こんな年増なナースはお嫌い?
大好き
大好き
~翌朝~
~帯広市内・ハルカのアパート前~
「……よし!と……」
「後は引き払いに合わせて家具とかを運び出すか」
「トラック借りなきゃな」
「……業者呼ぶんじゃないの?ノンデリ女」
「よく考えたら、カネが勿体ないなって思って」
「私、大型トラックの免許も持っているし。お前の部屋のブツぐらい楽勝さ」
「うぉ~~……ガテン系女の鑑……」
「いや、助かるけど」
「イチカ引っ越しセンター、開業しちゃおうかなぁ~」
「私はパスで。腰は作家の生命線だし」
「……というか、見た目は良いんだし、Y○uTubeで動画載せて見たら?結構稼げるかも……」
「ちょっと脱げば疲れたオッサン達が入れ食いだって!」
イチカは後ろでイチゴ牛乳を飲んでいるアイカを、親指で差す。
「……あぁ、そういう……」
「載せるならLiveLeakですわ」
「もうサービス終わったけどな」
「家に引きこもっていた時、必ず1日に一度は開いていた気がする」
「暗っ……」
「もう明るい明るいイチカちゃんですから」
「心配ご無用ですよ、ドMドエロスキー先生」
「明るい人は自分の事を明るい、なんて言わないでしょ……」
「私の前では張らなくていいよ、虚勢」
「……ヤバい。理解ありすぎて涙溢れそう」
「遅れて来た青春、今味わってる……!」
「もうちょっと泣くフリしろよ」
「涙出てねーぞ」
「過酷な労働で枯れました」
「でもまだ生理は止ってません」
「途中のコンビニでそんなコト言いやがったら、関係無いフリするからな」
「え~~?」
「女子トークしようよ、もっとぉ~!」
「あのねぇ、女子はもっとオシャレとかそっちの話題でしょ?」
「悪い意味で女子校なんだよ、私達の会話は!」
「あ~~ロベール君、この哀れなシンデレラを助けに来てくれねーかなー!」
「こんな汚いシンデレラ、載せられるのヤンマガぐらいだろ」
「ただアイツらマルタ騎士団とか言ってたから、ロベールも良家の出身かもな」
「多分見習いだと思うけど」
「来ちゃった?人生最大の玉の輿チャンス来ちゃった~~?!」
「ドエロスキーのエロエロえちえちな所魅せちゃうよ!?」
「童顔騎士一人お持ち帰り確定!あざぁっした~~!」
「男日照り過ぎて遂に幻覚が……」
三人はハイエースへ乗り込んで行った。
~正午前~
~札幌市内~
~自衛隊病院・平良一尉の病室~
「それじゃあ私は家に戻るよ……」
「もう無理はしないで、私……耐えられないから……!」
「やっと帰って来たのに……!帰って来たんだから……!」
ベッドに横たわっている平良の側で、白髪の女性が目尻に涙を溜めながら、彼のボロボロの手を握る。
「……すまない。だがこれからは、なるべくお前の隣に居る時間を増やす」
「……キリエ。俺は決めたんだ。お前と子供の未来を護れる王国を、この手で創り上げると」
「これから俺はその為に戦う」
キリエは小指を差し出し、平良も指を出して、絡ませた。
彼女は包帯が巻かれた平良の額にキスをし、病室を去って行った。
彼女と入れ替わりに背の高いナースが部屋に入って来る。
『平良さん、検温のお時間です』
『アツアツで測定不能になっちゃうかもだけど♡』
平良はシーツの中に隠してあった《妖刀悪鬼村雨》の鞘を握る。
「……誰だ(ロシア語……!!)」
「日本人じゃないな、正体を見せろ」
ナースの首から上が別人に変化していく。
「……!!《魔女》!!」
「遂に俺を殺しに来たか!!」
「いえ、今日はお話に来ただけ」
「どう?似合ってるでしょう?ナースのコスプレ」
「一度やってみたかったのよね」
平良は絶句し、鞘を握ったまま《妖刀悪鬼村雨》を置いた。
「《バーバ・ヤーガの盛装》の能力か……」
「全く最悪の組み合わせだ……お前にそのアイテムとは……」
「名実共に本物の《魔女》だ、お前は」
マルファはその場で一回転し、体温計を取り出して平良に迫る。
「《魔女》じゃありません。今の私は看護師長です」
「マルファ看護師長、これから検温を行いますっ♡」
「……正気か!?」
マルファは強引に平良の脇へ体温計を突っ込み、体温を測る。
そして音が鳴り、マルファは体温計を取って見る。
「36.8℃……少々アツアツだけど、正常の範囲ですね、平良さん♡」
「可愛い奥さんですね、お大事に♡」
平良は思わずため息を付き、諦めたような眼で笑顔のマルファを見る。
(……どうやら俺を殺しに来た、というワケじゃなさそうだな……)
(しかし、昔遭った《魔女》と同一人物とは到底思えない……)
「ところで患者様……」
「このような顔の女性に会いませんでしたか?」
マルファの首から上がイチカの顔に変わっていく。
「──!」
