バーバ・ヤーガのお散歩(中編)
もう完全にFラン探索者チームじゃねぇか……!
観賞用BGM:https://www.youtube.com/watch?v=q6JDLlf2qeE&ab_channel=Underworld
~道央~
~富良野市内・富良野駅前~
「店も殆ど閉まってるし、人は見かけねーし……」
「と言う事で、私達は行き詰ってしまったワケよ」
「ふーん。今、崩壊スターレイルのイベントボス戦で忙しいから、丁度いいや」
イチカはハルカの両頬を摘まむ。
「ハルカくん!お仕事中だよ!」
「ソシャゲはやめようね!」
「ふぁい、ひゅみまふぇんでひた」
レイカは車にもたれ掛かりながら、夜の月を見て酒を呷る。
「いやぁ、美味いわぁ……金賞ボルドー……」
「レイやん!お仕事中だよ!」
「お酒はやめようね!」
「ひゅふぁん、いっひゃん」
イチカは頭を抱えてしゃがみ込む。
「ちくしょう、Fラン高校の学生よりヒドいぜコイツら……!」
「やっぱりアイカだけだよ、頼りになるのは……」
彼女は期待しながら車の中を覗き込む。
「あっ」
「これは……その……違うんです!」
アイカはイチカの替えのシャツを嗅ぎながら、致そうとしていた。
「……もう信頼出来るの自分だけだわ」
「どーすんべ、このダストアラサー共……チームで動くと想像以上にダストだった……!」
「もう完全にFラン探索者チームじゃねぇか……!」
「ムショの塀の上をフラフラと歩く探索チーム、ってのもアリじゃない?」
「ほら、多様性だよ、多様性」
「塀の上どころか、全員ガッツリ塀の奥チームだろうがよぉ……」
「あと多様性はそんな便利な言葉じゃねぇ」
「すまんこ」
「まんこ!まんこにゃ!」
イチカはまたしても、ハルカの両頬を摘まむ。
「今度は雀魂やってんのかぁ~~?えぇ~~っ!?」
「第一まんこじゃねぇ!ちんぽだ、ちんぽ!!」
「これが平均年齢28.5歳の会話か……?」
「教育の敗北を感じるわぁ……」
「敗北の見本が言うセリフじゃありませんね」
「お?やんのか?ワレ、狂犬女」
「銃の代わりにアレ咥えさせたるぞ」
「望む所ですよ」
「尻に刀差して踊らせてあげますから」
「たすけてマルファせんせい」
「イチカちゃん心労でしんじゃう」
「そう言って死んだヤツは居ない定期」
「お!ロンだ!ロン!ローン・パィーズリー!」
イチカはハルカを後ろから抱え、駅の花壇でバックドロップをかました。
「ぱとろなむっ!」
「しゃあっ!出たで!伝家の宝刀、バックドロップ!!」
イチカはさらにレイカを後ろから抱え、バックドロップをかます。
「ほわぃっ!」
「えーっと、次はまさか……」
彼女は靴と靴下を脱ぎ、靴下をアイカの鼻に押し付けた。
「あ"ぁ”ッ(昇天)」
そしてイチカはベンチに座り、タバコに火を点けて言う。
「ハイ。全員そこに整列アンド正座」
「キミ達は、この仕事の危険性を理解してないように見えます」
「え?でも失敗しても成功報酬の2割くれるって……」
「キミはバカかね?ハルカさんや」
「あの魔女のバ…お姉さんがそこまで甘いとお思いですか?」
((ババァって言い掛けたなコイツ))
「いやぁ~……優しいロシア人も居るんだなぁって思って……」
「ようつべがおすすめしてくるゆっくり動画はクソだ、ってはっきりわかんだね。リアル最高!お金が正義!」
「それ、口止め料アンド危険手当なんすよ」
「失敗してトンズラこいたら何処までも追い掛けて殺すからな、という意味合いも含まれております」
「後、それは先生が視てる動画が偏ってただけです。アルゴリズムに操られとりますなぁ」
「ヒェ~~ッ」
