないように高い術式構成能力を持つ者でも扱うことが難しい技術である。
属性の優劣について
基本的に、「この属性にはこの属性が強い」などといった優劣は存在しない。物理法則と同じように、火は水をかければ消えるし岩は風であまり動かされない。ただし、とても高温の炎は水を蒸発させられるし、強烈な風は岩を削りうる。戦った場合勝敗を決めるのは戦闘の経験や魔術の修練度合いの差になる。
魔術の難易度の推移について
魔術に使う魔力量が多いほど、そして術式の工程が長く複雑なほど難易度は高くなる。これは沢山の物ほど同時に持つのが難しい、難解なパズルほど組み立てるのが難しいと言った別の言葉に言い換えることが出来る。
術式の開発
まず術式とは魔術を構成するイメージである。つまり、現存する術式(使いまわせるように固定されたイメージ)以外の術式をイメージすれば新しく魔術を作り出すことは可能ではある。だが、物理現象に沿った上で存在する術式と全く違う現象を作り出すのはとても難しいことで、日々多くの新術式が考案されては実現不可能なのが露呈し頓挫している。ちなみに、民間層から奇想天外な新術式が考案されることも決して少なくはなく、その中から実用化に至った術式も複数存在している。
日用魔術とは
通常の魔術が戦闘用に作られたのに対して効力が弱い比較的簡易的な魔術のこと。火・水・風・土・雷、そのどれもが日常生活では使い道のない術であり、アウトドアであっても、わざわざ魔力を消費してまで魔術を使わずとも道具を使えば十二分に役目は果たせるため、この言葉を知らない者も少なくない。
戦略級魔術とは
戦略に組み込めるほどの大規模な影響を与える魔術であり、魔術の中でも地形をも変えかねない超威力の、災害にすら匹敵するもの。戦争などの激しい争いの1局面に決着をつけるものでもあったりするので決戦術式と言われることもある。因みに人間一人の持つ魔力量はどんな人間であろうとも戦略級魔術の発動に足る量ではなく、そのため魔術師は長きにわたって訓練を繰り返し術式構成や魔力操作の癖などまでを完全に把握した仲間と数十人規模のチームを組み、同調、つまりは連携する事で合同で魔術を組み上げる。それこそが戦術級魔術が軍用魔術と呼ばれる所以でもある。
禁術とは
作られたは良いもののなんらかの理由により発動どころか習得が禁止されている魔術の術式。禁術指定される理由は過去の出来事や代償の巨大さ、倫理道などに由来するが、現在では国際条約によって世界で統一されたモノの事を指す。禁止した上で邪な考えから習得する者が出ないようにするために表向きには秘匿されたものもある。
魔術の強さ
魔術は総合的には銃未満と評価されます。
人間が扱えるレベルの魔術では、射程はどんなに遠距離向けの術式でも精々100メートル程度しかなく、瞬間的な火力は歩兵銃より高いものはあれど平均的には銃より下ですし、連射能力は圧倒的な差で敗北します。魔術は鍛えれば誰でも使え、成長できますが、銃は買えば誰でも練習程度で使えますし、魔術の成長度合いもどれだけ努力しても兵器には勝てませんし種族間の格差は大きいです。
しかし、逆に言えば瞬間的とはいえ銃より強い術式はありますし、魔術の性質上色々工夫ができます。単純な性能面では兵器に勝つことはできないですが、武術としては最強です。それに、料理人が銃すら使わずに戦車落とせるんですから、魔術使いが戦車を倒せない道理はありませんよね。