「何故お前がイチカを知っている……!!」
「ビンゴ♡」
「やっぱり会ったのね、ダンジョンで」
「にしても……アナタ、分かり易すぎるわ。底抜けの正直さね」
「……ッ」
「醜態を晒している俺に、嫌味でも言いに来たのか……?」
「いいえ。全くの逆よ」
「賞賛しに来たのよ。ヴァチカンへ《防衛魔人の遺伝子》を渡さず、イーチカへ飲ませたのはアナタでしょ?」
「ファインプレーよ。危うく《聖少女》の思惑通りになる所だったもの」
「何だと……?」
「《聖少女》は自らがアイテムでありながら、人の形を取って生きている存在」
「今までの行動を分析する限り、彼女は全てのダンジョンを封印しようとしている」
「確かに危険で封印しなければいけないダンジョンも、ある事にはあるけど……全てってのは幾らなんでもやり過ぎだと思わない?」
「……確かに。俺もダンジョンが切っ掛けで行動を起こした……」
「行動を起こしてなければ、俺は何処かで無力さを味合わされていたかもしれない……」
「それにダンジョンアイテムにはプラスの面もあれば、当然マイナスの面もある。要は……」
「使いこなす人間とバランスが重要、ってコト」
「そういう意味でもアナタはファインプレーなのよ」
「イーチカが飲んだのは運命としか思えないけれど……」
「運命、か」
「その言葉を久しく信じてなかったな、俺達日本人は……」
「……これからどうするんだ《魔女》。次は利尻島を狙っている、と専らの噂だが……」
マルファは平良のベッドに腰掛け、イチカの顔のまま妖しい笑みを浮かべる。
「旭川」
「アメリカ人を皆殺しにするわ」
「魔女は基本的に来る者拒まずだけれど、森に火を付けるような無法者には容赦しないの」
「……なら元敵である俺から一つだけ忠告しておく」
「マルクト社の役員であるトーシアには気を付けろ。連中は《能力アイテム》を使っている」
「たった二人のアメリカ人傭兵に機甲小隊は全滅させられた。連中は既にダンジョンアイテムを使った戦術を確立している」
マルファは指先を青い炎に変化させる。
「……一人はクエイド・オースティン。元デルタ出身の狙撃手。今は猟師をやっているけど、高額報酬目当てでマルクト社と直接傭兵契約を結んでる」
「そしてこの男が非常に厄介なのよ。ヘイリー・クリステンセン。通称、《ジャンパー》」
「この男が加入してから、アメリカ人のダンジョン攻略は大幅に加速した。この男の略歴は不明よ」
「……!!」
「《魔女》にも分からない、となると……」
「最高機密レベルの人物よ」
「軍に居たのか、諜報機関に居たのか、民間で働いていたのか。その一切が覆い隠されているわ」
「彼が《攻略》の切り札ね」
「……やはりアメリカ、人材が豊富だな……」
「その豊富な人材を使いこなせているとは、到底思えないけれど」
「第一、投入が遅すぎるわ」
マルファは立ち上がり、指先を元に戻す。
「……これは個人的な忠告なのだけれど」
彼女の首から上が、茶髪の美女に変わっていく。
「この娘には注意して」
「本物の殺人鬼よ。イチカのコントロールが効く内は良いけれど……」
「いずれ効かなくなるわ。重刑を受けた囚人兵がしていた眼と、彼女の眼は同じだったもの」
「……!!」
「彼女と行動を共にしていたぞ、その女は……!」
「ふふふ。可愛かったでしょう?」
「でも、私にとっては最大の敵よ。いずれ何処かで殺し合うかも♡」
「今日イーチカの家に行くから、もしかしたら今日かもしれないわね」
「……闇の住人だな」
「警察庁や道警も追っているだろう。いずれ国家権力と対決する時が来る」
「イチカが彼女を大人しく引き渡すとは、到底思えないがな……」
マルファは首から上を元に戻した。
「ふふっ。身内同士の殺し合いは、日本人のお家芸では無くて?」
「……それはお互い様だろう」
「お前とて、しくじれる立場じゃないハズだ」
「それに政敵も多い。お前の活躍で、FSBや国家親衛隊の連中は立場が無いだろう。何処かで仕掛けて来るぞ」
「ふふふふ。望む所よ」
「私の部下達は、ロシア各地から集めた精鋭揃い」
「モスクワで椅子取りゲームをしていた連中なんて、敵じゃ無いわ。けど大変ね、お互い……」
「……そうだな」
「また戦場で」
「ええ。また戦場で」
「マルファ看護師長のナースコール、これにて終了です♡」
マルファは手を振り、笑顔で病室を去って行った。
マルファお姉さん一世一代のナースコスです。
女医でも良かったのに敢えてナースを選ぶ所が、彼女らしくて良いですね。
ストレスでおかしくなったわけじゃありません。極めて正気です。多分。
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