ジンギスカン・ロワイヤル(前編)
なんて言えば良いのかな、もう言葉が……ごめん……
~翌日・昼~
~札幌市内・ススキノ~
~ジンギスカーン~
「ロースからタンを一通り?」
「はい。全種類の肉を一通りお召し上がりになってから、個別の注文をするスタイルをお勧めしています」
「ふ~~ん……まぁイイや」
「それを4コースで」
「あとプラスご飯大盛り4人分と、サッポロクラシックを瓶4本で」
「1コースだけで、結構量ありますよ……!?」
「皆食べ盛り&花盛りなんで」
「確かに皆様、女性の方にしては大きいですからね……」
「承知しました!ご注文ありがとうございます~~!」
(あのタバコ吸ってるヒト、超カッコいい~~!ホントは吸っちゃいけないんだけど、そんな事どうでもいい~~!❤️あっ、でもこのヒトの雰囲気にもやられちゃいそ~~!❤️キャ~~!)
女性店員はにへにへしながら、店の奥へと引っ込んでいく。
ハルカがおしぼりを広げながら言う。
「モテモテですなぁ、お二人さん」
「私には思い切りガンくれてましたけどね」
「デカパイで男受けしそうな同性には厳しいんだよ、女は」
「先生、見た目だけは大人しくて童顔だし、男が結構寄って来たタイプだろ」
「ほぼヤリモクか穴目的ですけどね~~」
「私にはもう婚約者が居るってーの」
「誰や?」
「そんな相手おったんかい、タヌキ」
「ふふふ……良くぞ聞いてくれました!」
「見せてしんぜよう!」
ハルカはスマホを取り出し、ロベールとツーショットを取った例の画像をレイカとアイカへ見せる。
「おぉ~~!やるやん!タヌキ!」
「絵に描いたようなカワイイ王子様やんけ!」
「えー……私、香坂・クリスティナ・一夏から、この件に関して訂正がございます」
「その写真はどさくさに紛れて撮ったタダのツーショットで、相手はただLANEの連絡先を交換しただけの取引相手です」
「このアラサーたぬきは不届きにも撮った写真をSNSに上げ、婚約者を自称したという経緯がありました。くれぐれもご承知下さい」
「前言撤回や」
「良く考えたら、コイツに婚約者所か彼氏も出来るワケなかったわ」
「危うく騙される所やった」
「私は分かってましたけどね」
「大人の玩具を部屋に撒き散らかすような女が、結婚出来るワケありませんから」
「ちっ、ちくしょぉぉ~~!」
「こいつら悪魔だ、悪魔!!」
店員が肉の乗った皿と、野菜を持ってくる。
そしてモヤシを、中央が盛り上がった鉄板の隅に乗せていく。
「鉄板の周りにはモヤシを先に乗せて行きます」
「こうする事で染み出たモヤシの水分が脂を吸収し、手元へ飛ばなくなります」
「へぇーよく考えてるなぁ」
「ありがとうございます」
「いえいえ❤️」
店員はハルカの方をチラリと見て、フッと鼻で笑った。
(コイツ、いま私のコト笑った!?)
(こうなりゃヤケ食いだ、ヤケ食い!高い肉ガンガン食って驚かせてやるからな!)
(今私は人生で一番金持ちなんだ!)
