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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第二部:黙示録コンプレックス・in・北海道

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ワガママギャルキューレ襲来(前編)

魔法少女まるふぁ☆マギナ

参☆上!❤️


~日高道~

~日高厚賀IC~


「……どうやらアーデルハイド達は私達を見失ったみたいだね」

「ホント一時はどうなるコトかと……」


「あの王子様とその部下達が睨み効かしてくれたお陰かもしれへんで」

「……今度土産物持って礼を言わなアカンわ」


「レイやんがそこまで言うなんて相当ですね」


「……ご同業(・・・)の頂点みたいな連中や」

「世話になったら挨拶せなヤバいやろ」

「というか軍隊並……いやそれ以上の戦力持っとるやろうな」


「そんなに」


「……中南米はヘタしたらマフィアどころか、警察すら敵になる事もある地域やからな」

「自然と自衛の武力をコミュニティ単位で持つようになるんや。いわゆる自警団ってヤツやな」

「《コンキスタカルテル》はそう言った連中を纏め、頂点に立っとる」


「……カルテルって名前が付いているワリには余り後ろ暗さが無いですね」

「というか彼等の敵って、他の犯罪組織全部と軍・警察ですよね」


「後者はまだ小競り合いの段階やが、前者は全て潰されたらしいで」

「余りにも殲滅されるのが早くて、各国政府の対応が間に合わんかったぐらいや」

「間違い無くあの銀髪王子様は中南米の英雄や」


「シモン・ボリバル(※1)の再来、ですか?」


「分からん」

「ハンニバルやアレクサンドロス並かもしれへんで」

「いや、地盤ゼロからやってる分ソイツら等以上かもな」


イチカは窓の外を見ながら呟く。


「……そんな人物をアメリカがそのままにしておくワケが無い」

「道半ばで(たお)れる事も十分にあり得る……」

「彼を死なすのは世界的な損失になる……いや、生きている方が……でも誰かとくっついて気持ちが……」


「いっちゃん、あの銀髪のコトが少し好きになってもうたか?」

「ワイという女がありながら悲しいで~~(モミモミ)」


イチカはレイカのセクハラに抵抗せず、少し赤面する。


「ち、ちげーよ……でもやっと私と対等(・・)な人が現れたのかなって……」


アイカがイチカの考えを変えさせようと口を挟もうとした、その時だった。


「あのヒトは対等な関係なんか求めてないよ」


「「「!?」」」


ハルカは地平を見据えながら、アクセルを少し緩める。


「あのヒトの頭を抱いて、あのヒトの気持ちが私には痛い程伝わって来た」

「あのヒトは何よりも重い荷物を誰よりも速く運ばないといけない。だから止まれる所を探してる」

「何も言わず、荷物を背負った自分を無条件で受け入れてくれる、そんな人間を探してるんだと思う」


「……そんなん聖母やんけ」

「どんな美人探すよりも難しいわ」


「……レイやん」

「聖母は探すモノじゃなくて、成るモノだと思う」

「私がそれになれるかどうかは分からないけど、やってみる価値はあると思うし、なってあげたいと思ったんだ」


「……案外恋多き女ですね、たぬき」

「童貞騎士にはアタックを掛けるし、死神の聖母になってみたいと言い出すし、ホントなんで今ままで男が出来なかったんですかね……」

「日本人相手よりも外国人相手の方が相性良いんでしょうか?」


「ふふっ。かもね」

「それもこれも皆と会えたからこそ、かな!」


「おー言うやんけ、タヌキ!」

「じゃあ帰ったらまずダイエットやな!」


「え」


「『え』、じゃないですよたぬき」

「これを機に王子様に相応しい女になるんですよ!」

「お菓子を食いながら、アダルトグッズを部屋に散らかす生活からは卒業です!」


「そんなぁ~~!」

「ポテチ(コンソメ味)が無くてどうやって生きて行けば良いんだぁ~~!」


「一番不要なモノな気がしますけど」

「取り合えず食習慣の改善からですかね、割りと深刻ですよこの問題」

「というワケでレイやんの飲酒も1日2回までです!」


「な、なんやて!?」

「ワイにとって酒は血液みたいなモンやぞ!」


「血液をそんな頻繁に摂取する必要あるんですかね」

「イチカさんなら兎も角、レイやんには必要無いですよねぇ~~?」


「ここぞとばかりに痛い所ばかり突いて来よるで、この平たい胸族は……!」


「とにかく!たぬきはこれから私と一緒に花嫁修業です!」

「そしてレイやんは飲酒制限!」


ハルカは首を傾げる。


「私と……?」

「アイちゃんは誰の花嫁になる積もりなの?」


「無粋ですよ!たぬき!」

「そんなの決まってるじゃないですか!(チラッチラッ)」


(ま、まだ諦めてないんかコイツ)

