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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第二部:黙示録コンプレックス・in・北海道

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わくわく☆ネオナチ遊園地(後編)

ナチ共の奇襲だ!!

観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=2eqwhpB8uW0


~深夜~

~ルスツリゾート遊園地~


『まだ奴等は姿を現しません、オーバー』


《引き続き監視を続けろ》

《姿を現したら、火力を叩き込んだ後に第四層へ連中を引き付ける》


『了解です、オーバー』


戦闘服を着た男は物陰に潜みながら、入り口のゲートを注視する。


『民主主義を破壊する極右の屑共め……』

『お前達の命運もここまでだ……!』


そして彼が一息付いた、その時だった。

突如『エリカ行進曲』が大音量で一帯に響き渡る。


『!!?』


そして上空から遊園地全体がライトアップされ、黒い装甲を纏った兵士達が降下して来た。

彼が上空を見上げると、鉤十字がペイントされた空中戦艦の船腹が見えた。


『……や、やられた!!』


男は無線機で呼び掛ける。


『ナチ共の奇襲だ!!』

『迎撃開始!!』


《《《了解!!》》》


遊園地の各所から対空砲弾や機銃弾が、空中戦艦や兵士達に襲い掛かる。

ミニスカの黒い軍装に身を包んだクラリスは、戦艦の上で意地悪く笑う。


『アッハッハッハッ!!』

『バカじゃないの!?』

『【ルキフグス・レール】起動!!』


彼女がブーツを踏み鳴らすと、銃弾や対空砲弾は空中で停止した。


『チケット代はお返しするわ!』

『《反転(リベル)》!!』


停止した砲弾は、撃った場所へ反発して行く。

遊園地の各所で爆発が起き、銃手や砲手は吹き飛ばされた。

クラリスは、隣で重機関銃を担いでいたヴェルミーナへ言う。


『出番よ、赤イノシシ!』

『アンタの大好きな戦争が目の前にぶら下がっているわ!!』


『言われなくても突っ込んでやるよ!!クソビッチ!!』


ヴェルミーナはサングラスを放り出し、戦艦の外壁を滑り落ちて行く。

そして外壁を蹴りながら空中へ飛び出す。


『【赤い重機関銃(ロート・ヴァッフェ)】第二段階起動!!』

『ラロシェルのクソナルシスト野郎に宜しくなァ!!』

『ヒャーハッハッハッハッハァ!!』


真紅の重機関銃は唸りを上げ、地上の敵を薙ぎ倒して行く。

ヴェルミーナの皮膚と白目はたちまち赤くなり、戦場の悪魔が出現する。

悪魔は重機関銃を撃ちっぱなしながら、獰猛な笑い声を上げる。


『ヒャハハハハハ!!』

『ヒャーハッハッハッハァー!!』


~空中戦艦ツェッペリン~


緑髪で片眼鏡を付けた女が指揮杖を振り回し、艦橋で狂ったように叫ぶ。


『私に作戦で勝とうなんて、1000年早いんですよ!!』

『大方ダンジョンに引き込み、ギミックやモンスターを使って私達を殲滅しようという腹でしょうが……』

『その弛んだ腹!!食い破らせて貰う!!』

『第二派攻撃開始!!』


~遊園地~


遊園地のフェンスが戦車部隊のキャタピラに踏み潰されて行く。

即座に自爆ドローンの群れが戦車部隊に襲い掛かる。


《──甘いぜ!!》

