Without Me ダンジョン
観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=YVkUvmDQ3HY&ab_channel=EminemVEVO
~イチカの新居~
~浴室~
アイカが泡をイチカの背中に付けながら、微笑む。
「うわぁ……すごい綺麗な背中のラインと筋肉……」
「食べちゃいたいです♡」
(こんな綺麗な背中をアザだらけにしたあのタコは、タコ焼きになって正解ですよ!)
それはどっちの意味で言ってるんだ?
冗談と本気の境目もわからんぞ。
「結局、あのまま寝ちゃいましたね♡」
「イチカさんの腕枕、とても気持ちよかったです♡」
お陰で腕がシビれたぜ。
これから毎日シビれそうだけど。
「……そういえば、アイカってオリンピック選手候補だったんだな」
「……クレー射撃か?」
「ええ。メダルは確実だって言われてたんですけど……」
「色々あって、辞めちゃいました☆」
イチカは少しだけ振り返り、アイカの顔を見た。
何で辞めたんだ?とは聞ける顔では無かった。
(人生、色々あるよな……)
(まぁそのウチ聞けるだろ……)
イチカは少しだけ息を吸って言う。
「前も頼む、アイカ」
「イヤか?」
「えっ……いや、喜んで、イチカさん!♡♡」
アイカは自分の胸を彼女の広い背中に押し付けながら、乳の下に手を潜り込ませていく。
一体なんのプレイだこれは。
アイカはあやしくも繊細な手つきで、イチカの腹筋や股関節に手を伸ばしながら言う。
「……イチカさんは大学出てたって言ってましたけど、どこの大学出たんですか?」
「え?東大だけど」
「それがどうかしたか?」
「うえっ!!?」
「うそぉ……有名な塾に特待生で行ってたとか?」
「いいや。独学」
「教科書と参考書をパラパラ~っと読み込んで、過去問を何度か繰り返し解いただけ」
「スゴ過ぎます……」
「イチカさんは頭も良すぎて、私の脳が溶けそうです……!♡」
「ちなみに何を学んでいたんですか?」
「工学部で建築学んでた」
「死んだ父親が建築家だったんだ。別にどこの大学でも良かったけど、母親を早く安心させたかった」
「だから日本で一番の大学行けば平気だろ、と思って受けたんだよ。そしたら受かった」
イチカはシャワーの取っ手を持ち、アイカの身体から湯で泡を流していく。
「だから一級建築士持ってるんだよ。あと電工とか冷凍機械とか宅建とか施工管理技士も持ってるぞ。フォークもクレーンも運転出来るし、溶接も出来る。大型トラックの運転とか楽しいぞ?」
「どうだ?プレッパーらしいだろ?」
アイカはイチカの背に抱き着いたまま、俯いて呟く。
「イチカさんは、私が止まっていた間も進んでいたんだなって……」
「私は夢を諦めてから、ずっと時間が止まったままだった」
だが、イチカはアイカのしなやかな手を取って言う。
「なら、これからお前の時計を動かせば良いだろ」
「その手伝いぐらいは、私にもしてやれるさ」
「イチカさん……」
「風呂、上がるか」
「少し寝たら、装備整えてダンジョンへ行こう。途中、コンビニで何か好きなモノ買ってやるよ」
「はい……♡」
~4時間後~
「おぉぅ……よく寝たなぁ……」
「マジで疲れが溜まってたんだな、肩がなんとなく痛いぞ」
「もう私も27だからな……」
横で寝ているこの女は一体何歳だろうか。
同い年ぐらいか。だが、互いにあまり運の良い人生とは言い難かったようだ。
イチカはスマホで、アイカの事について調べ始める。
(『天才射撃美少女、金メダルは確実』……)
(『突然のオリンピック代表辞退、原因は公表されず』)
(『空港で涙!一体何が!?』)
イチカはスマホの画面を閉じる。
「……苦労したんだな、アイカも……」
