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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
二章・「アソラルセの剣聖」
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阿吽の呼吸


 ちょっと東堂&虎杖ペアを意識しました。

 あれは痛快でしたよね









 突如として現れたメイルはアキラの刀を万力で大きく弾き、瀕死のレギウルスを連れてステップし退避する。


「……無事なのだ?」


「……少しばかり健在とは言い難いが、それでも助かったぞ。 ありがとう」


「それならば、本望なのだ」


 レギウルスは紅血刀にストックされた血液を吸い傷を癒しながらメイルへ感謝の意を明確に伝える。

 ようやくだ。

 ようやく、手の届かない存在だと思い込んでいたレギウルスを自分が助けることができたのだ。


 そのたった一言に勝るモノなどきっとこの世界のどこを探しても見つけることはできないのだろう。

 レギウルスの言葉にメイルは嬉しそうに顔を綻ばせるが、どうやら感傷に浸っている時間すらもありやしないようだ。


「――蒼海乱式・【超新星】」


「ッッ!」


 突如として飛来した弾丸を手負いのレギウルスを連れながら何とか躱す。


「――――」


「残念ながら、馴れ合いは天国でやってくれ」


「……どの口がほざくのだ」


「ハッ。 こりゃあもうどっちが正義の味方かどうか分からんな」


 展開からしても明らかにレギウルスが主人公サイドで、どこからどう見ても自分こそが真の悪役な気がきてきた。

 当然、そのようなことどうでもいいが。

 メイルは荒々しい眼差しでレギウルスを庇うように立ち上がる。


「さてはて。 加勢はちょっとばかり予想外だったから、できることなら帰って惰眠を貪ってくれない?」


「ハッ。 愚問なのだ」


 メイルの瞳孔が開き、体のところどころを硬質な鱗が包み込む。

 レギウルスを圧倒したアキラに怖気づくことはない。

 ――否、それは違う。

 本当は今にも逃げ出したくなるほど震えそうだし、涙腺もかなりギリギリだ。


 だが、これで自分だけ逃げだして、どんな面構えでレギウルスを愛しているのだと言えるだろうか。

 せめて、死ぬのなら自分一人だけでいい。

 だからせめて、レギウルスだけh――、


「おいおい。 勝手に捨て身作戦企てようとしてるんじゃねぇぞ」


「――っ! レギっ!」


「片方だけだから応急処置ぐらいしかできんかったが、戦いに支障はねぇよ。 ――生きるぞ。 二人で」


「もちろん、なのだ!」


 レギウルスが推定アイテムボックスから紅血刀には劣るがそれなりの魔力を感じられる短剣を引き抜く。


「――懐かしいな。 雷喰」


 レギウルスが取り出したのは、刀身がまるで雷電のように黄金に煌めく、雷喰と命名された短剣だ。

 雷喰は魔力を込めずとも常時鮮烈なスパークを放っており、並みの相手ならば触れた時点で灰と化すだろう。l


 それと同時に、レギウルスが初めて握ったアーティファクトの一つでもある。

 

 その数年後に、何の因果か、レギウルスの父親や帝王とやらも使っていた紅血刀を手に入れ、最近はほとんど使っていなかったが、万が一のためと推定アイテムボックスに入れた甲斐があったようだ。


「さぁ――喰らえ、雷喰」


「――仕切り直しと、いったところか」


 そして、紫電と鋼鉄の刃が甲高い金属音を響かせた。















(力量としては、『傲慢』を10とするのならばあの少女はおよそ6~8程度の実力。 だが、それでも連携されると少し厄介だな)


 雷喰が唸りを上げ、周囲一帯を紫電で包み込む。

 だが、それはあくまで魔法の類の過ぎない。

 

「――〈乱反射〉」


「――ッ」


 戒杖刀の特殊能力、「乱反射」が猛威を振るい、迫りくる紫電をそっくりそのままレギウルスへと跳ね返す。

 幾らレギウルスとはいえ数万ボルトものの電流を喰らえば一溜まりもないないことはきっと希望的観測ではない筈。


 そう、当たれば。


「――ハァアッ!」


「ほう……! そうくるか!」


 メイルは紅血刃を足場に、龍人族の脚力と更には『傲慢の英雄』の常軌を遺脱した膂力によって更に加速し、砲弾のように打ち上げられる。

 空気中という最も摩擦の少ない空間故にメイルの勢いは留まることを知らず、猛然とアキラへと飛来する。


 だが、当然アキラにとってメイルは実に都合のいい標的。

 空中で足場を作れるにしても、この距離からの射撃を躱すことは幾らレギウルスであっても困難であるだろう。

 故に――煌爆鎖が猛威を振るう。


「なっ……!」


「オラオラ! そんなもんか!?」


 煌爆鎖は容易く迫りくる弾丸を一掃し、あまりにも強引にメイルの道を切り開く。


 無茶苦茶だ。

 常人ならば、到底真似できないような芸当である。

 だがしかし、二人が共に過ごした日々は永遠に思えてしまうほど長く、故に阿吽の呼吸でさえ容易である。


 お互いの、強い信頼があってこそ成し得る神業。

 メイルはレギウルスが己の進路をどうにか切り開いてくれると、レギウルスはメイルにならば任せていいと。

 そんな絶大な信頼によって生み出される光景は、常識ではとてもじゃないが推し量れない。


「くっ……! 面倒な!」


 やがて、メイルは遂にアキラの間合いへと到達する。


 メイルは翼を展開し巧みな技巧で一瞬で勢いを殺し、そして全身全霊の魔力を込め、その刃を振るう。

 だが当然、アキラ程の武士が反撃をしない筈がなく。

 アキラは巧みに戒杖刀を操り、メイルの頭蓋骨を断ち切ろうと――、


「させっかよッ‼」


「おいおい……! そんなの有りかよ!」


 レギルスは大きく足を踏み出し、雷喰を投擲した。

 砲弾のように吐き出された雷喰はメイルの肌スレスレを通り越し、そしてアキラの戒杖刀へと甲高い金属音を響かせながら激突する。

 そして――、


「ハァァアッ‼」


 メイルの鋭利な刃が、アキラを深々と切り刻んだ。



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