(その執念だけは見習わなアカンな)


イチカは楽しそうにアイカとど突き合いをするハルカを見る。


(私って女としてもパートナーとしても、まるでダメなのかな……)

(いや、今のハルカは物凄く魅力的に見える。誰でもアイツの方を好きになるに決まってるだけだ)

(そうだ、そうに違いない……私は……私は……)


彼女は泣き腫らした目を静かに閉じる。


(……やめよう)

(これ以上見ると、胸の痛みが戻らなくなりそうだから)

(現実はまた、もの凄い勢いで私を追い詰め始めている。そんな気がする……)


《……》


~数時間後~

~イチカハウス(仮)~


ハルカはイチカハウスの入り口から、只ならぬ気配を感じ取る。


「……この感じ……あのアラフォー魔女が居る……!」

「レイやん先頭パス!」


「……ニュータイプかお前は」

「んなの気のせいや、気のせい(まぁ代わったるけど)」

「疲れてるんやろ、今日は早よ寝ぇや……」


ハルカの後ろでアイカが《M99カリュドーンライフル》を構え出す。


「念の為何時でもブッ放せる準備しておきますね」

「尊い犠牲でした」


「おい!なんで死ぬコト前提なんや!」

「ったくもうコイツらは……!」


レイカは家の扉を開ける。

そこには誰も居なかった。


「ホラ、誰も居らんやんけ!」

「杞憂や杞憂!ワハハ!」


しかし、リビングの扉を僅かに開けた瞬間、レイカの動きがピタリと止まる。


「……これはアカン。マジでアカン」

「アイちゃん、ワイ用事を思い出したから帰るわ」


「……な、何が見えたの?」


「魔法少女や」


「「え?」」


「せやから魔法少女や」

「ハートどころか(タマ)までキャッチされそうや」


ハルカは目を細めて隙間の向こうを少しだけ凝視する。


「わ、わ、わ、わわわ……!」


彼女は腰を抜かし、そのまますとんと床に落ちる。

アイカは扉に向かって躊躇無く引き金を引いた。


《プリキュア☆グラデニエッツアイス!》


氷塊が魔弾と衝突して扉が吹き飛ぶ。

そして冷気の奥から魔法少女の格好をしたマルファが出て来て、ポーズを取った。


「魔法少女まるふぁ☆マギナ」

「参☆上!❤️」


隣には銀髪でオッドアイの美少女が嫌々ポーズを取る。


『……魔法少女えれな☆マギナ』

『参上ぉ~……』


「参上というかもう惨状ですよコレは……」

「ていうか隣ダレですかババア」


「ババア言うな殺すぞ❤️」


「魔法少女なら『殺すぞ』って言ったらダメでしょ……」

「ニチアサはそういうの厳しいんだよ?」

「てかその娘誰?部下?」


「ちょ~っと事情があって預かってるわ」

「余りにもおバカだから私が直に教育しているの❤️」

「前に大統領に会った時、彼が呆れて溜息付いていたぐらいだから」


「国家レベルのバカとか、これまたスゴいの連れて来たね……」


『?……何話してるの?』

『……!成る程!!アタシの余りの美しさに混乱している、ってワケね』

『さぁ、もっと私を見なさい!そして敬いなさい愚民共!』


「……初めてオメーに同情しましたよ、魔女」

「Z世代の集大成ですね、コイツは……」


「でしょ?」

「魔法少女も大変なお仕事なの❤️」


「きょ、今日はもうその設定で行くんか……」

「ホンマ圧倒されるで毎回……」


「それにしてもタヌキちゃん……」

「ちょっと見ない内に、随分女っぷりが上がったんでは無くて?」

「物凄い良い女オーラあるわ、貴女」


「ま、まぁ……ちょっとプロポーズ受けちゃいまして……」


「まぁ!!❤️」

「一体誰なの!?タヌキちゃんに恋の魔法を掛けた王子様は!❤️」


ハルカはベルナルドから預かった銀色のロザリオをマルファへ見せる。


「《コンキスタカルテル》首領のベルナルドって人です」

「銀髪で背が高くて超イケメンなカッコ良い人なんだけど……知ってます、よね?」


「し、知ってるわ。競合相手でもあるもの……」

「そしてタヌキちゃん……そのロザリオは?」


「母親の形見らしいです」

「迎えに来るから預かっていて欲しい、と」


「イチカ!レイカ!駄犬!エレナ!」

「作戦会議よ!」

「コレは完全に予想外な事態が進行しているわ……!」


「次駄犬って言ったらまた撃ちますよ」


しかしイチカはソファーに寝転がり、背を向ける。


「ハルカに任せとけば良いよ、そんなの」

「カボチャの馬車でも銀色のランボルギーニでも好きな乗り物乗って、好きな場所へ行けば良いさ」


「駄犬!説明!」


「だから駄犬じゃねーですって!」

「……まぁ後で殺しに行くとして、説明だけはしましょうか」

「実は……」