「競技人生を捨てざるを得なかった何かが、コイツにはあった」
「皆……何かを失って、この北の大地に来ているんだろうな……」
アイカの頬には僅かながらに、涙の跡が見えた。
~40分後、国道沿いのミニストップ~
「美味しいですね!このベルギーチョコワッフルアイスクリーム!!」
「はい!あ~~ん♡」
イチカはアイカが差し出したアイスクリームにかぶりつく。
「お。美味いな!」
「もうアイスクリームはずっとコレで良いだろ」
そして、イチカはタバコを取り出して火を点け、地図を広げる。
「う~~ん……検問は回避したいんだよなぁ……」
「多少時間は掛かるけど、迂回ルートで行くか」
その時、一台の黒いバンがやってくる。
20前後の男達が騒ぎながら、何やら自撮り棒で撮影していた。
「……なんだありゃ」
「コンビニには何も面白いモンねーぞ。深夜の客層が面白いのは都会だけだ」
「……Z世代ですかね」
「私はなんか、あまり好きじゃないんですよ」
「スマホばかり見てるくせに、何か万能感に浸ってるお子様感がキツいです」
「エミネムもラップであの世代ディスってたしな」
「あの偉大なアーティストがディスらない存在自体、存在するのかどうかは良く分からないが」
二人が車に戻ろうとすると、Z世代達が話し掛けて来た。
「そこのお姉さん達、今からドコ行くの?ダンジョン??」
「俺等もダンジョン行くんだけどさ、一緒にイかね?」
「ダムのダンジョンは大したコトねーって、動画でひろ〇きが言ってたし」
ひ〇ゆきの言うコトなんかアテにして、ダンジョンに来てんじゃねーよバカ共。
アイツはフランスから適当な事言うのが仕事だろ。
ひろゆ〇の言うコト、鵜呑みにする奴等全員バカです。
「悪いけど、予定あるんだ」
「さっさと家に帰って勉強しろよクソガキども」
「就活失敗するぞ。それか資格の勉強でもしてろよ」
若者達の中で大柄な男がイチカを睨み、詰め寄って来る。
「エラそうな事言ってんじゃねぇよ、年増」
「動画の取れ高増やす為には、女が必要なんだよ」
「動画撮った後は、じっくり遊んでやるって」
イチカは若者にタバコの煙を吐きかけて言う。
「テメェなんかが遊び相手になるワケねーだろ、ダボハゼ」
「その汚ねぇ耳ハスられたくなければ失せな。今の私には何のしがらみも無いから、何でも出来る」
「ダンジョンまでお前を車で引き摺り回しても良いんだ」
若者達は一斉に笑いこけた。
アイカの目つきがみるみる変わり、ドアを開けて銃を取ろうとする。
「やめとけ。この場所は店の防犯カメラに映ってる。こいつ等を撃ち殺したら、サツに居場所が見つかるぞ」
「お前は車の中に入っておけ」
「私はこれからこいつ等をバカな親達の代わりに、教育してやる」
アイカは頷いて、ササッと助手席の中に飛び込んでドアを閉めた。
大柄な若者は彼女を引き摺り出そうとしたが、イチカに手首を掴まれる。
「悪いが、治療費は自腹な」
若者の一人は視界が回転し、頭からコンクリートに叩きつけられる。
彼は泡を吹き、身体をピクピクいわせて痙攣していた。
「あ。やべ……これ正当防衛だよな??」
「しっかし、カンが戻らないなぁ~……」
金髪の若者は動画でその様子を撮影していた。
イチカは一気にその若者との距離を縮めると、彼から自撮り棒を取り上げる。
そしてスマホを剥ぎ取り握り潰して、念入りに踏み潰した。
「今すぐお家に帰った方が良いぞ」
「さっさとソイツを病院に連れて行きな。早く(病院)連れて行かないと、一生車椅子になるぞ、ソイツ」
イチカは車に乗り込み、恐怖で委縮した若者達を後目に、その場を去って行った。
~静内ダムダンジョン入り口~
「……ったく、今時のコンビニはどうなってんだ」
「おちおち休めもしない……」
「全くですね!」
「それにしても、イチカさん相変わらずカッコよかったですよぉ……♡」
