最終女騎士アルマゲドン in 旭川(前編)
会えない人に会いに行きたい
だから会えるまで走れる
~富良野市内・富良野ワイン工場周辺~
『……ッ!ここまでか……!』
『いや、ムハンマドの教えに背いた者としては妥当な末路だ……』
怪鳥アルクーフは藻掻きもせず、イチカの介錯を待つ。
『ムハンマドはヤクなんか使わなくても、ナチュラルで神と交信出来たからな』
『だからこそ、聖戦を完遂出来たんだよ』
『まぁ、教典に書いてある言葉になんざ、美しくても意味自体は無いけどな』
『……』
『どうする?フライドチキンになる前に、言い残す事はあるか?』
『……無いな』
『こうなる事をも含めての、聖戦だ』
『そして、麻薬工場は食品工場に偽装してある。破壊するかどうかは自由にしろ』
『……爺さんは?』
『……生きてはいるだろう』
『どこに潜んでいるかまでは、追いきれなかったが』
『そうか』
『……他には?』
『……工場の地下には、アメリカ人との取引である女を拘束してある』
『だが、拘束は絶対に外すな。死ぬ事になる』
『……パンドラの箱かよ』
『……だが、厄災も希望も詰まってない』
『箱に詰まっているのは底無しの狂気だけだ』
『……?』
『まぁ行けば分かるか。じゃあな、怪鳥』
『来世ではシンドバッドでも助けるんだな』
イチカが血の刃を振り抜こうとした、その瞬間だった。
『ねぇ、ヘイリーはどこ?』
『知ってますか?』
『黒い髪、赤い瞳、可愛い女の子』
斬られた男の首を両手に掴みながら、イチカの顔に女の顔が近づく。
アルクーフが叫ぶ。
『逃げろ!!女!!』
『ソイツが例の……』
金髪青目の女は首を手放すと、一瞬で姿を消す。
『《アヴァロンカリバー》起動』
『《夜は私の為に斬られる》』
アルクーフの嘴から脚にかけて一瞬で輪切りにされ、血飛沫と共に吹き飛んでいく。
金髪の女はイチカの耳元で囁く。
『赤い瞳、赤い月、赤い羽』
『アナタは私の妹になりますか?愛と姉妹』
『ヘイリーはきっとアナタも愛します。優しい日々』
イチカは身動きする事も喋る事も出来ず、ただ言葉を流し込まれるしかなかった。
金髪の女はイチカの首元や下腹をさすり、頬と頬をくっつけて言う。
『匂い、覚えました、記憶』
『マイシスター。アデュー』
金髪の女はその場で跳び立つと、宙を蹴って山向こうへと飛び去った。
イチカは思わずその場で腰を抜かす。
(なっ、何だったんだ、今のは……!?)
(ダメだ……!まだ声が出ない……!)
口をパクつかせるイチカに、防衛魔人(仮)は言う。
《……今のは『アヴァロンカリバー』》
《10回前の世界で全人類を斬り尽くした、狂剣よ》
(……!)
(キッカケは……?)
《『バッカスウォーク』の死を間近で見た事》
《……血が干からびるまで斬られた覚えがあるわ》
《思い出しただけでゾワゾワする……!》
へたり込むイチカの側に三人が駆け寄って来る。
「イチカさん!!」
「いっちゃん……!」
「イチカぁ~!!」
イチカは力を振り絞って口を開く。
「ゴメン。腰が抜けて立てないんだ」
「誰か肩貸して」
アイカとレイカが両側からイチカを抱え上げる。
「良かった、いっちゃん……!」
「倒せたんやな、あの鳥公!」
「メッチャカッコ良かったで!」
「流石はイチカさんです!」
「これでお仕事完了です!」
「無事でよかったぁ~~!」
ハルカはアルクーフの羽を拾い、地面に向かって振りながら言う。
「イチカ、この足跡誰の?」
「すんごい地面が捲れてるけど……」
「アヴァロンから来た金髪女騎士かな」
「サーヴァントかなにか?」
「問おう、貴方が私のマスターか?」
「たぬき召喚とか聖杯戦争秒で負けるわ」
「……この鳥にトドメを刺したのはその女騎士だよ」
「いきなりその鳥を殺して私をマイシスター認定した後、頬ずりしてセクハラして何処かに消えた」
「んぎぎぎぎ……一体何処の不届き者が……!」
歯軋りするアイカを余所に、レイカはしゃがんで足跡を確かめる。
「これは剣士の踏み込みや……」
「でも日本のとはちゃう、西洋のや……」
「どんなヤツやった?」
「乳上とサムスを二で割って、エヴァーガーデン混ぜたような感じ」
「ゲームのやり過ぎとアニメの見過ぎや、いっちゃん(ワイの土方はレベル120やけど)」
「ヘタすりゃ今の発言黒歴史確定やで」
「黒歴史は更新していくものだろ」
「『幕末恋華新選組 尽忠報国の士』」
