東京腐敗ソサエティー5.0(後編)
観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=MSXsCTU2h-E
上杉警部の一閃がマルティーニを両断する。
だが彼女の刀は空を斬る。
そしてマルティーニは上杉の脇腹へ強烈な蹴りを打ち込み、吹き飛ばす。
「かふっ!?」
四十万は残像を伴って動くマルティーニを交差法(※1)で観察し始める。
(……驚きました)
(アレ、本体がブレてますねぇ)
(分身じゃありませんか)
しかし、四十万は何をするワケでもなかった。
彼女は近くの椅子へ座り、ケーキを頬張り始める。
「まぁ皆頑張って下さい」
張本は彼女を一瞥してため息を付きながら、引き金を引く。
だが、マルティーニへは弾が当たらない。
「──!」
《ンなの当たるワケねぇだろうがァ!》
《ダハハハハハッ!!》
マルティーニは壁を疾駆し、張本へ嵐のような蹴りを繰り出す。
「……ッ!」
(蹴りの軸が見えない!)
蹴りがガードを突き抜け、張本は吹き飛ばされる。
《ダハハハハッ!》
《クソ共を庇ってクソみたいに死ねやァ!!》
刃状のエネルギー弾が張本へ迫る。
『《玉藻鏡》起動』
『《殺生反転草子》』
張本の前に式神が飛び、結界が張られる。
『そのままそっくりお返するわぁ』
結界へ飛んだエネルギー弾がマルティーニへ跳ね返る。
《ファゥ!》
《アイテム使いかよ!》
《隠してやがったな!クソビッチ!》
彼は高く飛んで宙返りし、跳ね返って来た攻撃を躱す。
『待っていましたよ、この時を』
いきなり現れた四十万はマルティーニの首と腕に飛びつくと、自分の体を回転させる。
張本は目を大きく見開く。
「──空中で飛び付き腕十字だと!?」
(しかも椅子でケーキを食べていたハズだ……!)
四十万はニチャァと微笑む。
『足がダメそうなら、そりゃ腕ですよねぇ!』
《ダハハハハッ!!》
《日本人形が腕に絡んで来やがったぜ!!》
《ファッキュードール!!》
マルティーニは空を蹴ると、自分の腕ごと四十万を床へ叩きつけようとする。
『イカレてますね、コイツ』
『腕が折れますよ』
《んなモン、治せば良いだけだ!》
《床ごとブッ壊してやるぜェ!!俺の腕ェ!!》
四十万は腕ひしぎを解き、霊体となって叩きつけをすり抜けた。
《ファゥ!!》
《便利だな!そのアイテム!!》
『アナタが思っている程じゃないですけどねぇ』
四十万はシャツの袖からダガーナイフを放つ。
マルティーニはナイフの柄を指でキャッチし、放り捨てる。
『──秩序の脅威、レベルMAXって感じですよ』
『アナタには……』
『今ここで死んで欲しいですねぇ(私のために)』
《ダーハハハハハハハハァッ!!》
《これはまた……》
《久々に壊し甲斐のある女が現れたなァ!!》
彼はもう一挺ブレードガンを取り出す。
彼の顔が四方八方へブレ始める。
《《ダーク・ブレードガンナー》!!》
《俺の脳をトバしてくれよ!!》
《《残酷無法拳銃!!》
マルティーニの残像が会場全体へ散っていく。
九子は自分と張本だけに結界を掛ける。
「……!どういう積りd……」
「これはいけずと違いますわねぇ」
「二人で幸せになる為の処置どすえ❤️」
奔流する残像から刃状のエネルギー弾が飛び交う。
弾は招待客達を切り刻んでいく。
上杉は壁を蹴り、上空へ回避しながら弾を迎撃した。
(──弾くので精一杯です!!)
