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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第二部:黙示録コンプレックス・in・北海道

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ダンジョン建築家イチカ(前編)

……湧いて来る……アイデアが……

形が見えて来る……本当に欲しいモノが……


観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=I86TfGM2OIA&list=PL271D01492F1B52BB&index=3


~ルスツリゾート遊園地ダンジョン完全攻略より6時間後~

~イチカハウス~


『メチャ美味いな、このスクランブルエッグ……』

『あ。白米おかわりで』


ゲオルグはフェルゼンへ茶碗を差し出す。

フェルゼンは笑顔で盛り盛りに米を茶碗へ盛り付ける。


『うぉっ……これは特盛すぎ……』


『しっかり食べないと強くなれませんわ❤️』


『へ、へーい……』


クリチカはホットドッグを頬張りながら、タブレットを起動する。

彼女は何気なしにSNSアプリを開く。


『……どれどれ目ぼしい出来事は……』

『……!!』


クリチカは黄緑色の瞳をイチカ達へ向ける。

イチカはウィンナーを犬歯で嚙みちぎる。


『?』

『なんか気になるニュースでもあったの??』


クリチカは全員に向かってタブレットを見せる。


『【降下機甲猟兵大隊】の宣伝部が運営しているYのアカウントよ』

『ルスツリゾート遊園地を半日かからず攻略したって……』

『しかも動画まで載ってるわ……!』


『【降下機甲猟兵大隊】って……アーデルハイドがリーダーの??』


『そうよ』

『アイツらダンジョンの攻略までやってるのよ』

『戦力強化の為に』


クリチカは動画の再生ボタンを押す。

朝のお茶の間に『エリカ行進曲』が流れ出す。


『『『うわ……』』』


アイカは牛乳を飲みながら言う。


『……やっぱりあの赤ひゃっはー強いですね、イチカさん』


『……うん』

『それにこの銀髪の女性……』


『アーデルハイドですね』

『えぇ……砲火の中を散歩してますよ……これ……』

『やっぱり頭のネジが10本くらい外れてますね、コイツ』


レナはイチカ達に言う。


『まさか……アーデルハイド達にも会った事が……?』


『焼肉屋で部下のヴェルミーナと賭け腕相撲しました』

『勝ったのはイチカさんです!イチカさんですよ!』


『もう突っ込むのも野暮な気がして来た……』


アイカは立ち上がり、米粒を飛ばす。

ゲオルグは顔に引っ付いた米粒を剥がしていく。


『ふーん……こんなヤツに……』

『どう見てもパワーはこっちの方がありそうだが……』


剥がした米はヨハンに回収される。

フェルゼンは自席に座る。


『恐らく機転を利かして勝ったと思われますわ』

『クリスティナさん達のコトですもの。ふふっ❤️』


レナは動画の一部分を見つめる。


『……これ、あの【RISRIS】じゃない?』

『黒い服を着てるから良く分からなかったけど……』


『『『【RISRIS】?』』』


イチカとゲオルグ達は首を傾げた。

レナは溜息を付く。


『……北米では有名な配信者よ』

『ただ、お金の稼ぎ方に問題があるの……』


『問題?』


『際どい発言や衣装で男達の注目を集め……』

『それから有料サイトに誘導して搾り取ってるの』

『それ以外にも詐欺染みた事とかやってるって……』

『ファンも多いけど、同じくらいアンチも居るわ』


ゲオルグはスマホでクラリスの写真を見て笑う。


『ふーん……良いケツしてんじゃん』

『胸はあと一歩だが、ウエストの締まりは良いな』

『つーかこんなんに時間と金使う位なら、直接アタックしろよ』

『声かけてホテルに誘うだけだろ?何でそんな簡単なコトが出来ないんだ??』


『同意だな、我が弟よ』

『手が届かない相手に大金を使うのは愚かとしか言い様が無い』

『SNSでメッセージを送るくらいなら、直接声を掛けてディナーにでも誘えば良い』


レナはオレンジジュースを飲みながら兄弟へ言う。


『それはアンタ達が金持ちの貴族で、超イケメンかつイケボで高身長だからでしょ』

『フツーはそうはいかないのよ、そうは』


『いやー照れるぜ!』