「いっちゃん先生、質問があるんやけど」
「ハイ、何でしょうか。そこの酒臭いアラサー女」
「ワンカップが手放せないお年頃ですか??」
「いっちゃん怒ってる……?」
「別に。ただ、全てを破壊してぇ気分だわ」
「目の前のダストアラサー共がしっかりしてくれないと、いっちゃん世界滅ぼしちゃうかもよ?」
「魔王かお前は」
「聖女を魔王にしてるのはキミ達なんだよ」
「自称聖女は草」
「ホラ、アレやろ。筋肉でメイス振り回して、敵の頭潰すタイプの聖女や」
「そろそろ本当に泣くぞ、マジで」
「なけなしの明るさ振り絞ってるんだからね?」
「ホントはよわよわなんだからね?イチカちゃん」
その時、巡回中のパトカーが彼女達の前に近づいて来る。
「イチカさん……ヤバいです」
「警察が来ます」
「おぉ、もう……」
パトカーから警官が二人降りて来て、イチカ達へ話しかけて来る。
「えーっと……アナタ達、ここで何をやっているんですか?」
「キラキラ投資女子の集いです(キッパリ)」
「こうやってお酒飲みながら米国株の動き見て、外の空気吸いながらお話してるんです~~」
「キラキラというよりはギラギラ……」
「おぅふ!」
イチカはハルカの脇腹を肘で付き、スマホの画面を女性警官に見せる。
「という事で失礼しますわ。おほほほ……」
「何故にお嬢様言葉を……」
彼女達は車へ退散しようとする。
だが、レイカの持っていた刀が警官の眼に止まる。
「ちょっ、ちょっと待って下さい!」
「その刀は何ですか!?」
「見れば判るやろ」
「スポーツチャンバラの道具や、道具」
「ワイら女子会終わった後はいつもスポーツチャンバラやんねん」
(レイやん、その言い訳は無理がありすぎるって!)
「では……ちょっと見せて頂けますか?」
「イヤや」
「つか、他人に触らせたくないねんコレ」
「何故ですか?」
「ワイがイヤやからや」
「それ以上の理由が必要か?」
「──!」
警官はレイカの《烈鬼剣兼定》を無理矢理掴もうとする。
しかし、イチカがその前に警官の手首を掴んで制止する。
「マジで斬られるぞ、アンタ」
「相手は剣鬼だ」
「……!公務執行妨害で……!」
「応援を!」
イチカは警官が無線を使う前に素早く肩へ組み付き、絞め落とした。
同時にアイカがもう一人の警官の頭を銃床で殴り、気絶させた。
「結局はこうなるのか……」
「私達は暴力しか使えない、悲しい生き物になってしまった……」
「元からなんだよなぁ」
その時、物陰に隠れた中東系の男達の姿が、イチカの目に留まる。
「……全員、戦闘準備だ」
「今の騒ぎでヤツ等に見つかった。有利な場所まで移動するぞ」
「うぇっ!?マジ!?」
「しーっ……声がデケェ、ハルカ……」
「車で富良野ワイン工場へ向かうぞ」
「大人数を相手にするには駅前じゃ分が悪い」
「……市役所は?」
「……まだ職員が残ってる可能性がある」
「巻き込めない」
イチカ達は車に乗り込み、富良野ワイン工場へ向かい始める。
イチカはバックミラーに映る4WD車の集団を見て呟く。
「……アイカ。後ろを頼む」
「チェイススタートだ」
「はい!」
「レイカ。ハルカ」
「アイカの援護を」
「「──了解!」」
イチカは一気にアクセルを踏み、空の国道をかっ飛ばし始める。
『気付かれたか!!追え!!追え!!』
アイカは追手の車両に対し、ルーフから身を乗り出して引き金を引く。
弾丸は運転手の額を正確にブチ抜き、車はガードレールの餌食となる。
(……なんちゅうウデしとるんや、この狂犬)
(こないなスピードであんな離れ取って、正確に運転手の額ブチ抜きおった)
(負けてられへんな、これは……!)
