最終女騎士アルマゲドン in 旭川(後編)
観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=RycVMzNnt0c&ab_channel=KeigoHoashi-Topic
~旭川市・北永山駅周辺~
『少将!!』
『報告があります!!』
『……手短に』
『今私はとても気が立ってるから』
『は、ハッ……!』
マルファは、氷漬けにした傭兵を蹴り倒して砕く。
『先程、ハバロフスクの極東軍管区司令部より緊急通信がありました!』
『青森の三沢基地から大型の機体が発進し、旭川に向かって直進していると……!』
『──!』
マルファは通信機を取り出し、チュグエフカ基地で待機しているある男へ連絡を掛ける。
『ヤストレブ大尉!!』
『三沢から《黒い鳥》が発進した!!今すぐ出撃し、これを撃滅なさい!!』
《了解!!》
《待っていた!!この瞬間を!!》
~ウラジオストク・チュグエフカ基地~
ブラックメタル色の逆足が鈍く光り、背部からオレンジ色の炎が噴出する。
射出カタパルトから整備員が離れ、機体は前傾姿勢を取る。
《戦友!!待っていろ!!》
《また戦場で会えるとは……俺達は運命の糸で結ばれているのかもしれないな!!》
《ハハハハハ!!また奏でようじゃないか、美しい詩を!!》
《《ケストレル》起動!!》
《目標!!戦友!!》
鋼鉄の隼は一気にレール上を加速し、宙に飛び立つ。
《加速!!》
《全進全力最大加速だ!!》
《ケストレル》は一気に加速し、あっという間にウラジオストクを離れていく。
《マッハ11、マッハ12、マッハ13……最高だ!!!》
《この身体の芯まで締め上げるかのようなG!!堪らないぞ!!》
《絶頂しそうだ!!だが戦友に逢うまでは我慢だ!!ハハハハハ……!!》
~札幌市・北部方面総監部~
「北海道近海のEEZ(排他的経済水域)に向かって超高速で移動する物体を確認!!」
「大きさからして……ミサイルではありません!!航空機……いやこれは……!?」
「ダンジョンアイテムだ……!」
「しかもこのルート……旭川か!!」
「高射砲部隊に連絡を!!直ぐに迎撃を!!」
「目標物体はマッハ20で移動中!!」
「展開、間に合いません!!」
「い、一体何が向かって来ているというんだ……!?」
~旭川市上空~
エレナはギリギリでリヴァの攻撃を避け、背後を振り返る。
《アヴァロンカリバー》のビーム攻撃で背後の山が吹き飛び、半円状に抉れていた。
『……ッ!?』
『こんな馬鹿げた威力、先生の攻撃でも見た事が無いわ……!』
『素早い乙女、極光ユキウサギ』
『綺麗な夜空、遠くまで視える山』
『山、北、西、春、酒、笑顔、私も笑顔』
リヴァは落下しながら回転し、空中を蹴ってまたエレナに迫る。
『なっ、なんなのよぉ~~っ!?この女はぁ!!』
『《極光乙女レギンレイヴ》!!この女を撃ち落としなさい!!』
『レッド、レッド、グリーングリーン』
『スラッシュ、スラッシュ、セイバー』
エレナが放った極光のレーザーは、リヴァの《アヴァロンカリバー》によって真っ二つにされる。
『~~っ!?』
『ごっ、合流よ!!先生と合流!!』
『こっ、これは撤退じゃないんだから!!先生!皆!ごめんなさぁ~い!』
エレナは凄まじいスピードで、マルファの元へと飛び去って行く。
『チェイスチェイス、ヴァルキリー』
『野に花、草むらの蝶、街の公園、お揃いのマフラー』
リヴァは空中で向きを変えると、ミサイルのように宙を蹴り、ビルを粉砕しながら着地する。
彼女はエレナを追い掛けながら、地上を走り抜けて行く。