『褒めてないんだけど……』

『いや褒めちゃってるわコレ』


そして動画は【ベリアルナイン】の場面へ変わる。


『……強い』


『私もそう思いますわ』

『ただのケンカ殺法じゃない』

『しっかりとしたマーシャルアーツの基礎がありますわ』

『何より戦闘経験が桁違いかと……』


『このロボット達気味が悪いわね……』

『まるでウナギみたいだわ』


そして【ベリアルナインドライ】が敵を叩き潰す場面へ移る。


『すげぇ……まさかの合体からの第二形態……?』

『いや、カッコ良いぜこれは……』


『私はゲオルグとがっ……』


フェルゼンによってヨハンはチョークスリーパーを極められ、気絶させられた。

イチカはケチャップをホットドッグへかけながら言う。


『まるでロボットアニメ見てるみたいな気分……』


『主人公達はネオナチだけどね』

『これがテレビなら企画の段階で没よ』


クリチカは動画を閉じてイチカへ言う。


『クリスティナさんは巨大ロボットとか好きですか?』


『好きだよ』

『アーマー〇コアⅥは全トロフィーゲットしたし』

『ゼオラ〇イマーとかゲ〇ターも好き』


『さっすが~~!』

『私、超合金集めてるんですよ!ホラ!』


彼女は、ロボットフィギュアや超合金で埋め尽くされた部屋の画像を見せて来る。


『凄いなぁコレ……』

『まさか稼ぎの大半突っ込んでる……?』


『はい!』

『私には家族も居ないし……』

『貯金してたって、いつ死ぬか分からないし……』

『私……夢があるんです』


『夢……?』


『いつかロボットフィギュアを集めた展示館を開きたいんです』

『何処か良い土地ないかなって、場所の選定だけ進めてるんです』

『ただ、お金そこまで無いんで、場所だけですけど……いつか……』


『──』


イチカは口の中のパンとウィンナーを飲み込み、おもむろに立ち上がる。

彼女は二階へ走り出し、製図用紙の束と筆記用具を持って来て床に広げ始めた。


『展示館……フィギュアを展示するスペース……』

『それだけじゃ運営が……シェルター……工場……リゾート……要塞……都市……ダンジョン……』


彼女は呟きながらも、迷いなく紙に線を引いて行く。


『各建物の建ぺい率を60%として……』


レナはイチカの手元を覗き込む。

イチカは素早く手際よく、建物の設計図を紙へ落とし込んで行く。


『い、一体何を……?』


だが、イチカの反応は無かった。


『ちょっと、イチ……』


フェルゼンはレナの肩を軽く叩き、唇に指を当てる。

ゲオルグはウィンナーを食べながら、軽く笑って椅子にもたれ掛かる。


『やっぱり俺の見込んだ通りだぜ、クリスティナ』

『見つけたな、本当に自分がやりたい事を』


アイカは呟く。


『それは……』


『おっと』

『邪魔したらダメだぜ、ワンちゃん』

『まだ小さいが……やっと手にし始めたんだ』

『クリスティナ自身の人生を』


『イチカさんは……』

『私から離れて行ってしまうのでしょうか……』


『……さぁな』

『それはお前次第じゃねぇか?』

『まぁ……出来上がったモノを見てから考えれば良いんじゃね?』


『……』


イチカは製図用紙を放り投げ、次の用紙に線を引き始める。

それは続き、彼女はおもむろに棚からスケッチブックを取り出して眺める。

アイカは目を見開く。


『それは──』


スケッチブックにはハルカが残して行った、幾つかの建物のラフが描かれていた。


『いつか……ハルカにも見て貰いたいから……』


『イチカさん……』


気絶から目が覚めたヨハンは紙を拾う。


『……これは都市設計図だな』

『だが、通常とは趣が違う』

『地下街や地下軍事施設の設計図面もある……』

『こっちは工場の敷地平面図……こっちはコテージの設計図か』


『……もしかして……イチカは建築士だったの!?』


レナはイチカの元へ近寄る。


『……うん』

『父親が建築士だったから、私もその後を追った』

『でも……私は人を相手にするのが苦手だったから……』

『結局会社では上手く行かなかった』


『……』


『今も……地下室建設を依頼してる現場の職人とは上手く行って無いし……』

『だから設計やデザインだけに集中出来る今は楽しいよ』


『そうなんだ……』


イチカはまたもや紙に正対し始め、夢中になって描き始める。


(……湧いて来る……アイデアが……)

(形が見えて来る……本当に欲しいモノが……)


