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現代日本プレッパーズ~北海道各地に現れたダンジョンを利用して終末に備えろ~  作者: 256進法
第一部:イカレた北の大地へようこそ

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ブラッド・ナイトダンサー(後編)

今まではこの血を呪って来た。

でもこれからはその血が武器になる。


観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=pdIkGViSOgw&ab_channel=SymbiontZ


~富良野ワイン工場~


 『知ってるか?クソ鳥』

『《雉も鳴かずば撃たれまい》って言葉が日本にはあるんだよ』

『お前は鳴くどころかクソをまき散らした。撃つだけじゃ済まねぇぞ』


『……!』

『ロシア人の差し金か!!セルビア人!!』


『……お前にはそう見えるんだな。けど、違う(ロズ)

『やっぱ鳥頭だな』

「アイカ、ハルカ、レイカ、今月の夕飯は鳥鍋と手羽先決定だ」


イチカは未だ驚く三人を尻目に、怪鳥アルクーフに向かって飛び上がる。


『──!?』


『飛べるようになったんだよ、私の()でな』

『《夜空に踊る血ブラッドナイト・ダンサー》』


イチカの血の刃が、アルクーフの分厚い胸肉を縦に切り裂く。

怪鳥は鳴き声を上げて態勢を崩したが、イチカに向かって嘴の奥から炎を吐き出して来た。


『カーネルサンダースを見習えよ。事業展開は地道にやるもんだぜ、鳥公』

『《血の城砦アー・ベル・フェレグヴァラ》』


イチカの血の刃と血の羽が盾状に変形し、炎を防ぎ散らした。


『なんだ、その能力アイテムは!?』

『聞いた事も無いぞ……!!』


『そりゃイチカオリジナルだからな』

『今日はお披露目会だから、ハデに行くぜ!!』


アルクーフは急旋回し、鋭い爪と嘴で突撃してくる。

イチカは大きく息を吸い、鮮血のように赤い双眸で、向かって来る巨大な怪鳥を見据える。


『《鮮血の処女狩りフリッスベル・スズーズ・ヴァダスザット》』


イチカの腕と背中から無数の血の棘が飛び出し、アルクーフに向かって放たれる。

怪鳥(アルクーフ)は向かってくる血の棘に気づき、急停止して棘を吹き飛ばそうとする。


『甘いな、イスラム原理主義鳥』

『今日の夜は私の夜なんだ』

『《赤い月と痛みレッドムーン・アンド・ペイン》』


血の棘が空中で集合し、ドーナツのような穴の開いた円を描く。

鮮血の満月は巨大なチャクラムのように飛び、怪鳥の右翼を斬り落とした。


『皆……心配してくれてありがとう……』

『私、孤独じゃ無いんだって判って、本当に嬉しかったよ……』


イチカはアルクーフのもう片方の翼を斬り落としながら、優しく微笑んだ。



~旭川市北端~


『足りない!!足りないぞ、アメリカ人共(アメリカンスキー)!!』

『ですが、作戦は極めて順調です!!マルファ様!!』

『是非ご褒美を!!』


《エゴーリィの戦槌》によって巨大化したヴァヴィロフが、要塞線と陣地を踏み荒らして殲滅して行く。

その隙間からマルファの部下達が、バイクや装甲車両で雪崩込む。

バイクで雪崩込んだマルファの部下達は、次々と市内に侵入してはバイクを降り、ダンジョンアイテムでアメリカ人達を側面から攻撃し始めた。


『……』


市庁舎地下の司令室で、眼鏡の男が映像を見てため息交じりに呟く。


(入念な準備砲撃、バイク兵とFPV・ランセットドローンの利用に、少人数での浸透作戦、そしてダンジョンアイテムの活用……)

(これはウクライナ戦争で完成し、名実共に世界最強になったロシア連邦軍(・・・・・・)を更に昇華させている……!)