『構える構える、ライフル、ハンドガン、道に座っていただけ』
『当てられてライト、追われてパトカー、入れられて病院、つらいつらい、かなしい……』
『助けて助けて、誰か』
リヴァは涙を流しながら、射撃を浴びせてくるマルファの部下達をなます切りにしていく。
途中で歩兵戦闘車が出てきたが、彼女は駆け上がりながら車両を両断する。
『……!』
『……全員下がりなさい。私が相手するわ』
爆発に気付いたマルファは《魔勇剣グラデニエッツ》を抜き、向かってくるリヴァを遠くから見据えた。
爆炎の中からリヴァは飛び出し、マルファと目を合わせる。
『ウィッチ!!ウィッチ!!アイスアイスアイス!!』
『苦しみ苦しみ!嘆き嘆き!!絶望!!リベンジ!!』
『一緒に帰る!スプリングフィールド!ヘイリー!!』
『あらあら……可哀想、とは言わないわよ』
『私の部下を殺し、私に刃を向けたのだから』
『《盛装》、私を戦装束に飾りなさい』
マルファの服が変形し、彼女の肌へと格子状の隙間を作りながら所々穴が空き、スリットの入ったクラブウェア(※1)のように張り付いていく。
『ふふふ……私、綺麗でしょう?狂女騎士さん』
『これでも40超えてるのよ?』
『《盛装》が言っているわ……貴女の肉が欲しいと』
リヴァの《アヴァロンカリバー》とマルファの《魔勇剣グラデニエッツ》が激突し、凄まじい衝撃波が周囲に飛び渡る。
二人は鍔迫り合いを離し、まるで踊るように剣を重ねていく。
~旭川上空~
《巨大化した《魔女》の部下を確認》
《これから攻撃を開始する》
クレイエルは上空から彗星の如く、ロシア人の軍勢に向かって落下して行く。
《《レイヴンズマハト》ブースト全開。武装起動》
《レーザーブレード展開》
《指揮官!助力するよ!》
《《電子妖精ディープ・ダイブ》起動!!》
マルファの軍勢は同時に通信障害に襲われ、レーダーにも何も映らなくなる。
《レイヴンズマハト》は巨大化したヴァヴィロフの頭上から急降下し、タテに回転しながら斬り掛かる。
『おお……!いきなり切断プレイとは!!』
『やはり戦場は堪らない!!』
ヴァヴィロフは腕で回転斬りをガードし、火花の滝が流れ出した。
『──!』
『このタイミングしかない……!』
『《オリハルコンドーム》起動!』
地面から金属の棘が無数にせり出し、サボテンのトゲのよう飛ぶ。
棘はクヴォズジーカの放ったミサイルやロケット弾を、次々と迎撃しては撃墜する。
『流石ね、CIA』
『私を恐れないからには、恐れないだけの備えをして来ている』
『この狂女騎士といい、黒い鳥といい、その防衛アイテムといい……』
マルファはリヴァと斬り合いながら、笑い声を上げ始めた。
『ぅふふふふふ……!!』
『つまり!ここで勝てば!貴方達の全てを奪えるという事よ!!』
『あぁ……ナスターシャ見てて!!先生、死ぬ気で頑張るから!!』
リヴァは何かに感づき、一瞬でマルファから距離を取る。
『《バーバヤーガの盛装》二段階起動……』
『《深き闇の魔女》』
マルファの足元から影が周囲に伸び、無数の黒い腕がリヴァへ向けて襲い掛かる。
『シャドーシャドー、ロングロング、アーム』
『聞く、聞く、アヴァロンカリバー』
『闇、闇、信念、覚悟、犠牲、魔女、愛、愛、愛、愛……』
リヴァは黒い腕を躱しながら跳び上がると、空中をバックステップで撤退していく。
黒い腕の群れはリヴァを追いつつ、市内の中心に向かって突入する。
『見てなさい、ナスターシャ』
『貴女を焼き殺した者の仲間達が、闇に握り潰されて死んでいく様を』
~旭川市内・神楽山~