レナは描かれて行く都市全体像のラフを眺める。


『……面白そうだなぁ……建築……』


フェルゼンは彼女へ言う。


『なら今から目指してみたらどうですか?建築家や設計者を』

『戦うだけの人生が続くワケじゃありません』

『いつかは人の為に何かを生み出す時が来ますわ』


『確かに……』

『ソフトを使って良いなら直ぐ馴染めそうだし……』

『第一、勉強も嫌いじゃないし……』


『まぁ!』

『お勉強は得意だったりしますの?』


レナはタクティカルジャケットの内ポケットから、小さい本を取り出す。


『これ、大学数学のハンドブック』

『学校に行く時間が中々取れないから、ヒマを見つけて自分で勉強してるの』

『お陰で高校数学や物理は楽勝よ。テストでも常に一位をキープしてる』

『ホントは授業出ないとダメなんだけど、指揮官が学校側を説得してくれたの』

『だから余計に熱が……って感じ』


クリチカは英語の題名が付いた、有機化学のハンドブックを取り出す。


『私も将来はロボット作りたいけど……』

『素材系も面白いとは思ってるから、こっちも勉強してる』

『将来はカナダかアメリカの大学で学びたいと思ってるわ』


ゲオルグは鼻をほじりながら言う。


『なーんで皆そこまで勉強出来るんだ……?』

『そこのワンちゃんですら、多分俺よりかなり勉強出来るだろ』

『数学や化学の授業とか拷問に等しかったぞ』


『ゲオルグ様は卒業も怪しかったですものね……』

『アレはちょっと可哀想でしたわ』


『えーっと……』

『流石にニュートンの運動方程式とか、ベクトル方程式とか分かるわよね……?』

『パイロットなんだし……』


レナの質問に沈黙が流れる。

ゲオルグは大きく息を吸い、窓の外を見て言う。


『なぁ、レナ……』

『空ってロマンで飛ぶんだぜ?』


『はいはい、もうアンタの学力レベルは分かったわ』

『もう学び直しとかそんなレベル超えてるわよ、コレ』


『申し訳ございませんわ』

『ゲオルグ様は試験を通ったら、その内容は全て忘れてしまいますの』


『まるでファミコンカセットみたいな脳みそ……』

『女と飛ぶコトしか頭に残らないの??』


『ああ!』

『後は度胸と気合と根性が残ってるな!』


レナは思わず窓の外を眺め、魂が抜ける様に息を吐いた。



その度胸と気合と根性が並外れてるから、王子は好き。

フェルゼンの苦労は相当だけど。

王子に勉強教えて行くのは企業を経営するより大変だと思う。

まず大人しく座ってられないタイプの人なので……


レナもクリチカも勉強熱心です。

特に戦場に出てる子達なので、学ぶ姿勢が根本的に違う。

クレイエルは教育者としても手腕がありそうです。


遂にイチカの真の才能が開花し始めました。

正に創造主の思惑外から。


彼女は自分の心や想いを形にしたい、そう考えた。

元々は自分だけのシェルターにする積りでした。

ですが数々の出会いや別れを通し、彼女は本当にそれだけで良いのか、と考えた。

彼女の精神的な成長が、タダの個人用シェルターからダンジョン要塞都市という一大構想へ飛躍した。


ゲオルグとの出会いが完全にプラス、と言ったのはこういう事です。

ただ、マイナスな出会いも別れも含めて彼女の養分になった。

一部建物のデザインはハルカが置いてったのを使っています。


もうイチカはマルファが考えていたコースからは外れています。

その原因がアイカ達やゲオルグ達と断定すれば、闇の女の本性が牙を剝くでしょう。

彼等と殺し合いをしてでも、イチカをロシアへ連れて行く可能性もあります。

ただ、王子と狂犬は魔女の想定を色んな意味で上回ってる存在です。


もし、マルファがイチカをロシアへ連れて行った場合……

彼女の支配下にある部隊と施設で、自ら教育を施す事になります。


イチカの能力から考えれば完璧なロシア将校かつ、

マルファの右腕兼後継者になってしまうでしょう。それも短期間で。

そして、それこそがマルファの望んでいる事でもあります。

やっぱ病んでる部分あるな、この人……


いい機会なので、他の可能性もここに示しておきます。


①ダンジョン建築士ルート


これが一番自由で選択肢があり、彼女の為になる気がします。

特定の誰かの影響を受け続ける、という事が無いのも大きい。

今の所このルートです。


②バカ王子第二夫人ルート


結構良いルート。少なくとも生活に困る事は無い。

しかし義兄のヨハンが小姑と化します。

スープが塩辛いぞ!女ァ!