《ダハハハハハハハハハハハハハハッハァ!!》
《ヴェネツィア赤黒黄赤黒肉!!》
《火煙の中に水が浮き、俺の身体は暗いボートの水へダイブする!!》
(コイツ、完全にキマってますねぇ)
(にしても無茶苦茶な無差別攻撃ですよ)
《白い部屋》
《影の部屋》
《部屋を横切ってお前の元へ行くぜェ!》
マルティーニの残像は警視総監の前に現れる。
そして、ブレる顔を近づけて言う。
《赤い椅子 ローマ》
《東京 北海道》
《パズルのピースが待ってるぜ!!ダハハハハハァ!!》
マルティーニの強烈な踵落としにより、総監は頭から潰れた。
「そ、総監……!!」
「こうなったら一人でも……!」
血塗れになったSPの一人は最期の力を振り絞り、逃げ出す客達の前へ立ち塞がる。
「ドケ」
「邪魔ダ」
巨大なカランビットナイフにより、SPは三枚に下ろされる。
褐色白髪の大女が血塗れのまま笑い出す。
「ハハハハハ!!」
「ヤル気アルノカ!?オマエ等!!」
「ファヴェーラ(※2)ノギャング共デモ少シハマシダッタゾ!!」
張本は結界を内側から殴るが、逆に吹き飛ばされてしまう。
「結界を解け!!」
「俺の部下達が……!!」
九子は血と肉片だらけの会場を一瞥し、冷然と言い放つ。
「もうアンタ様はウチの夫どすえ」
「夫の身を護るのんが妻の勤めどす」
「貴女の夫になった覚えはない!!」
九子の4本の尻尾が嬉しそうに動く。
「アンタ様、ウチを助けてくれたやん?」
「もうそなったら夫婦どすなぁ❤️」
「……っ!」
(最初からマトモな人間など……)
(此処には誰一人として居なかったか……!)
彼女は張本の顎を指で掬って言う。
その茶色の瞳は妖しく煌めいていた。
「アンタ様はあの黒コートに敵わな見たんどす」
「結界から出ても肉片になるだけどすえ」
「だから……」
「あんし~んしてウチに甘やかされてばええねん❤️」
「そやけど、仇取りがお望みなら叶えてあげはりますわ❤️」
九子は式神を褐色の大女へ向けて飛ばす。
だが大女は攻撃に気付き、ナイフで斬り落とそうとする。
「どか~んどすえ❤️」
強烈な爆発が大女を包む。
しかし、彼女は爆炎の中から飛び出して来る。
そして九子へ向かって来た。
「エラいタフな生き物やねぇ……」
「ならこら如何どすか」
「《玉藻鏡》二段階起動」
「《宮中魔鏡大殺界》」
九子の尻尾が6本に増える。
大女の周りを複数の魔鏡が取り囲み、光の柱が彼女を包む。
『──!!』
大女は異常な反射神経で光の柱から飛び出す。
そして、壁を蹴り砕いて隣の部屋に飛び込む。
「──!!危ない!!」
張本は九子を抱きかかえ、その場から跳ぶ。
直後、回転する巨大ナイフが二人の居た地面を抉り取った。
「あらぁ……」
「二度目やねぇ❤️」
九子の狐耳が彼女の微笑みと連動し、ピコピコと動く。
張本は《44ニューナンブ》を構え、壁に向かって数発撃ちこむ。
『グアッ!?』
「アタリだな」
「どうやら壁をすり抜けてくる様だ、あのナイフ」
(か、かっこええわぁ……❤️)
(下腹部がきゅんきゅんするわ……❤️)
壁が殴り砕かれる。
怒れる大女はマルティーニに向かって叫ぶ。
『マルティーニ!!』
『マダカ!!』
『早ク決着ヲ着ケロ!!』
四十万と上杉を同時に相手取りながら、マルティーニは笑い声を上げる。
《ダハハハハハハッ!!!》
《リオハ・リオハ、紺碧のアドリア》
《コンクリートの上の水 花嫁の舟が滑走している!》
『……症状ガ酷クナッテルナ』
そこへ彼女の部下が報告にやってくる。
『今逃げた客達を追撃中ですが、相当数を取り逃がしました』
『数ハ?』
『凡そ70以上』
『如何なさいますか、レゼルヴァ隊長』
『マルティーニノ決着ヲ待ッテハ居ラレナイ』
『追撃ト端末ノ回収ヲ進メロ』
『端末サエ有レバデジタル資産ハ回収出来ル』
『後ハ連中ノ住所ト口座ヲ押サエレバ良イ』
『ハッ』
『了解しました』
四十万は禍々しい色の巻物を広げる。
「そんなに大勢を相手にしたいのなら……」
「させてあげましょうかねぇ……」
彼女の周りに夥しい怨霊や妖気が纏わりつき始める。
「望みは天下泰平平安の世」
「平安ならざるから平安を願った」
「通りに練り狂うは妖怪の行列」
巻物が宙に浮く。
「《ぬらりひょんの巻物》二段階起動」
「《百鬼夜行行列》」