大盛りの白米と、肉、そしてビール瓶が運ばれ、イチカ達の前に揃う。
「乾杯の音頭は誰が取るんだ?」
「そりゃイチカでしょ」
「ですね」
「やな」
「え……」
「そりゃあイチカ居なかったら、あの鳥に勝てなかっただろうし……」
「というかもう実質的なリーダーだよね、私達の」
「私さ……こういうのがホント夢で……ずっと……したかったんだよ、こういうの……」
イチカは震えながら目元を押さえ、肘を付く。
「なんて言えば良いのかな、もう言葉が……ごめん……」
「私、本当は皆を纏め切れるか自信無くて、途中で空中分解したらと思うと怖くて堪らなかった……」
「誰かが死んだら、どうしようかって……だから今はこの奇跡をゆっくりと味わいたい……」
イチカの隠れた目元から、涙が溢れていた。
レイカはイチカの背中を擦る。
「いっちゃん、今日は目出度い席やから泣いたらアカンで」
「それにワイが泣かせたみたいやんか、笑顔笑顔」
「何人も女泣かせてそう定期」
「同意ですね、デリカシーという言葉が無いんですかね、ミナミには」
「こいつらホンマ……!」
イチカは涙を振り切り、同時にハルカが皆のコップへビールを注いで行く。
「「「今日、この日に乾杯!!」」」
グラスが宙でぶつかり合い、女盛りの宴が始まった。
~日高町某所~
~ヘイリーご一行~
『……このままだとホテル住まいも出来ません』
『かと言って本国にも戻れません』
『何か良い知恵をこの哀れなレッドネックへお授け下さいませ、元大学教授様』
『……客室を予約したらその時点でアシが付く』
『なら、何処かのマンションか民家を強引に頂戴するか』
『今時ロスのギャングでも考えねぇぞ、そんな事』
『倫理観も研究室へ置き忘れて来たか??』
『うるさいな』
『私は不動産屋じゃないんだ』
『……それより、このままだと手持ちの現金が尽きるぞ』
エスティアは、カツカレー弁当とステーキ弁当を交互に掻き込むリヴァを見て、ため息を付く。
彼女の周りには、既に空になった容器の山が出来ていた。
『う~~ん……余程日本のメシがお気に召したんだろうな……』
『つまらんギャグを言ってると蒸発させるぞ』
『このペースで行くと、4日後には手持ちの現金がスッカラカンだ』
『どうにかしろ、ヘイリー』
『カード使うとアシが付く、ってのがなぁ~~……』
『参ったぜ、ホント……』
空腹を知らせる大きな音が二人の耳に入る。
『空きました。お腹が空きました、ヘイリー……』
リヴァは赤面しながらヘイリーの袖を引き、追加の弁当をねだる。
エスティアは車の座席へ、意識を失ったようにもたれ掛かった。
『前言撤回だ、ヘイリー』
『明後日には全員飢えるペースだ』
『お前が運び屋を辞められなかった理由、今把握したぞ』
『……何処かのダンジョンに潜るか、それかカネを借りるしか……』
『エスティア。ユダヤ人ネットワーク使って金貸し探してくれよ』
『北海道に来ている奴を一人知ってはいるが、お勧めはしないな』
『文字通り身包み剥がされるぞ』
『ファック』
『もう何処かで野垂れ死ぬしかねーってのか』
『けど円が高かったらもっとヤバかったなー』
エスティアはスマホで投資用の為替アプリを開き、ヘイリーに見せる。
『……残念ながら両方とも価値が下がってる。対ユーロ比でも下落している』
『先日の騒ぎでアメリカの実力に大きな疑問符が付いた。少なくともダンジョンに関してはな……』
『アフガンみたいに撤退じゃなく、正面からの敗北だ。しかも相手がロシア人と来た』
『……もうドルは基軸通貨じゃ無くなったのか?』
『今はまだなんとかギリギリのラインで、ドルの幻想を保ってるな』
『しかし、次に何かあったらアルゼンチンペソ一直線だ』
『ウォール街にもギャングと運び屋が溢れるハメになる』