③四十万の副官ルート


同棲必須。朝のキス(強制)から始まり、虐めて泣かせた挙句後で慰める……

やる事がDV彼氏やコレ。

ただ、脅威からは全て護ってくれるし、何より国家武力と司法がバックに付くのはデカい。

四十万の部下達はマトモな常識人が多いので、何かと助けてはくれるかもです。


④愛の巣ルート


アイカがイチカをひたすら独占するルートです。

ある意味心地良いですが、成長や進歩の機会は全て奪われます。

最初はこのルートに入りかけていた。

ハルカと出会ったお陰でこのルートから外れた、と解釈しても問題ないかと。


⑤ハルカともう一度ルート


死ぬより辛い。

ただ、後悔も生まれない。

当然、創造主を敵に回す事にもなります。

一番カタルシスがあるかも。


⑥ナチごっこルート


アーデルハイドに全てを支配される生活になります。

可愛がってはくれるでしょうが……そこに平和はありません。

主食は多分ファーストフードになる。


⑦【エグレゴール】就職ルート


イチカの能力はラロシェルの目に止まるでしょう。

高報酬と高待遇を持って、良いポジションに付けて貰える可能性もあります。

ただ、彼は能力に応じたハードワークを要求して来ます。

ヴィナとは上手くやれそうな感じもします。


⑧レナのお姉ちゃんルート


成長率は一番高い。てか成長しないと死ぬ。

あと、場合によっては世界と闘わなくてはいけません。

ロボ系のアイテムに乗ったり、クレイエルと共闘するかも。

お姉ちゃんとしての愛が闘争を求め出す。


⑨レイカと心中ルート


一番美しいルートになるかも。

世界で一番美しいカップルの誕生が待ってます。

シンデレラ同士が結ばれたって良いんだぜ。


⑩夢でKISS KISSルート


世界各地をマルティーニの女として巡ります。

過去の幻影に飲まれながら、正気を失って行く感じ。

それでも尚、過去を失った男に引きずられて行きます。

このルートになる可能性は意外と低く無い。ヤツの動き次第ですが。


⑪騎士道物語ヒロインルート


世界最高の騎士と紳士が薔薇色の世界へお連れします。

不倫あり熱愛ありです。

騎士の愛と恋は横恋慕からスタートするんだよ。

聖女も置物として付いてきます。要る?


⑫ダンジョン女子格闘家ルート


個人的には一番見たい。

この場合はモントヴァンと行動を共にします。

多分早い段階で子供が出来る。

一番ありきたりな幸せを享受出来るルートかなぁ。

料理上手いし、トレーニングや栄養学には通じてるしで、イチカはアスリートの妻適性が高い。


⑬アヴァロンシスタールート


リヴァと共に各地を放浪しつつ、ヘイリーの興行やエスティアの研究をサポートしていくルートです。

懐具合は一番貧しくなります。

が、それを上回る感動と奥深さを見せてくれるでしょう。


⑭世界の敵ルート


創造主フリスにトコトン愛されしまい、彼女の後継者として行動して行くルート。

今まで出て来た人物のほぼ全てが敵に回ります。

多分誰も幸せにはならない。やっぱクソ女やんけ。


⑮アルマゲドンルート


イチカかその仲間達がベルナルドの仲間ファミリーを誤って殺してしまい、

彼と全面戦争になってしまうルート。

一番恐ろしい結末になります。


今見せられるのはこれくらい。

無論何時でもルートは発生し、変わる可能性はあります。


ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「次も期待している」「うぉっ……これは特盛すぎ……」「普通に白米食べてるの面白い」「朝からエリカ行進曲は笑う」「ネジなんか無いだろあの堕天使は」「宣伝部……一体何チカだ」

「ヨハンお兄ちゃんは朝からスゲーな……」「イケメン兄弟の無自覚なモテ自慢やめろ」

「クリチカ良い子過ぎる」「イチカの才能凄い……」「繋がったな」「ハルカに対する感情重いな……」「超合金とは結構渋い」「レナもクリチカも頭良さそう」「ロマンで空飛べるのはお前だけや!」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

宜しくお願い致します。

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