(おまけに一方面を防ごうとすれば、更に別の方面から縦横無尽に襲って来る始末だ……)


『……戦線を下げて整理するしかない』

『ヘイリー達の足止めで、《極光乙女》に制空権を握られる事は防げた』

『大佐。撤退命令を』


勲章と徽章を沢山付けた軍人が、専用回線で本国に連絡し始める。

数十秒後、トーシアは驚くべき言葉を耳にする。


『……JCS(統合参謀本部)からは戦線から撤退するな、何としてもロシア人を旭川市から追い出せ、と……』

『これは我々の誇りが掛かっている、専制主義の軍隊に負ける訳には行かないとも』


『……バカな!』

『そんな下らないプライドの為に《ティアマトの残滓》を使えと言うのか……!』

『そんなものココで使えば、どれだけの犠牲が……いや、その前に対価の支払いで我々が全滅しかねない……!』


『富良野に居る彼女(・・)を解放するしかないのでは……』

『《狂女騎士》を使えば連中を押し返せるかと』


『……最悪の選択だ』

『《狂女騎士》は薬漬け状態だ。ヘタに解放して暴れたら、旭川どころか道北一帯が全滅しかねない……』

『しかし《残滓》はコスト的に使用は不可能だ。アルクーフの部下に連絡しろ。リヴァを条件付きで解放しろ、と』


『……了解!』

『最早彼女の気紛れに期待するしかありませんな』

『……!それとクレイエルが出撃した、と三沢から』


『……賭け(ギャンブル)だな』

『《黒い鳥》と《狂女騎士》をそれぞれ《戦槌》と《魔女》にぶつけて、消耗戦を狙うしか無い』

『しかし、もう半分我々は負けているようなモノだ。イラクやアフガンの(てつ)から何も学んでいなかった』


『トーシア部長……』


『この作戦は大統領に話を通していない』

『そしてSNSやダークウェブを通じて、この作戦は明るみに出るだろう……』

『我々は()の展開を考える必要が出てきた』


『まさか……』


『予定は早まるが、合衆国建国以来のクーデターだ』

『トランク大統領相手のな……』


トーシアは光る眼鏡の位置を直し、机に腰掛けた。



~富良野市内~

~地下麻薬工場・収容室~


『……アメリカ人だ』

『あの女を旭川に向けて解放しろ、と』


『……正気か??』

『常人なら死ぬ量の麻薬を使っても、数十分経てば直ぐ狂気(・・)に戻りやがる』

『コイツはアッラーが処分し損ねた地獄の天使だ……』


金髪青目の女性が、拘束具で雁字搦めにされ項垂れていた。


『ヘイリー……何処まで買い物に行ってるの……?』

『ああもう、料理が冷めちゃうのよ……』


女性は微笑みながら、虚空を見つめた。



イチカは本当の意味での、自己肯定感を手に入れつつあります。

そして、それこそが探索者にとって一番必要な資質です。

自分を否定する者に、過酷なダンジョンは生き延びられない。


逆に自分を否定し始めているのがマルファです。

自分の目的(復讐)を肯定する為に積み重ねて来た事が、寧ろ彼女自身を追い詰めつつあります。

自己肯定感の貯金を物凄い勢いで削ってる。それをイチカで緩和してるだけかも。マルファの中で、イチカの存在が物凄い勢いでインフレしてます。


『自己肯定感』という観点から登場人物達を見て頂けると、また違う楽しみ方が出来ると思います。


そう言う意味だと高っちゃんやエレナは無敵ですね。

自己肯定感の塊です。

実はハルカもコッチ側ですね。なので、アラサーたぬきはイチカよりも探索者としての素質が実は高い、とも思っています。何より結構図太い。


そして、お待たせ致しました。

スプシでございます。

どうかお納めを……


登場人物シート:https://docs.google.com/spreadsheets/d/18yCj9B-CZEpJGIDICTLBSG4K3ASfzvPI7MeKN9sNjkY/edit?usp=sharing


これからちょくちょく更新かけて後書きに掲載していきたいな、と考えています。

なお、ランキングに関してはミューゼの主観と偏見によって付けられています。

恐らくイチカより多才な人かもしれない。現状、後方担当だとナンバーワンですね。


そして次回、狂女騎士の圧倒的な暴力が道北に向かって放たれます。

彼女の《病気》がどう言うモノか、それが判ります。


お読みくださりありがとうございます。


「面白かった」「続きが気になる」「更新頑張れ!」

「偶に素に戻るイチカが好き」「マルファの部下達が強すぎる」「眼鏡が結構大変な立場で可哀想」「もう不穏な気配しか無い」「女騎士を何だと思っているんだ貴様は」「オラ、ワクワクしてきたぞ!」


と一つでも思っていただけましたら、ブクマ・評価いただけると励みになります。

よろしくお願いいたします。

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