『……それはヤベーな……』
『ウォール街の連中なんて元からギャングと大差無い気もするが……』
『円に付いても同様だな』
『アメリカの軍事力や資源に依存してる体質から日本が脱け出せていない以上、どうしてもアメリカの実力が円にも影響を及ぼす。だが、日本のエリート達には独立心がまるで感じられない』
『プラスして朝鮮半島の大規模な紛争は収まる気配もない。世界史が大変動する一歩手前の状況だ』
『……やっぱ《黄金船事件》がキッカケだよな』
『あそこからケチが付きっ放しだな、ステイツは』
『……本当にそう思うのか?ヘイリー』
『その遥か前からアメリカの凋落は始まっていたぞ』
『特に学術の世界では顕著だった。いや、そこから始まったというべきか』
『……確かに』
『テレビに出て来る学者共、記事で喋ってる研究者共は浮ついた綺麗事ばかりほざいてたからな』
『しかも企業や富豪の見えない首輪が付いている、というオマケ付きだ』
『だから……私は自由に研究する為、他人から一切カネを調達しなかった』
『変なイデオロギーを私の研究に持ち込まれても困るからな』
『……そういや、何研究してたんだっけ、お前』
『宇宙考古学だな』
『とにかくカネの掛かる学問さ』
『ダンジョンの効率的な探索にも応用が利くと思っているんだが……この状況ではな……』
『ふーん……考古学の事は良く分からねぇけど、そんなインテリなのに何でハーレクインみたいなカッコしてんだよ』
『これこそがアメリカの自由だからな!!』
(色々と自由にハミ出してるけどな)
その時、またも大きな空腹の音が周囲に響き渡る。
リヴァは泣きそうになりながら、ヘイリーの服をグイグイと引っ張る。
『……とにかく、俺達には現金と食い物が必要だ』
『リヴァの少ない理性が保つ内に、何らかの結論を出さなきゃいけねぇ』
『ワープで銀行の金庫から札束や貴金属を盗む、ってのはどうだ?』
『これ以上俺の前科を増やす提案は止めてくれ』
その時、クエイドが鴨を腰にぶら下げ、シカを担いでやって来る。
『いい具合に肥えているのが獲れた』
『皆で食べるぞ』
『えーっと……許可とかは取ってないよな、それ……』
『戦場では何よりも生存が優先する』
『ヘイリー、鴨の羽を毟れ。俺はこれから鹿を解体する』
『もう戦争は終わったぞ、ランボーかお前は……』
『つーかすっかりこの土地に適応してやがるな……』
『元デルタなら当然か……ガッツリ仕込まれるって話だしな。……しゃあねぇ、手伝うよ。リヴァが泣き出さない内に調理しようぜ』
リヴァはヘイリーに頬をくっつけながら言う。
『ヘイリー、ヘイリー』
『あの鹿、角が違います』
『ああ、アレはエゾシカ(※1)だな』
『アメリカやカナダとのは種類が違うんだよ』
『ヘイリーは色んなコト知ってる、知ってます』
『昔から本読んだり色々勉強するのが好きだったからな』
『家庭の事情がアレ過ぎて、ハイスクール出たら軍隊行くしかなかっただけなんだ』
『まぁ、いきなり将来はマジシャンになるって言って、アル中のオヤジとケンカになった俺も悪いんだけどさ……』
『何する積りでした?ヘイリー』
『ベガスでショーをやりたかったんだよ』
『アパートでも幾つか手品を見せたろ?アレを大人数の前でやりたいのさ』
『夢、夢、……その為の大学……軍隊……お金……』
『でも、もう、もう……私、私のせい……私の……』
ヘイリーは涙ぐむリヴァの頭を撫でる。
『もう良いんだって。気にするなよ』
『こうなったらこうなったで、別の方法を考えるさ』
『ハラ、減ったろ?一緒に鴨の羽を毟ろうぜ』
リヴァは頷き、鴨の首ごと軽く毟り取った。
『上手ですか?私、ヘイリー!』
『……ああ!上手だ!その調子だリヴァ!』
(……どうせ後で捌くから良いか!)
