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スターゲイザー富良野

観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=SC6fWmtzGf0&ab_channel=spitzclips


~旭川上空~


《ケストレル》と《レイヴンズマハト》は激しくぶつかり合い、鍔迫り合いを繰り返す。


戦友(クレイエル)!!空を随分狭く使っているな!!》

《俺との闘いよりアメリカ人との契約が大切か!!》

《悲しいぞ!!》


《地上ではもう戦線の崩壊が始まっている……》

《空で私が退けば総崩れまで一直線だ……今の光景は、ドニプロ市の上空で見た状況と全く同じ……!》

《まさか……!!》


《そうだ!!戦友!!》

《あの作戦を立て、裏で指揮していたのは我等が《魔女》だ!!》

《ならばこの後の展開も分かっているだろう!!戦友!!》


《避難民をも巻き込んだ、重火力とドローンによる徹底的な追撃……》

《《魔女》は旭川一帯を火の海にし、北海道侵攻の前線基地にもする積もりか……!!》


そうだ(ダー)!!》

《今度は()の比じゃないぞ!!》

《何故なら、今の我等にはダンジョンアイテムがあるからな!!》


レナは拳を握り締めながら、大音量で通信に割り込む。


《ぜっっったいに繰り返させない!!あの惨劇だけは……!!》

二度も(・・・)故郷を失うなんて、絶対にイヤ!!!》

《《電子妖精ディープ・ダイブ》!!対価を払うわ!!貴女の真の力を貸して!!!》


《俺と戦友の勝負に水を差す気か!?少女!!》


《うるさい!!このオーバードバカ!!》

《私はもうこれ以上()を見たくないし、故郷を失いたくないだけよ!!》


《ケストレル》のブースター途切れ、オレンジ色の炎が止まり始める。


《なっ……!?機体のハッキングだと!?》

《《ケストレル》のハックなど……一体どれだけの対価を払った!!少女!!》

《通常兵器やレーダー機器の比では無いハズだ!!》


《……人間性と身体性》

《私はこのアイテムの力を引き出せば引き出す程、電子妖精に精神と存在が近くなっていく……》

《やりすぎれば、私の肉体は現実に存在出来なくなる……》


《レナ……!》

《何故だ……!》


《もう涙は見たくない……笑顔だけを見ていたいから》

《悲しさを味わいたくない……嬉しさだけを味わっていたいから》

《人間を嫌いになりたくない……私は人間……そして、指揮官が好きだから》


《──レナ》

《北の空を見ていろ、私は今から流星になる》

《《レイヴンズマハト》……応えろ!!私の心の底から溢れ出す闘争心と想いに!!》


黒い機体に青い光が集まり、可視化されたエネルギーが空を流れる川の様に収束していく。


《《レイヴンズマハト》第二段階起動!!》

星を視る者(スターゲイザー)!!》


《なんと……!!戦友……!!》

《遂に星になってしまったか……!!》

《その光!!余りにも美しいぞ……!!》


刹那、一瞬で接近してきた《レイヴンズマハト》のブレードが《ケストレル》の肩を貫き、夜空を突き抜けて行く。


《オオオオオオオッ!!!》


《最高だァーーッッ!!!戦友ゥゥゥー!!!》

《今、俺達は流星になっているぞォーーッ!!》


ブルーとオレンジの流星が混じり合い、南西の方向へ夜空を駆け抜けて行く。



~富良野西岳・登山道~


「おい、狂犬」

「何で山に来るんや、いっちゃん駄目()うたろうが」


「……大丈夫です。お爺さんが行きそうな所、心当たりがあるんです」


「なんやて?」

「そいなら、最初から街ん中探し回る必要無かったやんけ」


「……お爺さんは必ず、360度星の見える場所で最期を迎えようとする」

「富良野市内からなら、今は夜空が綺麗に見えます」


「……説明プリーズ、狂犬」

「ジイさんは一体何を考えとんのや」


「お爺さんは山の神(・・・)の為に、この山を護ってました」

「そこまでは聞いてますよね?」


「おう。神さん(・・・)の為に生贄まで(こしら)えたっていう、物騒なハナシやったな」


「まさにその神《・》なんですよ」

「私も道中で気づいたんですけど」


「神が?……かみ、カミ……まさか」

「……ンなアホな。言葉遊びかいな」


「キーワードは《嫉妬》でした」

「最初、お爺さんの脳内では、山の神=女神だと思ったんです」

「しかし、家族を失ったという話に、奥さんの話が全く出て来なかったんです」


「ジイさんの中では、まだ奥さんは生きとるって事か」

「山の女神に形を変えて」

「つー事は……」


アイカは何かを見つけ、早足で登山道を登りだす。


「そう……この山はお爺さんと奥さんの、思い出の山だったんですよ」


「……泣かせるハナシやわ」

(そら勝手に大麻やケシなんか育てた日にや、激怒するわなぁ……)

(しっかし、ドコから北海道へ流れて来とんのや、あの大麻草とケシは。こらキチッと調べなアカンで……)


アイカは木の下で、草木を被りながら横たわる老人を見つける。


「お爺さん……!」

「大丈夫ですか!?」


「鳥は……どうした……」


「……狩り(・・)ました」

「仲間と一緒に」


「……そうか」

「流石はマリカ(・・・)だ……」

「相変わらず頼もしい……」


レイカは、老人の脇腹と太腿から大量の血が染み出ているのを見つけてしまった。


(アカン……もう致死量や、この量は……!)