巻物から赤い手や手の骨が這い出てくる。
マルティーニは顔をブレさせ、笑い声を上げ続ける。
《ダハハハハハハハハ!!》
《ダハハハハハハハハハハァ!!》
《出てくるの全部殺せってか!!最高だァ!!ファーーゥ!!》
彼の残像達へ上杉が突きの体勢で突撃してくる。
「敵の正体見極めたり!!」
「《毘沙門剣》第二段階起動!」
「《葛城高天七言絶句》!!」
《──!!》
七支刀が猛烈な闘気を纏い、床と柱を抉りながらマルティーニの左肩を貫いた。
※1 立体視の一つ。寄り目で対象を見る。
※2 ブラジルのスラム街の事。定期的に市街戦や暴動が起きる。
度々軍警察が出動して、騒ぎを鎮圧します。(どっちが騒ぎを起こしているかは不明)
レゼルヴァ隊長は鎮圧する側、つまり軍警察所属です(元か現役かはこれから判ります)
笑い方が汚い(直球)
お人形みたいな顔が台無しだ
四十万(妹)には「喧嘩両成敗」的な発想はありません。
しかし、イチカが絡むと例外と化します。感情捩じれすぎ。
彼女の武術ベースは高専柔道です。
ブラジリアン柔術やMMA(総合格闘技)での寝技や組技……
それらこの高専柔道から生まれた新技術が元となっています。
武術は自分の性格や気性と、如何にマッチするかが大切だと思ってます。
性格の悪いイジメっ子は寝技に適性がある、と個人的には思って描写しています。
寝技師に対しては誉め言葉です。典型例は青木真也。
以下格闘ベース総論①(超語るぜ):
マルティーニの格闘ベースはサバットとキックボクシングです。
人を一方的に甚振るこの男の気性に合っています。
同時に突き放してもいますが。
マルファお姉さんはコマンドサンボをベースにしていますね。
プラグマティックな思考をしている軍人らしいと思います。
無論システマも達人クラスです。こぇー。
モントヴァンはガッチガチのMMAとケンカ戦法です。
打・投・極、全てを非常に高いレベルでこなせます。
彼は元々ヘビー級のボクシング選手で、レスリングの大会でも活躍してました。
ただ、彼は元々貧困地域の不良で、自分から毎日ケンカを大人に売ってました。
手を付けられなくなった彼の親は彼をボクシングジムへブチ込みます。
すると更に闘争心が増してしまい、警察署の常連になってしまいました。
そして今度は優しい警官達から強制的に可愛がられ、
レスリングや柔術を教わった、という経緯があります。
10代中頃には既にUFC選手としてのベースは完成してました。
彼は若干18歳でUFCと契約を結んでいます。
格闘の才能は恐らく彼が一番です。格闘技に対する愛もですが。
とにかくフィジカルのベースとメンタルの強さが尋常じゃない。
彼は武器を放り出してからが強い。
いっちゃんが彼に勝てたのは、彼女の技が初見だったからです。
もう彼女の技は通用しないでしょうね……
因みに彼は児童教育支援団体やマイナーな格闘技団体へ、多額の寄付をしてます。
この話はどこかでエピソードとして入るかもです。
で、いっちゃんですが……
深川流という古流柔術を習得しています。
この古流柔術は武士の殺人技術がベースになっています。
自分に自信が無い故に、箔付けと「深さ」を過剰に求める彼女らしいかなと。
そして闇が窺えます。
四十万(妹)が執着してるのはそこかもしれない。
総論②はまた今度。
剣術とかも含めてという感じです。
上杉ちゃんはマトモじゃないかって?
マトモじゃないね、彼女は。
四十万が直にリクルートした時点でお察し下さい。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
「面白かった」「次も期待している」「張本警部カッコ良すぎぃ……(二度目)」「上杉ちゃんもカッコ良い」「妖怪姉妹が色んな意味で手練れ」「これは妖狐」
「マルティーニの戦い方がスタイリッシュで良い」「けど完全に中毒者の言動」「二人同時に相手取るのは凄い」「壁をすり抜けるナイフは怖すぎ」「マトモなのは張本さんだけだった」
「格闘ベース総論面白かった」「モントヴァンそんなに強かったのか」「青木真也の性格は悪い」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。
宜しくお願い致します。