「女性隊員になり切ってプレイしただろ、レイやん」
「ぁぐっ!?」
「や、やるな……流石はいっちゃん……!」
「へぇ~~レイカはそういうの好きなんだ~~!」
「やるねェ……」
「か、勘違いするなや!」
「ワイは新撰組がちょ~~っと好きなだけで……」
「沖田総司を前にしたら?」
「「目瞬きするな!」」
「う~~ん……もうこれは手遅れだな……」
「ですがまぁ、これでお仕事完了!です!」
「つーワケで爺さん捜しに行くぞ!」
「「「おーー!」」」
イチカは腕を上げながら倒れそうになる。
「……ゴメン」
「その前に医者に連れてって。今アイテムの力で出血止めてるだけだから」
「なら闇医者に連れてったるわ」
「芦別に腕の良いスイス人の親子がおるんや」
「ハルちゃん!住所教えるから連れたってーや」
「お、おう!」
「レイやんは?」
「この狂犬とジイさん探すわ」
「そいで、ついでに麻薬工場捜してツブしとくか」
「いっちゃん。何か言ってなかったか、あの鳥」
「確か食品工場に偽装してるってさ」
「良し!ほな行こか!」
「大金までもう一踏ん張りやで!」
「仕事が終わったらパーッと焼肉行こうや!焼肉!」
「……大阪女」
「マズかったら承知しませんからね……!」
「アホか、店選びのセンスには自信あるわ」
「札幌の超一流店ジンギスカン、ガッツリ行くでぇ~~!」
「やった!久々の焼肉!焼肉!」
「頑張ってよかったぁ~~!」
「焼肉かぁ~~」
「一人で焼肉食べてたなぁ……」
ハルカはイチカの肩を支えながら言う。
「もう一人じゃないよ、イチカ」
「私もだけど!」
イチカはハルカに笑顔で返した。
その時、青い流星が満月の下を駆け抜ける。
「お!流れ星……!」
「願い事だ!願い事!」
「イチカさんに××××して#$&%出来ますように……!」
「朝起きたら大金とトッシーに囲まれていたいんや……!」
「ロベール君とレッツファック!」
「や、やっぱりコイツ等ロクでもねぇ……!」
~富良野市上空~
《レナ、電子戦支援を頼む》
《そろそろ旭川市内だ》
《了解!指揮官……!》
クレイエルの駆る《レイヴンズマハト》は、イチカ達の頭上を青い流星となって駆け抜けて行った。
イチカ達に願い事をされている事など知らずに。
~旭川市内・南端~
『……ヘイリーの匂いがする……!』
『やっと……やっと会える……!』
その時、流れミサイルが金髪女騎士に向かって飛んでくる。
彼女は切っ先を弾体に沿わせ、真っ二つにする。
『方向はあっち……?』
『ミサイルミサイル、ホワイトホワイト、ノースノースロケット、スウォームスウォーム』
『北のウサギ、何見て跳ねる?』
女騎士はビルの上を猛スピードで駆け抜け、跳び上がる。
一息付くエレナの目の前に、女騎士が突然現れて告げる。
『アナタはヘイリーの敵?敵??敵???』
『お月様見てレッドレッド、グリーングリーン、極光極光』
『いっ、いきなりなっ、なによアンタ!?』
『てか地上からここまで跳躍して来たの!?』
『私はリヴァ。ヘイリーの大切な恋人。たった一人の運命』
『大切な思い出、スプリングフィールド、橋の下』
『小さな部屋、手品、破れたカーテン、春の陽射し、砂糖入れなくても甘いコーヒー』
リヴァは黄金色に光る剣を振りかぶる。
剣が大きく発光し、得体の知れない粒子が集まっていく。
『《我が麗しき破滅の剣》』
黄金色の巨大なビームがエレナに向かって放たれた。
リヴァさんは基本的に話が通じません。
完全にバグってます。
彼女の言動を理解出来るのはヘイリーだけです。
妹認定おめでとうイチカ。
そして、スプシ更新。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/18yCj9B-CZEpJGIDICTLBSG4K3ASfzvPI7MeKN9sNjkY/edit?usp=sharing
お読みくださりありがとうございます。
「面白かった」「続きが気になる」「更新頑張れ!」
「やっぱ仲間とのやり取りいいなぁ」「北海道で焼肉と言えば!ジンギスカン!ビール!」「ロクでもない願い事ばかりで笑った」「リヴァさんヤバすぎ&怖すぎ」「会話通じない感、壊れてしまってる感が伝わって来る」「おつらい……」「次回が楽しみ」
と一つでも思っていただけましたら、ブクマ・評価いただけると励みになります。
よろしくお願いいたします。




