わくわく☆ネオナチ遊園地(後編)
ナチ共の奇襲だ!!
観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=2eqwhpB8uW0
~深夜~
~ルスツリゾート遊園地~
『まだ奴等は姿を現しません、オーバー』
《引き続き監視を続けろ》
《姿を現したら、火力を叩き込んだ後に第四層へ連中を引き付ける》
『了解です、オーバー』
戦闘服を着た男は物陰に潜みながら、入り口のゲートを注視する。
『民主主義を破壊する極右の屑共め……』
『お前達の命運もここまでだ……!』
そして彼が一息付いた、その時だった。
突如『エリカ行進曲』が大音量で一帯に響き渡る。
『!!?』
そして上空から遊園地全体がライトアップされ、黒い装甲を纏った兵士達が降下して来た。
彼が上空を見上げると、鉤十字がペイントされた空中戦艦の船腹が見えた。
『……や、やられた!!』
男は無線機で呼び掛ける。
『ナチ共の奇襲だ!!』
『迎撃開始!!』
《《《了解!!》》》
遊園地の各所から対空砲弾や機銃弾が、空中戦艦や兵士達に襲い掛かる。
ミニスカの黒い軍装に身を包んだクラリスは、戦艦の上で意地悪く笑う。
『アッハッハッハッ!!』
『バカじゃないの!?』
『【ルキフグス・レール】起動!!』
彼女がブーツを踏み鳴らすと、銃弾や対空砲弾は空中で停止した。
『チケット代はお返しするわ!』
『《反転》!!』
停止した砲弾は、撃った場所へ反発して行く。
遊園地の各所で爆発が起き、銃手や砲手は吹き飛ばされた。
クラリスは、隣で重機関銃を担いでいたヴェルミーナへ言う。
『出番よ、赤イノシシ!』
『アンタの大好きな戦争が目の前にぶら下がっているわ!!』
『言われなくても突っ込んでやるよ!!クソビッチ!!』
ヴェルミーナはサングラスを放り出し、戦艦の外壁を滑り落ちて行く。
そして外壁を蹴りながら空中へ飛び出す。
『【赤い重機関銃】第二段階起動!!』
『ラロシェルのクソナルシスト野郎に宜しくなァ!!』
『ヒャーハッハッハッハッハァ!!』
真紅の重機関銃は唸りを上げ、地上の敵を薙ぎ倒して行く。
ヴェルミーナの皮膚と白目はたちまち赤くなり、戦場の悪魔が出現する。
悪魔は重機関銃を撃ちっぱなしながら、獰猛な笑い声を上げる。
『ヒャハハハハハ!!』
『ヒャーハッハッハッハァー!!』
~空中戦艦ツェッペリン~
緑髪で片眼鏡を付けた女が指揮杖を振り回し、艦橋で狂ったように叫ぶ。
『私に作戦で勝とうなんて、1000年早いんですよ!!』
『大方ダンジョンに引き込み、ギミックやモンスターを使って私達を殲滅しようという腹でしょうが……』
『その弛んだ腹!!食い破らせて貰う!!』
『第二派攻撃開始!!』
~遊園地~
遊園地のフェンスが戦車部隊のキャタピラに踏み潰されて行く。
即座に自爆ドローンの群れが戦車部隊に襲い掛かる。
《──甘いぜ!!》
《【VP-77LCD】起動!!》
戦車部隊の背後から扇状にレーザーが放たれ、ドローンの群れは空中で連続爆発を起こす。
《今だ!!進軍!!》
《電撃戦は速さ!!ひたすら速さだ!!》
ヴィットマンの戦車ロボと戦車部隊は、素早く遊園地内へ展開して行く。
彼の戦車ロボを複数の対戦車ミサイルが襲う。
《──!》
なんと、戦車ロボは素早い超信地回転でミサイルを弾いた。
《お返しだ!!俺のケツを舐めろ!!》
《発射!!》
ロボの振り向きざまに放たれた砲撃が、発射地点を粉砕した。
そしてロボの横を、サイドカー付きバイクに乗ったアーデルハイドが駆け抜けて行く。
アルグゥを載せて。
『総統!!』
『良い画が撮れていますよ!!』
【ええ!!最高だわ!!】
【今私達は私達だけの物語を作っている!!】
【千年王国へ続く物語を!!】
敵の反撃が急激に弱くなり、遊園地の何箇所かに集中して行く。
《入口が出て来ました!!》
《総員!!集中攻撃開始!!》
《反撃のスキを与えずそのまま雪崩込め~!!》
黒い軍隊は整然とポイントへ集中して行く。
ヴェルミーナは建物の屋根を飛び移り、逃げる敵の前に着地する。
『案内ありがとよ、クソ共』
『お陰で探す手間が省けたぜぇ……』
ヴェルミーナは重機関銃を担ぎ、指を鳴らしながら敵へ近づいて行く。
銃弾が彼女の頬を掠める。
『……イ~イ度胸と腕じゃねぇか……』
『テメェ特殊部隊出身だな……』
『なら私の事は知ってんだろ?』
レーザーポインターが彼女の額に当てられ、敵の一人が闇に紛れながら答える。
『……悪評を』
『合衆国軍の名誉を汚した赤い悪魔と……』
『ハッ』
『名誉だと?』
『私が好きなのは戦場だ、軍隊じゃねぇ』
『それに泥と血に塗れ、生き残った時点で既に名誉だ。違うか?』
『……』
『……つれぇよな』
『軍を辞めても命を賭けて戦う以外に、メシを食う方法が無ぇ』
『雇い主がどんなにクソでも、クソみたいな仕事をこなすしか無ぇ』
『だがウォルマートで、ボロ切れのように扱き使われるのだけは受け入れられねぇ』
『それが戦士の誇りだ、お前には誇りが眠っている!』