「……アイツらが喧嘩慣れしていない、トーシロのバカだっただけだ」
「それに、アイツらを撃ち殺そうとしてただろ、アイカ」
「んー……まぁ、もう、そのつもりでした」
「でもイチカさんのお陰でなんとかなった、って感じです♡」
イチカは鉈を振りながら、階段の下に怪しく広がる暗闇に眼を向ける。
「まぁ……ヘタにトーシロから喧嘩買うと、犠牲が出てサツに感づかれるから、暫くは大人しくしとこうか」
「……しっかしどうすっかな」
「先にマッピングからやって行くか」
「ですね。ダンジョンって言うからもっと神秘的な洞窟にあるかと思いましたけど、ダムの壁の上に入り口があるなんて……」
「なんか随分現代的で、まるでダムの保守要員みたいな気分です」
「まぁそんなもんだろ。ここは現代日本だぜ?」
「さ、ダンジョン初挑戦だな!」
イチカとアイカは暗い階段を降りて行った。
南海トラフ地震に備え、お勧めのグッズを紹介します。
偶にはプレッパーズらしい事書かないとなと……
①ポータブル電源
超超必須アイテムですね。災害時だけでなく、アウトドアにも使える優れものです。
太陽光パネル付きは正直パネルの能力が不安定なので、あまりお勧めはしませんが、自分は基本的に冗長性を重視するので、それを持っています。
出来れば、パソコンとスマホ、両方充電出来るタイプのが良いかと。
②水
これなしには生きて行けない。
お勧めとしてはウォーターサーバーの契約ですね。
何故なら、まとまった量の水が毎月届けられ、定期的に補充されるからです。
自分で買って帰っても重くてしゃあないねん。でも、頑張って備蓄してます。
③塩飴、肉系・魚系の缶詰、チョコレート、アルファ米、ビタミン錠剤
特にビタミン錠剤と塩飴は必須です。
避難所に行く人はまず栄養が偏る。東日本大震災では握り飯2個とかパン一つとかザラだったと聞きました。
炭水化物だけが続けば、確実に体調を崩します。しかも、寒暖の差が激しい気候になってきているので余計にです。去年に比べて、夏の気温は平均で0.8℃上昇しています。あくまでも一部地域の統計ですが。
でも、カレーを食べてる救助要員の自衛隊員を責めるのはお門違いです。彼等はそもそも活動エネルギー消費量と必要栄養素の量が違うんだ。
タバコも吸わせてあげて下さい。
死体を見続けるのは貴方の想像以上にキツい事です。
④紙の本
普段無修正エロ動画見ている人は、災害時オナニーが出来なくなると思います。
なので、幾つかオナネタを確保しておく事をお勧めします。
妄想だけでシコれる変態はノクターン行って下さい。
というのは冗談で、ヒマつぶしには絶対必要です。
なにより電力も体力使わないし、漫画とかなら考えなくても良いから、脳内糖分の節約になります。
自分はドストエフスキーの作品やトルストイの作品をストックしてます。他にも専門書とか色々とあるんですが、そういう時だからこそロシア文学が良いというか。
ちなみに、これを書いている時にも地震来ました。
時代がプレッパースタイルを求めてる。
まさか、今来るとは……
けど、だからこそなる意味あるぜ、プレッパーズ。
あと、ミニストップはベルギーチョコワッフルアイスクリームを復刻してくれ。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
「自分もアイカに身体を洗って貰いたい」「イチカが想像以上にインテリだった」「イチカに危うく惚れそうになった」「資格は大事」「深夜のコンビニで食べるアイス好き」「ロマンもへったくれも無いダンジョンだな……」「おすすめグッズ紹介助かる」
と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。