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旭浜トーチカダンジョン(後編)





~旭浜トーチカダンジョン・地下3F~


「……なぁ。アイカ」


「……?何です?イチカさん」


「さっきから同じ所回ってないか?」

「もしかしたら、道に迷ったんじゃ……」


「イチカさん」


「ん?」


「道に迷うことも人生の一つです!!」


「正直そのまま人生終わりそうだよ、アイカさんや」

「まさか……ここまでダンジョンさんに悪意があるとはなぁ……」


イチカは水を飲み、マッピング用のメモ帳を開く。


「どっかで引っ掛かってるんだよ、多分」

「ん?待てよ……まさか()か?」


イチカは少し戻り、壁をペタペタと触り始めた。

そして、ガコンという音が何処かから聞こえた。


「ヨシ!やった!!ビンゴだ!!」


「さっすがアイカさんです!♡」


突如、二人の足元が大きく開く。

イチカとアイカは笑顔で暗闇に吸い込まれて行った。



~旭浜トーチカダンジョン・地下9F~


『ハァッ……ハァッ……!』

『ここまで来れば、あの鬼共も追ってはこないだろう……!』


モントヴァンは盾とランスを手放し、座り込む。

そこへ青色の甲冑を着けた20歳くらいの青年がやって来て、水を差し出す。


『モントヴァン様……!水を……!』


『あぁ、済まねぇ……!ロベール……!』

『アイツ等死ぬ事を全く恐れてねェ……!正に走るカミカゼだぜ……!』


白い甲冑を纏った背の高い男が、剣を携えながらモントヴァンへ言う。


『お前程の男が手傷を負うとは……敵は極めて手強いな……』

『連中は必ず我等を追ってくる』

『ロベール。モントヴァンの治療を。《聖少女の首飾り》を使え』


『よ、良いのですか……!?』

『それは教皇様へ納める品のハズ……!』


『構わない』

『教皇様は象徴として、品そのものだけを欲している』

『その効果を問うてはいない』


ロベールは腰のベルトポーチから金色に輝く首飾りを取り出し、モントヴァンの肩に当てた。

モントヴァンの傷は見る見るうちに塞がり、完全に復元した。


『使用回数は後7回……!』

『あの敵達相手に保つかどうか……』

『ラインバウト卿……もうダンジョンから撤退すべきです……!』


だが、ラインバウトは剣を地面に刺して言う。


『ならぬ。このダンジョンは必ず攻略する』

『ここに眠っている《防衛魔人の遺伝子》だけはなんとしても確保し、封印しなければならない』

『ダンジョンの難易度と攻略の報酬は、必ずしも比例しない。だからこそ、早期にこのダンジョンを攻略する必要があったのだが……』


『日本のカミカゼ達も同じモノを狙いに来た、というワケか』

『第2外人落下傘連隊(※1)の元隊員だった俺から見ても、連中の練度は極めて高い』

『いや、元々自衛隊は非常に練度の高い軍隊だった。そこに死地での実戦経験が加わり、更に磨き上げられている……』


迷彩色のフードを被り、狙撃銃を担いだ年配の男がコッキングレバーを引いた。


『……何より、ロシア人の動きが活発化している。《魔女》はまた(・・)暴れる積もりだ』

『このままだと、西欧世界は第二の敗戦を喫するハメになるぞ』

『EU議会のお偉方とそのバックに居る資本家様達には、もう後が無い。そこに付け込んだのが『シルバーステイシス』のリーダー、ベルナルドだ』


モントヴァンが吐き捨てるように言う。


『ケッ。あのコロンビア人マフィア、完全に足元を見やがって……!』

『全く大した信仰心だぜ、教皇庁にまで商売に来るとはよ!』

『ヤツらによるローマのカタコンベダンジョン攻略だけは、何としてでも阻止するべきだった!』


ロベールは水を下げながら言う。


『……ええ。私もモントヴァン様に同意します』

『彼がそこで手に入れた特級アイテム、《終末機甲アポカリュプシス》だけは我々が先に探し出し、封印すべきでした……』

『更に部下のユルゲンが持っている《ゴライアスの大盾》、ティエラの持っている《エデンズスリンガー》、ベルトランの《顔のない英雄》、ミューゼの《ロックハッカー》……どれもA級以上か特級アイテムで、使い方によっては国ですらひっくり返せるシロモノです』


『だからと言って、彼等を捕まえる事も出来なくなった』

『何より彼等は《英雄達の船(アルゴ・ナウティカ)》に乗って移動している。これもダンジョンで得たA級アイテムだ』

『米空軍の追跡すら軽く振り切り、堂々と函館港に入港したと聞いている。東京のアメリカ人達はさぞ歯噛みしているだろうよ』


ラインバウトは通路の奥に目線を向ける。


『……お喋りはそこまでだ、ヴェルナール。来るぞ』

『最強のカミカゼが』


『……ったく。随分と早いな、カミカゼは』

『全く日本人は仕事熱心で堪らない』


平良一尉は、ラインバウト達をハッキリと視界に捉える。


「見つけたぞ、西欧人共……」

「……俺はあの地獄で見て来たぞ!ウクライナでお前達西欧人が何をしたか!!今度は俺達の祖国を滅茶苦茶にする積もりなのは、ハッキリと目に見えている!!」

「そうはさせん……!!させてなるものか!!《妖刀悪鬼村雨》起動!!」


それを見て、ラインバウトも剣を構える。


『あの刀……そして、あの姿……まるで鬼が妖刀を持っている……なんという死の気配だ』

『だがここで死ぬ訳には行かない!!《至聖剣デュランダル》起動!!主よ!!我等に勝利を!!』

『聖少女の御加護を直に受けた我等マルタ騎士団に、敵など無し!!来るなら来い!!サムライ!!』



※1 フランス外人部隊唯一の空挺部隊。隊員全員が空挺技術とヘリボーン技術を有している、精鋭中の精鋭。大体戦地に派遣されるのは彼等。

ヴェルナールはアフリカにもアフガンにも行っています。


ここまでお読み下さりありがとうございました。


「面白かった」「とんねるずの全落オープンを思い出した」「ロベール君好き」「モントヴァンの口の悪さ好き」「ラインバウト卿がカッコ良い」「歴戦の老兵きたな……」「教皇庁も色々と動いているのか」「ちょっとまて聖少女ってなんだ」「シルバーステイシスが結構ヤバい上級パーティーで、興味が湧いた」「平良一尉が完全に護国の鬼」


と、どれか1つでも思って頂けたら、ブクマ・評価・感想頂けると励みになります。


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