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転生したら美少女になりました。~最強魔王は亜人嫁たちとスローライフを送りたい~  作者: 九條葉月


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ドワーフとエルフ


 倒れていたのは人間ではなく、亜人だった。


 一人は口元が完全に隠れるほどの髭を蓄えた男。顔つきはどう見ても成人を迎えた男性なのだが、身長は俺(エリザの身体)の肩程度しかない。いわゆる『ドワーフ』という種族らしい。


 もう一人は淡い金髪の若い女性。気を失っているが美人だということが分かる。特徴的なのが横に伸びた耳。こちらは『エルフ』だそうだ。


 日差しの強い海岸で治療や看病をするのも何なので、俺たちはいったん家に帰ることにした。転移魔法を使えば一瞬だからな。治癒魔法をかけるにしてもベッドの上の方がいいだろう。


 すぐにとんぼ返りすることになったエリザは仕方ないと納得しつつも残念そうにしていたが、意識を取り戻した二人の話を聞いたら即座に元気を取り戻した。


「――素敵ですわ! 対立し合う種族に生まれた男女! 最初はいがみ合っていたのにお互いを知るにつれて育まれていく愛情! 周りに引き裂かれる恋! そして二人で手と手を取り合っての逃避行! 素敵ですわ! 愛ですわ!」


 そういうことらしい。

 昔からドワーフの里とエルフの里は仲が悪く、恋人同士だった二人の結婚は周囲から反対された。そして二人で里を出て、新天地で暮らそうと旅を続けている間に船が難破。運良く二人とも同じ海岸に打ち上げられたらしい。


『……船が難破しているのですから、運がよいのかどうかは分かりませんけどね』


 そう言うなリュア。エリザは「運命の力ですわ!」と大興奮しているんだから。


 しかし、意外だな。婚約者に裏切られたエリザが恋物語に興奮するだなんて。


 ……いや、王太子との婚約なんてどうせ家同士が決めたものだろうからな。家に逆らい、運命に逆らい、二人だけで幸せを掴もうとしている姿はエリザの乙女心を刺激したのだろう、きっと。


 さて。二人の体調に問題はなし。となると二人の今後をどうするかという話になる。


 俺的にはここで暮らせばいいじゃんと思うが、いきなり見ず知らずの人間からそう提案されても困るだろう。するにしても実際に生活してみてもらわないと。


 ケウだって移住を決断するまでそれなりの日数をかけたのだし、ここにはエルフが好むような森なんてないからな。


 もしも二人が旅を続ける場合だが……リュアいわく『ご主人様の転移魔法は規格外ですから。欲しがる人間や亜人は多くいるでしょう。トラブルを避けたいのなら隠すべきです』とのことなので俺が神に見放された土地(アゥフ・ギーブン)の外に連れて行くのは反対された。


 二人がここに住むのなら見せても問題はないらしい。が、今の段階ではまだ気が早いだろう。


 もしここを出て行くなら魔物が蔓延る荒野を突っ切ることになるのだが、二人だけで旅を続けられるだけあって、二人はそこそこ強いらしい。


 試しにD.P.で交換した武器を貸し出して周囲の魔物を狩らせてみたところ……確かに強かった。エルフが魔法と弓で支援しつつ、ドワーフが斧でなぎ倒す。パーティーとしてのバランスもいい。


 うん、問題なく神に見放された土地(アゥフ・ギーブン)を突っ切って旅を続けることができそうだ。


 俺は武器を貸そうとしたのだが、遭難時に金銭を失ったために対価が払えないと遠慮された。

 また、ドワーフの方は力が強すぎるらしく、何度か使ったら斧の柄が折れてしまった。刃こぼれもひどい。


 お金を持っていないのなら旅をさせるのも気が引けるし、なによりもっと頑丈な武器が必要だろう。

 急ぐ旅でもなさそうなのでしばらくここに留まってもらうことにした。




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