7分後。


『ふ~~ん……』

『良く分かんないケド……』

『要は女としての魅力が無いから見向きもされなかった、ってコトでしょ?』


エレナの爆弾発言に場が凍り付く。


『……もう一回言ってみろよ脳ミソスカスカギャル』

『テメェの頭は軽いかもしれないが、言葉は軽くねぇぞ』


『そうやって初対面の人間に対して攻撃的に出る女を、好きになる男はまず居ないわ』

『アタシは学問や教養はダメダメだけど、『どうすれば自分が美しく在れるか』に関してはこの世で一番だと自負しているの』

『今のアナタ、美しくないわ』


『……なら言ってみてくれよ、どういう所がダメか』


『まずその服は何?シャツにカーゴパンツだけなんて有り得ないわ』

『私ならサスペンダーと帽子を使ってアクセントを付ける』

『そして化粧!ほぼノーメイクじゃないの!!それじゃ女を捨てて居るも同然よ!!髪もボサボサで纏めただけ!なってないわ!』


(よ、予想以上にダメダメやでいっちゃん……!)


そしてエレナはハルカを指差す。


『それに比べ!』

『服の組み合わせはともかく、そこのタヌキは最低ラインを満たして居るわ!』

『アイラインもしっかり出しているし、肌やたるみの手入れも怠ってない!白髪が消し切れて居ないけどそれは体質もあるし、また染め直せば良いだけ!後は生活習慣の見直しと減量が必要ね』

『けど私が一番気に入ったのは、美しくなろうと自分なりに努力した形跡が見える所よ。そういうの私、大好きだから』


エレナはミネラルウォーターのボトルを開けて、上品にそっと口を付けて言う。


『全く……どちらが男に好かれるか、なんて一目瞭然じゃない』

『一々悩むようなハナシじゃないわ』

『で……そこのサイコ茶髪。何故このレッドアイにオシャレや化粧のアドバイスしないのよ』


『そっ、それは……』


『優しさと甘さは違うし、甘さは彼女の為にならないわ』

『《美》にとって、妥協と甘さは大敵よ』

『そしてそこのフライフェイス……』


レイカはエレナに指を差され、キョトンとする。


『もし顔のヤケドを治療する気があるなら、アタシのスポンサーを紹介してあげる』

『貴女、この国一番のモデルになれる要素があるわ』

『まず立ち方と姿勢が非常に美しい。骨格にも全く歪みが無いわ。逸材よ』


「お姉さん、通訳お願いしやす」


「顔のヤケドを治療する気があるなら、モデルとしてのキャリアを手助けするって言ってるわ」

「国一番のモデルになれるって。良かったわね❤️」

「あと立ち方と姿勢が良くて、骨格に歪みが無いって」


「あー……ソレは多分剣術やってるお陰やな」

「姿勢や体幹が超重要なんやアレ」

「オトンに構えの歪みを直されたの、良かったんやなぁ……ありがと、天国のオトン」


そしてエレナはマルファの方を見て息を吞み、緊張しながら言う。


『……せ、先生』


『ん?なぁに?❤️(ニコニコ)』


エレナは目を逸らしながら頑張って口を開く。


『コ、コスプレとは言え、40過ぎてそのカッコはヤバいを通り越して狂気よ……』

『フリフリのミニスカートとそのリボンとか、もう見てるこっちがおかしくなりそう……』

『しかもお腹とか胸元出し過ぎだし、そのロリポップなメイクとか髪型とかもう夢に絶対出る』

『例えるならそう、超高級ステーキに工場から出る廃液を(まぶ)したような……』


《プリキュア☆コマンドサンボ!》


エレナは放り投げられ、窓を突き抜けた。


※1 ダンスが超上手い情熱的なおじさん。ボリビアは彼の名から取られている。


魔法少女は2人組が定番だよなぁ?

……しかし過去最高レベルのキツさですね

来る所まで来ちまった感じ


イチカとハルカは深い部分で少しギクシャクし始めています。

本人達さえも気付いていない所でですが。

いや、結構表面化しているかもしれない……


ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「次も期待している」「加減しろ」「参上というよりは惨状」「過去最高に強烈なコスプレ」「イチカの女子力が低すぎる」「たぬき最低限の化粧やケアしてたんだな」「面白い性格してるなエレナ」「減量頑張るんだよオラッ」「これからの展開に期待」「マルファが動揺するのは珍しい」「レイやん確かにスタイル良いし姿勢も良さそう」「エレナ、チャレンジャーすぎるだろ……」「プリキュア☆コマンドサンボ!」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。

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