(助からん……!)

(それにアイカを自分の妻と間違えとる……)


老人は息も絶え絶えに、狭い空を睨みながら言う。


「連れて行って欲しい、星が……流星が見えるあの場所に……」

「約束のあの場所に……」


アイカは無言で頷き、老人を背負う。


「……手伝うか?アイちゃん(・・・・・)

「キツいで、山道」


彼女はレイカの問い掛けに、首を横に振る。


「……そうか。ほな荷物は持ってやるわ」

「後ろから見てるから、頑張りぃや」


レイカはアイカと老人の銃を肩に掛ける。

アイカは息を上げながら、老人を背負って山道を登っていく。


(私は初めて……人を救おうとしている……)

(これが命の重さ……そして、私の背負っている十字架の重さ……)

(私が軽んじて来てしまった……尊さ……)


彼女の額に汗が滲み、目尻に涙が溜まっていく。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


アイカは嗚咽を漏らしながら、老人を背負ってフラフラと山道を登っていく。

老人は彼女の背で呟く。


マリカ(・・・)……大切な事を思い出したな……」

「狩りの本質とは……感謝し、敬い、尊ぶ事……」

「それを忘れたら、ワシ等猟師はタダの殺し屋じゃ……」


「……はい……!」

「っ!?」


アイカは石に躓き、老人ごと地面に倒れる。

だがレイカは優しい目で、アイカが立ち上がるのを見ていた。


(アイちゃん……オマエ、一体どれだけ重いモン背負っとんのや……)

(いっちゃんもタヌキもそうやが、色んなモン背負い過ぎや……)

(オマエ等は荷物を捨てて暢気に人生送れる程、器用やない。でも、そんなオマエ等がワイは大好きや)


「私も一緒に背負いたくなったわ、その荷物……」


レイカは人知れず呟いた。

そして──


「はっ……!はっ……!はぁっ……!」

「着いた……星の視える場所……!」


レイカはアイカの頭を撫でて言う。


「よう頑張ったわ、アイちゃん」

「爺さんに星見せたりや」


アイカは老人を地面に仰向けに寝かせ、星空を見せる。


「おお……ありがとう、マリカ……」

「流星の前で、お前を生涯賭けて愛すと誓ったな……」

「流星が、臆病なワシの背中を押してくれた……」


老人は懐から鍵を取り出しながら言う。


「マリカ、あの小屋を頼む……」

「ワシはそろそろ山の神に連れて行かれる……」

「しかし、夜空が澄み渡っている……」


アイカは老人の手を握り締めながら、鍵を受け取る。

その時──


「ウ、ウソやろ……!?」

「二つの流星が混ざって流れとる……」

「ホンマに山の神おったわ……」


老人はブルーとオレンジの流星に向かって、震えながら手を伸ばす。


「皆で……迎えに来てくれたのか……」

「ワシは幸せモノじゃ……」

「ありがとう、アイカ(・・・)……」


アイカの目から涙が溢れ、夜空へ旅立った老人の顔にポタポタと落ちて行く。


「私こそ……本当に……本当にありがとうございました……!」


レイカはタバコを取り出して手を震わせながら火を点け、二つの流星を涙だらけの三白眼で、ゆっくりと追い掛けた。


スピッツは名曲ばかりや……

イチカはサカナクションと洋楽(メタルやロック含む)が好きです。アイカはテクノ、ハルカはアニソン好きです。

レイやんはようつべや音楽アプリで気に入ったゲーム音楽を、mp3にして集めています。結構マメでコツコツな性格なんです、レイヤん。増やそうとして、ドカンとギャンブルで溶かすけど。


コツコツドカンがレイやんの魅力だと思う。


スプシ更新:

https://docs.google.com/spreadsheets/d/18yCj9B-CZEpJGIDICTLBSG4K3ASfzvPI7MeKN9sNjkY/edit?usp=sharing


スプシで分かる通り、レナちゃんは16歳で、クレイエルは29歳です。

かなり危ういぜ、この関係と年齢差は……本当に際どい関係です。

ただ、乗り越えたら一気に結婚まで行く感じだとは思います。レナちゃんは人生プランが結構しっかりしてます。


これの逆バージョンを、アラサーたぬきはやろうとしています。

しかも関係性ゼロからいきなりやろうとしてますからね、これはある意味で中々スゴいですよ。

人生プランがかなり破綻してます。


ただ、たぬきはセルフネグレクト気味に見えますね、イチカと同じく。

余り自分を大切にしていない、自己評価が低い、という意味では同類だと思います。

アイカが居ないと、イチカハウスは速攻でゴミ屋敷兼物置スペースになります。


オーバードバカは道北の流星になりました。

気が済んだら地上に帰って来るでしょう。

しかし、戦闘能力と状況判断力は流石《魔女》の部下です。


次回と次々回はお仕事の後始末と報酬タイムです。

イチカは得て、マルファは失いました。

その次は新章に入る予定です。


お読みくださりありがとうございます。


「面白かった」「続きが気になる」「更新頑張れ!」「泣いた」「唸らされた」

「流石は黒い鳥だ……」「マルファお姉さん業を背負い過ぎだろ」「戦友はバトルジャンキーすぎる……」「レナちゃんの覚悟凄い……」

「爺さん、安らかに旅立て」「アイカの事が少し好きになった」「レイやんの彼氏力高い」


と一つでも思っていただけましたら、ブクマ・評価いただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。



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