《【VP-77LCD】起動!!》


戦車部隊の背後から扇状にレーザーが放たれ、ドローンの群れは空中で連続爆発を起こす。


《今だ!!進軍!!》

《電撃戦は速さ!!ひたすら速さだ!!》


ヴィットマンの戦車ロボと戦車部隊は、素早く遊園地内へ展開して行く。

彼の戦車ロボを複数の対戦車ミサイルが襲う。


《──!》


なんと、戦車ロボは素早い超信地回転でミサイルを弾いた。


《お返しだ!!俺のケツを舐めろ!!》

発射(フォイエル)!!》


ロボの振り向きざまに放たれた砲撃が、発射地点を粉砕した。

そしてロボの横を、サイドカー付きバイクに乗ったアーデルハイドが駆け抜けて行く。

アルグゥを載せて。


『総統!!』

『良い画が撮れていますよ!!』


【ええ!!最高だわ!!】

【今私達は私達だけの物語を作っている!!】

【千年王国へ続く物語を!!】


敵の反撃が急激に弱くなり、遊園地の何箇所かに集中して行く。


入口(・・)が出て来ました!!》

《総員!!集中攻撃開始!!》

《反撃のスキを与えずそのまま雪崩込め~!!》


黒い軍隊は整然とポイントへ集中して行く。

ヴェルミーナは建物の屋根を飛び移り、逃げる敵の前に着地する。


『案内ありがとよ、クソ共』

『お陰で探す手間が省けたぜぇ……』


ヴェルミーナは重機関銃を担ぎ、指を鳴らしながら敵へ近づいて行く。

銃弾が彼女の頬を掠める。


『……イ~イ度胸と腕じゃねぇか……』

『テメェ特殊部隊出身だな……』

『なら私の事は知ってんだろ?』


レーザーポインターが彼女の額に当てられ、敵の一人が闇に紛れながら答える。


『……悪評を』

『合衆国軍の名誉を汚した赤い悪魔と……』


『ハッ』

『名誉だと?』

『私が好きなのは戦場だ、軍隊じゃねぇ』

『それに泥と血に塗れ、生き残った時点で既に名誉だ。違うか?』


『……』


『……つれぇよな』

『軍を辞めても命を賭けて戦う以外に、メシを食う方法が無ぇ』

『雇い主がどんなにクソでも、クソみたいな仕事をこなすしか無ぇ』

『だがウォルマートで、ボロ切れのように扱き使われるのだけは受け入れられねぇ』

『それが戦士の誇り(プライド)だ、お前には誇りが眠っている!』


ヴェルミーナは深く微笑み、ギザギザの歯を見せながら言葉を続ける。


『だが、アーデルハイドに付いて行けば、飯と名誉以上のモノが手に入る……』

『エセ進歩主義に被れた軍官僚がくれたのは、僅かな金だけだったろ?親友(ホーミー)

『良く考えろ、今が人生の分岐点だ』

『私達は今、王国を作っているんだよ!千年王国をな!!』

『そして誇ろうぜ!子孫達に私達の闘いを!!』


『……!!』


敵兵士の一人は隣の兵士達を次々と撃っていく。

ヴェルミーナは笑みを崩さすに片手を差し出す。


『良く来てくれたな、感謝するぜ』

『出身は何処だ?』


『オクラホマだ』


男は言葉と同時に彼女の手を握り返す。


『家は何をやってた?』


『実家は牧場だったが、銀行に全て持ってかれてちまった』

『親父は銃で自分の頭を撃ち抜き、お袋は病気になった』

『……俺は食う為、お袋の薬代と生活費を稼ぐ為に軍隊へ入った』

『牧場の土地はチャイニーズの企業に買われたよ』

『退役後は紹介された金持ちの下で働いて……ここまで落ちて来た』


ヴェルミーナはタバコとライターを差し出し、男は受け取って火を点ける。


『……災難だったな、親友(ホーミー)

