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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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武器破壊こそセオリー


 あかん、更新忘れてたぁ!?

 馬鹿とテスト見てたら忘れてました! すみません!











――世界が、ゆっくりになる


「――――」


 ガバルドは最小限の動作で迫りくる鎖鎌を回避、一発でも弾き喰らえば重症間違いなしの猛攻をいなす。

 それは、流れる水のように流麗な動きだった。

 だが、それでも隠しきれないこの無骨さ。


 レギウルスは目の前に迫りくる男がどのような環境であったかを漠然とではあるが理解し、尚も嘲笑う。

 

「一度、自分と似たタイプとやりあいたくてな。 ――来いよ」


「言われずともっ!」


 ガバルドは膨大な魔力を操り、空気中に含まれた微量の水蒸気を氷結、膨張させそれを弾丸のように放つ。

 氷の弾丸は韋駄天もかくやという速度で背後から急カーブしてきた鎖鎌を弾く。

 

(ふむ。 やはりこれでは倒せんか)

 

 一目見た時から、彼が尋常ではない男だとわかっていた。


 だが、よもやここまでとは。

 相性もあるだろうが、それ以上に己が作り出した必死の殺戮圏内へなんら躊躇なく侵入するその度胸。

 それがただの過信ではないと否応なしに理解できる。


 やはり、この男は強い!


「――ならば、本気を出さねば無作法というものか」


「――――」


「〈煌爆鎖〉――【起動】


 刹那、ガバルドの視界を吹き上がる爆炎が覆った。


 吹き上がった爆炎はたちまち増殖、分裂を繰り返しどこまでもどこまでも拡散され、大樹を灰へと追いやっていく。

 何とか周囲一帯の水蒸気を氷結させ、障壁としたことにより致命的な一撃は避けられたが、今の爆裂で障壁はもうボロボロ。


 それがいつ崩壊しても可笑しくはない。


 ガバルドは、魔力量だけの話ならば『賢者』すら上回る。

 それでもあの域へ届かないのは、ひとえにその未熟さ故だろう。

 『賢者』がある任務をガバルドに課し、それを遂行した報酬にと貰ったリングが、煌々と光り輝く。


 このリングはガバルドが抱えた問題――魔力回路における腫瘍――を強引に解決することが可能なリングである。

 だが、それでも問題は存在する。

 ガバルドの魔力量は既に『賢者』すらも上回っている。


 そんな魔力、無機物が耐えきれるだろうか。

 『賢者』のように、繊細な魔力操作が可能な者なら、話は違ったかもしれないが、あくまでガバルドは初心者と名乗ることすら憚れるような、その程度の魔力操作技術しか持ち合わせていない存在だ。


 必然、無理をすればリングにそれ相応の負荷が掛かる。


(……もって、十分)


 リングのストック自体は腐るほど持っている。

 だが、それを再度付け替える暇をこの化け物が与えてくれるのだろうか。

 

(到底不可能だな)


 氷結魔法に頼れるのは長くておそよ十分。

 そのたった十分の間、ガバルドは『傲慢の英雄』の寝首を搔かなければならないのだ。

 そもそも殺すこと自体が不可能に近い相手に、時間制限という縛りが追加されいよいよ余裕がなくなる。


 だが――、


「――上等」


「それでこそ、英雄だッ‼」


 再び、爆炎が宙を乱舞した。
















 先刻までの戦いである程度あの爆発の原因は理解できている。

 

 ガバルドの「目」は爆炎が吹き乱れる瞬間を目撃していた。

 世界を爆音が支配した直前――鎌が赤熱化していた。

 その直後爆発が起こったのだから、それが無関係でないと断じるの、はあまりに愚策であるだろう。


(さて、どうする……?)


 だが、原因が分かったからといって何かが変わるわけではない。

 現状ガバルドは魔力の流れを妨害する魔法は当然持ち合わせていないし、そんな便利なアーティストも存在しない。

 ならば、どうするか。


 判断を下したガバルドは、疾風のような勢いで滑走する。


 大樹の地面一帯を氷結させ、スケートの要領で加速する。

 流石にあの化け物もガバルドのこの速度に即座に対応するのは難しかったらしく、一瞬迎撃が遅れる。

 そしてガバルドは小さな小さな隙を見逃さず、軽やかに跳躍する。


「ハァアアッ‼」


「おいおい……嘘だろ?」


 甲高い金属音が響いた。

 

 数瞬後、やがてそれは破砕音へ変貌を遂げる。

 ガバルドは鎖鎌が再度爆炎を吹き出す前に、猛烈な勢いで回転し、まるでチェーンソーのように鎖鎌を削る。

 そして――、


「――ぁ」


「オラァ! 流石に接続が切れたら、使い物にならないよなぁ!」


 鎌を繋いでいた鎖にとうとう限界を迎え――両断される。

 その光景を呆然とレギウルスは凝視していた。

 それもそう、この鎖鎌――煌爆鎖は太古から今に至るまで長らく継承されてきたアーティファクトである。


 その性能は文字通りそこらのアーティファクトとは桁違いであり、それを両断など到底不可能だろうと思っていた。

 それが、この有様である。


 レギウルスが呆気に取られていた次の瞬間、唸っていた鎖鎌が一瞬で氷結する。

 爆破して強引に吹き飛ばすことは容易だ。

 だが、それをするには慣れた今でも数秒時間が掛かる。

 もう一人の英雄にとって、その一秒で十分だった。


「ハァアア‼」


「――――‼」


 激烈な踏み込みが大地にクレーターを作り出し、龍ですら屠った片手剣がレギウルスの胸元に一文字を刻んだ。

 だが――無意味。

 この程度の一撃、彼にとっては蚊に刺された程度でしかない。


 鎖鎌を爆破しようとし――、


 一瞬、ニヤッと悪人のように薄い笑みを浮かべるガバルドが見えた。


「――貫け、レアスト」


「――「天穿」・【極天】‼」


 そして、英雄へと極光が降り注いだ。

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