思い出か幻
やけに暑い9月
浮き立つ陽炎
指でなぞった
あれもきっと幻
長い長い坂の上
振り返る姿
顔の見えないシルエット
本当
情けないや
泣きながら目覚めた朝
あの日の思い出なんて
とんだでっち上げ
なにも知らない右手には
わずかに残る温もり
誰もいなくなった街
壊れかけのエアコン
生ぬるい風
ふれあうだけだった夜
忘れえぬ美しい思い出
本当
情けないや
指先のササクレ
手を伸ばすたび走る
僅かな痛みが
幻を否定する
たった一つの救い
やけに暑い9月
何一つ残せなかった
過ちに塗れた人生
指でなぞった記憶の中
ふれあうだけだった夜
忘れえぬ美しい思い出
顔の見えないシルエット
本当情けないや