『だが私らに付いてくれば、牧場どころか美人の嫁までセットになって戻って来るぜ』

『アーデルハイドはアメリカの大統領になる……いや、させる』


『……本気か?』


ヴェルミーナは口を閉じ、未だ轟音響く戦場を眺める。

戦火に照らされた彼女の横顔は、名匠が掘った彫刻のように美しかった。


『ああ、本気だ』

『アイツこそ運命が創り出した指導者だ』

『なら私はアイツを助けるついでに楽しむだけさ、戦場をな!』


『……アンタは悪魔なんかじゃない』

『人がそう呼んでるだけだ、それだけはハッキリと分かったよ』


『だろ?』

『寧ろアーデルハイド専用の赤い天使さ、私は』

『契約もしっかり守るし、寧ろ天使以上だぜ?』


ヴェルミーナはニッと男へ笑いかけた。

そして彼女は屋台裏の歪んだ空間へ向かって行く。


『アンタみたいな女がもっと居ればな……』

『いや、無いモノねだりか……』


男も周りの隊員達も彼女の後に付いて行く。

ヴェルミーナは歪んだ空間へ足を踏み入れる。

そこから出ると、客で賑わう異界の遊園地が広がっていた。


『……!』

『こりゃ今まで以上に厄介かもな……!』


隊員の一人は客の姿を見て言う。


『羽が……羽が生えてやがる……』

『まさか異種族が住んでやがるのか……!?』


ヴェルミーナは【赤い重機関銃】を即座に構える。


『……人型のモンスターが住み着くダンジョンがあるとは聞いていた……』

『だがこの数と文明レベルはヤバいな』


羽の生えた女がヴェルミーナ達を見て騒ぎ出す。

彼女はさっき仲間にした男へ言う。


『オイ、コイツ等は一体何なんだ』


『……天使と自ら称する、肉食種族だ』

『そして……MI6とは協力関係にある』

『ダンジョンの構造は16層だ』


『なるほどな……』

『この自称天使共にとっても、私らは邪魔ってか』

『なら話は早ぇ』


ヴェルミーナは部下の一人の背中を軽く叩く。


『ヴェルチカへ【ベリアルナイン】の投下を要請して来い』

『あとヴィットマンとアルグゥ、クッソムカつくがクラリスを呼べ』

『全力で行かねぇと、多分私らの方が死ぬ』


『了解です!!』


部下は外の世界へと戻って行く。

そして男に言う。


『そういや名前を聞いてなかったな……』

『名前は?』


『アルフレッド・モーンケだ』


『モーンケか、良い名前だな』

『で、早速教えて欲しい事がある』


モーンケも銃を構える。


『何だ?』


『コイツ等の主食は何だ?』


『人肉だ』


『ファック』

『涎垂らして外に出たがってるじゃねぇか』

『こりゃ明らかに人類の敵だぜ』


自称天使達は、ギラ付いた眼でヴェルミーナ達を眺め始める。

そして武装した自称天使達がやって来る。

ヴェルミーナの皮膚がたちまち赤くなって行く。


『……なるほど、テメェら私らの肉が欲しいってか……』

『なら覚悟しとけよ!』


紅い二梃の重機関銃が、ヴェルミーナの手にグッと握られる。


『オラオラオラァ!!悪魔様ご一行のお通りだァ!』

『【赤い重機関銃】第三段階起動!!』

『《混沌の紅い銃カオス・デア・ロートヴァッフェ》!!』


紅い弾丸の嵐が、自称天使達の腸内に入っていた人肉をブチ撒けた。



以下登場人物URL(2025/5/24更新済み):

https://docs.google.com/spreadsheets/d/18yCj9B-CZEpJGIDICTLBSG4K3ASfzvPI7MeKN9sNjkY/edit?usp=sharing


ヴェルミーナは普通に頭もキレる。

仲間を増やす方法も知っている。

そして論理的かつ合理的で、明晰な判断力を持っている。


彼女が些細な事で怒って機関銃を振り回すのは、世の理不尽がひたすらに許容出来ないだけ……

かもしれない。

永遠の暴れん坊少女と言えばそう。

本来ならイチカが最も苦手とするタイプの人間かもしれない。

向こうは好いてるけど。


遊園地で人が行方不明になる時は、裏で食われているかもしれません。

次回は他称悪魔対、自称天使達です。


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