一方、クエイドは慣れた手付きでエゾシカを解体していく。
『……刃を入れてみるか?エスティア』
『や~~ん❤️』
『私、ナイフ持つのこわ~~い!❤️』
『一度に何百人も殺せるクセに刃物持てない、ってどう考えてもおかしいだろ……(ボソッ)』
『なんか言ったか?』
『いえ、なんでもございませんぜ、教授』
クエイドは熟練の職人の如く、淡々と解体の処理を続けて行った。
※1 日本固有種のシカ。天敵のオオカミが居なくなり、絶賛繁殖中。しかし、乱獲されたりされなかったりで結局増加し、農業被害や交通事故などそれなりの問題となっている。
クエイドはシャープシューティング等で鹿狩りの経験が有った為に、スムーズにシカを狩れました。
この人は狩ろうと思えば、多分何でも狩れる。
何せ狩りの経験が一般人とは段違いな上に、血魂で元から高い身体能力や感覚が更に底上げされています。スナイパーではヴェルナールとこの人がツートップだと思います。
シャープシューティングとは:
エサなどを用い、群れを丸ごと捕獲するやり方。アメリカで開発された狩猟法です。
話は変わりますが、エスティアはロマサガ2Rで言う、軍師的な役割ですね。
元々大学の学者で、光属性の術が得意な辺り……
クエイドは大体帝国猟兵的な役割です。使用武器に困ったら弓を使わせろ。
こう考えると、この4人結構バランス取れてるなぁ、と……
最悪ヘイリーのワープで移動出来るのが本当に強すぎる
イチカのパーティーはロマサガ2Rで例えると、大体こんな感じ。
フリーファイター(女):イチカ
帝国猟兵(女):アイカ
モール:ハルカ
イーストガード:レイカ
最終戦までタフに戦い抜ける構成かな……
イチカが途中で最終皇帝化したらまた面白いけど。高っちゃん入れても面白い。
マルファのパーティーは例えると、以下こんな感じ。
術レベル100フリーメイジ(女):マルファ
インペリアルガード(男):ヴァヴィロフ
イーリス:エレナ
移動型砲爆撃拠点:クヴォズジーカ
アーマードコア:ヤストレブ
二人は世界観違いますね……ポストアポカリプス的な……
マルファお姉さんはローズやデイジーに結構似ているイメージです。
どストライクすぎて、ついデイジーを皇帝にしちゃうんだよね。3D班に一生分感謝したい。
そしてヘイリーのパーティーは例えるとこんな感じ。
ジェラール:ヘイリー
技レベル100帝国軽装歩兵(女):リヴァ
軍師:エスティア
帝国猟兵(女):クエイド
やはり、かなりバランス良いですね。ヘイリーは何かあったジェラールが、成長した感じをイメージしてます。
対応力と柔軟性が高いパーティーだと思います。
ここにホーリーオーダーみたいなのが加わったら、本当に強い。
因みに以下シルバーステイシスのイメージ:
ヴィクトール:ベルナルド
帝国猟兵(女):ティエラ
シティシーフ(男):ベルトラン
踊り子:ミューゼ
帝国重装歩兵:ユルゲン
結論から言うと、ラピッドストリーム専用。
しかもまだ控え居ます。お楽しみに。
お読みくださりありがとうございます。
「面白かった」「続きが気になる」「更新頑張れ!」
「ジンギスカン食べたい!」「白米食べたい!」「ビール飲みたい!」「仲良くなったなぁ、この4人……」「イチカはやっぱり根がよわよわ」「皆の前で明らかになるたぬきの前科」
「アメリカ組がサバイバル生活始めてて笑う」「なんだこの可愛い生き物」「エンゲル係数高すぎる」「エスティアの知性が想像以上に高い」「そして想像以上に倫理観が無い」「ヘイリー面白い目標持ってんな」「クエイドが仕事人すぎる」「鹿肉や鴨肉も美味そう」「ツッコミ冴えてるな……」
「ロマサガ2Rハマり過ぎだろ、作者」
と一つでも思っていただけましたら、ブクマ・評価いただけると励みになります。
よろしくお願いいたします。