ヴェルミーナは深く微笑み、ギザギザの歯を見せながら言葉を続ける。
『だが、アーデルハイドに付いて行けば、飯と名誉以上のモノが手に入る……』
『エセ進歩主義に被れた軍官僚がくれたのは、僅かな金だけだったろ?親友』
『良く考えろ、今が人生の分岐点だ』
『私達は今、王国を作っているんだよ!千年王国をな!!』
『そして誇ろうぜ!子孫達に私達の闘いを!!』
『……!!』
敵兵士の一人は隣の兵士達を次々と撃っていく。
ヴェルミーナは笑みを崩さすに片手を差し出す。
『良く来てくれたな、感謝するぜ』
『出身は何処だ?』
『オクラホマだ』
男は言葉と同時に彼女の手を握り返す。
『家は何をやってた?』
『実家は牧場だったが、銀行に全て持ってかれてちまった』
『親父は銃で自分の頭を撃ち抜き、お袋は病気になった』
『……俺は食う為、お袋の薬代と生活費を稼ぐ為に軍隊へ入った』
『牧場の土地はチャイニーズの企業に買われたよ』
『退役後は紹介された金持ちの下で働いて……ここまで落ちて来た』
ヴェルミーナはタバコとライターを差し出し、男は受け取って火を点ける。
『……災難だったな、親友』
『だが私らに付いてくれば、牧場どころか美人の嫁までセットになって戻って来るぜ』
『アーデルハイドはアメリカの大統領になる……いや、させる』
『……本気か?』
ヴェルミーナは口を閉じ、未だ轟音響く戦場を眺める。
戦火に照らされた彼女の横顔は、名匠が掘った彫刻のように美しかった。
『ああ、本気だ』
『アイツこそ運命が創り出した指導者だ』
『なら私はアイツを助けるついでに楽しむだけさ、戦場をな!』
『……アンタは悪魔なんかじゃない』
『人がそう呼んでるだけだ、それだけはハッキリと分かったよ』
『だろ?』
『寧ろアーデルハイド専用の赤い天使さ、私は』
『契約もしっかり守るし、寧ろ天使以上だぜ?』
ヴェルミーナはニッと男へ笑いかけた。
そして彼女は屋台裏の歪んだ空間へ向かって行く。
『アンタみたいな女がもっと居ればな……』
『いや、無いモノねだりか……』
男も周りの隊員達も彼女の後に付いて行く。
ヴェルミーナは歪んだ空間へ足を踏み入れる。
そこから出ると、客で賑わう異界の遊園地が広がっていた。
『……!』
『こりゃ今まで以上に厄介かもな……!』
隊員の一人は客の姿を見て言う。
『羽が……羽が生えてやがる……』
『まさか異種族が住んでやがるのか……!?』
ヴェルミーナは【赤い重機関銃】を即座に構える。
『……人型のモンスターが住み着くダンジョンがあるとは聞いていた……』
『だがこの数と文明レベルはヤバいな』
羽の生えた女がヴェルミーナ達を見て騒ぎ出す。
彼女はさっき仲間にした男へ言う。
『オイ、コイツ等は一体何なんだ』
『……天使と自ら称する、肉食種族だ』
『そして……MI6とは協力関係にある』
『ダンジョンの構造は16層だ』
『なるほどな……』
『この自称天使共にとっても、私らは邪魔ってか』
『なら話は早ぇ』
ヴェルミーナは部下の一人の背中を軽く叩く。
『ヴェルチカへ【ベリアルナイン】の投下を要請して来い』
『あとヴィットマンとアルグゥ、クッソムカつくがクラリスを呼べ』
『全力で行かねぇと、多分私らの方が死ぬ』
『了解です!!』
部下は外の世界へと戻って行く。
そして男に言う。
『そういや名前を聞いてなかったな……』
『名前は?』
『アルフレッド・モーンケだ』
『モーンケか、良い名前だな』
『で、早速教えて欲しい事がある』
モーンケも銃を構える。
『何だ?』
『コイツ等の主食は何だ?』
『人肉だ』
『ファック』
『涎垂らして外に出たがってるじゃねぇか』
『こりゃ明らかに人類の敵だぜ』
自称天使達は、ギラ付いた眼でヴェルミーナ達を眺め始める。
そして武装した自称天使達がやって来る。
ヴェルミーナの皮膚がたちまち赤くなって行く。
『……なるほど、テメェら私らの肉が欲しいってか……』
『なら覚悟しとけよ!』
紅い二梃の重機関銃が、ヴェルミーナの手にグッと握られる。
『オラオラオラァ!!悪魔様ご一行のお通りだァ!』
『【赤い重機関銃】第三段階起動!!』
『《混沌の紅い銃》!!』
紅い弾丸の嵐が、自称天使達の腸内に入っていた人肉をブチ撒けた。
以下登場人物URL(2025/5/24更新済み):
https://docs.google.com/spreadsheets/d/18yCj9B-CZEpJGIDICTLBSG4K3ASfzvPI7MeKN9sNjkY/edit?usp=sharing
ヴェルミーナは普通に頭もキレる。
仲間を増やす方法も知っている。
そして論理的かつ合理的で、明晰な判断力を持っている。
彼女が些細な事で怒って機関銃を振り回すのは、世の理不尽がひたすらに許容出来ないだけ……
かもしれない。
永遠の暴れん坊少女と言えばそう。
本来ならイチカが最も苦手とするタイプの人間かもしれない。
向こうは好いてるけど。
遊園地で人が行方不明になる時は、裏で食われているかもしれません。
次回は他称悪魔対、自称天使達です。