『……!なんだあの黒い手は……』
エスティアは街を覆い尽くす、無数の闇を見て呟く。
『《魔女》だ。遂に本気を出したか……』
『最早戦線は保たないだろう……』
クエイドは市街地に向かって軽く十字を切る。
『……しかし、魔女が本気を出す程の手駒……こちらに残っていたとは思えないが……』
『……リヴァだ』
口と鼻と目から血を出し、横たわっていたヘイリーが呟いた。
二人が驚いて、ヘイリーの方を振り向く。
『理由は……分からねぇ……』
『だけど……アイツは生きている。そして、近くに居た……』
『そして、俺を捜し……逢いに来てくれた……』
『説明しろ!アル中男……!』
『リヴァは単なる人質だったんじゃないのか!?』
エスティアがヘイリーに詰め寄る。
ヘイリーは息も絶え絶えに答える。
『……リヴァはアメリカ最強の戦力であり、かつ秘密兵器だ……』
『俺なんかじゃ無い……』
『現場でこの事を知っているのは、俺とあのクソ眼鏡だけだ……』
クエイドがヘイリーを抱き起こす。
『リヴァが持っているのは《アヴァロンカリバー》……』
『《ソード・オブ・ミカエル》や、《至聖剣デュランダル》に劣らない……最高クラスの近接武器だ……』
『ただ、この剣は精神がマトモな人間には扱えない……ある被験者は、自分の首を自分で斬ったそうだ……』
『……リヴァは被験者になったのか』
『ただ、自分の意志では無い。そういう事か』
『……ああ』
『だが何で……よりによって……リヴァが……!』
『何でだ……!何故この世界はアイツを幸せにしない……!何故虐め抜く……!』
『ヘイリー……』
そして、ヘイリーはエスティアとクエイドの方へ目線を向けて言う。
『もう少しだけ、もう少しだけ撤退を待ってくれ……』
『リヴァは必ず……ここに居る俺に辿り着く……!』
『俺はアイツと一緒に、スプリングフィールドへ帰りたいんだ……!頼む……!』
『『……』』
クエイドはヘイリーの横に座り込み、エスティアはやれやれと言った感じでため息を付く。
『しょうがない、待ってやる』
『けど、私への借りは高く付くぞ?』
『……ハッ。ユダヤ人の鑑だな、エロ学者様』
『ただ……レッドネックの俺に、支払い能力なんざ期待してくれるなよ……?』
ヘイリーは時折市内で光る、黄金色のビームを嬉しそうに眺めた。
※1 スッゲェスケベで大胆な、キッツキツのドレス。マルファお姉さんがとんでもなく露出の多い格好をしています。最高だぜ。是非自信満々にススキノの街を歩いて欲しい。
まーた変態か。
ドMのお次は重力加速で興奮する変態です。
大尉は戦場の空で交わしたドッグファイトが、未だに忘れられないようです。
あと、リヴァさんの単騎特攻スゲェ……純粋な戦闘力で包囲網を突破しています。
突破力はナンバーワンですね。
やっぱり金髪女騎士は王道だなぁ
そして、非常に非常に重要な事ですが、マルファは40を超えています。
年増にはキツい格好をさせてこそ輝くんだ!
タマキン(玉木雄一郎)、アイツは本当の本当に良く分かっている……
お読みくださりありがとうございます。
「面白かった」「続きが気になる」「更新頑張れ!」
「リヴァさんの言葉から、お辛い過去が伝わって来る」「新手の変態だな、戦友!」「露出の多い格好もっとさせろ」「今日のマルファお姉さん怖い」「リヴァさんの勘が鋭すぎる」「マルファお姉さんが余りにも強い」「愛、愛、愛、愛」「ヘイリーいい男だな、そりゃ惚れられる」
と一つでも思っていただけましたら、ブクマ・評価いただけると励みになります。
よろしくお願いいたします。