2台の車両が両脇から、イチカ達の乗るハイエースにぶつかってくる。
レイカは窓を開け、するりとルーフの上に出る。
『──!!』
『態々屋根の上に出やがって!!バカが!!あの女を撃て!!』
追跡車の窓が開き、一斉にアサルトライフルの弾がレイカへ襲い掛かる。
「甘いわ、ダボ」
「血魂飲んでるワイは普通の人間とちゃうんやで」
レイカは眼にも止まらぬ速さで刀を抜くと、自分に迫り来る銃弾を全て斬り落とした。
「お返しくれてやるわ、カス共」
「願うこと あるワケないやろ 火取虫」
刀が炎を纏い、彼女は追い縋る車両に対し、思いきり刀を振り抜く。
炎を纏った斬撃が、敵ごと車を真っ二つにする。
(──!)
(このヤケド女、強い……!)
(そしてそのアイテム……全く侮れませんね!)
「ヒュ~~ッ!やるぅ!二人とも!!」
「イチカ!車の窓ガラス代は後で弁償するから!!」
ハルカはトカレフの安全装置を外し、車内から敵の運転手に向かって構える。
「CoDシリーズで鍛えたウデ見せてやらぁ~~っ!」
ハルカのトカレフが、乾いた鋭い音を立てて窓ガラスをブチ抜き、敵の運転手の脳天を弾き飛ばした。
「やるじゃねぇか!!先生!!」
「私も負けてられねぇぜ!!」
イチカはハンドルを素早く捌き、ハイエースで追手の車両へ体当たりする。
追手の車両は橋ゲタに乗り上げ、富良野川に転落した。
「ダニエル・モラレース級のドライビングテクニックだよ、イチカ!」
「ははは!もっと褒めて!ハルカ!」
イチカは笑いながら更にアクセルを踏み込んだ。
~同時刻~
~旭川市と阿寒町の境~
『ファック!!止まらねぇぞあの水色の甲冑!!』
『ジャベリン持ってこい!!』
『お嬢様とマルファ様に同時に叱られながら踏まれたい!!』
『その欲望だけが今の私を動かしている!!』
ヴァヴィロフに向かって十字砲火が炸裂するが、彼は砲火をものともせず、敵の陣地へ突入していく。
『苦痛!苦痛!!苦痛!!!だがこの苦しさと痛みこそ私の快感!!』
『《エゴーリィの戦槌》!!もっと苦痛を蓄積しろ!!』
彼はアメリカ人の傭兵達を戦槌で叩き潰していく。
『クソッタレのロシア人が!!』
『これでも喰らえ!!』
建物の陰に隠蔽されていた《M2ブラッドレー戦闘車両》の機関砲と、ジャベリン対戦車ミサイルがヴァヴィロフに向かって火を吹いた。
『なんとこれは……最高だッッ!!』
『いいぞ……!いいぞ!!アメリカ人!!』
ヴァヴィロフは隊列の先頭で、猛砲火の全てを受ける。
『やっとくたばったか!?あのイカレ野郎……!』
『ははははははは!!』
『絶好調だ!!私の快感を是非受け取って頂きたい!!アメリカ人!!』
『《解放》!!』
ヴァヴィロフの身体は甲冑と共に、凄まじい勢いで巨大化して行った。
彼は虫を踏み付けるように装甲車両を踏み潰し、石コロを蹴るように陣地を吹き飛ばしていく。
『もっと痛みを!!もっと責め苦を!!』
その時、ヴァヴィロフの視界を一筋の極光が引き裂いていく。
『エ、エレナ様!!』
『おお……!!もっと軽蔑した眼で私を!!』
《全く、こんな戦い早く終わらせて服と靴を買いに行きたいのに……!!》
《しかも変態と一緒に先陣だなんて!!恨むわよ、先生……!!》
エレナはエスティアが上空に張った、光の防御陣へと戦闘機以上のスピードで接近していく。
彼女は旭川市を覆う六芒星に対し、バルディッシュを翳した。
《《極光乙女レギンレイヴ》!!私の輝きでこの六芒星を打ち破りなさい!!》
《気紛れの極光乙女!!》
光と光がぶつかり合い、旭川の空は閃光と極光に焼き尽くされた。
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「女としても人間としても終わってやがる、このアラサー共……」「ちんぽ!ちんぽにゃ!」「アイカ流石」「レイやんの俳句カッコ良い」「ドエロスキー先生射撃上手いな!」「先陣が変態マゾ軍人とはたまげたなぁ」「エレナの戦闘もっと見たい」
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