豚畜生
すみません、今日ちょっとした用事で四時までパソコン開けないんで、予約投稿機能を駆使して更新しています。
そんなわけで時間がいつもより三十分早いです。
でも、ストックが……
圧倒的な大気圧により内臓が押し潰され、そして吹き飛ばされる原因となった打撃に頬を盛大に歪ませる。
――認識が甘かった。
あくまで、痛覚は半分程度の自重されている。
それでも、一億の半分が少ない数字だといえるだろうか。
限界のない苦痛に口から大量の嘔吐物を吐き出し、それでもなお衰えることのない激痛に苛まれる。
やがて何かを突き破り減速し、永遠と吹き飛ぶことは避けれた。
だが――猛攻は、続く。
「――大言壮語を吐き散らしておいて、なんたる様なのだ」
「くっ……」
言い返す暇もなく次撃が来る。
明らかに致死の薙ぎ払いが放たれる。
安吾はなんとか獣のような生存本能をフル回転させ、空中に足場を形成し上空へ対比することにより真っ二つは避ける。
呼吸は荒く、今にも倒れそうな倦怠感に苛まれる。
死ぬ、死ぬ、死ぬ。
ただ死神が目の前で鎌を研いでいることだけは、漠然と理解できた。
『――術式改変を使うと、一時的にだがシステムとの接続が切れる。 その状態で死亡したらどうなるか、俺も分からん』
魔術を安吾に授けた男の言葉が脳裏によぎる。
もし、それが本当だとしたら。
最悪、自分は本当の意味で死ぬんじゃないのか。
そんな確固たる恐怖が襲い掛かってくる。
「――――」
「クソがっ!」
振り上げ、竜巻のように回転し旋回する。
全力で後退することにより殺戮圏内から逃れることはできたが、それが何の進展になるとは思えなかった。
救援の可能性はくだらない希望論。
相手の消耗を期待するのは愚の極みだ。
つまり――自分一人しか、いない。
自分が何とかしないと、死ぬ。
なら、何をすればいいかは明白だ。
「――殺せ」
「――――」
すっと、安吾を纏っていた魔力が消え去った。
世界から隔絶されたような妙な感覚が消え、代わりに世界の根本に接続される。
なにせ、たかがかゲーム。
こんなくだらない遊戯で、命を落とすなんて馬鹿々々しい。
何が戦士だ、何が矜持だ。
命は、何物でも取り返すことのできないのなら、そんなくだらないものなんの躊躇なく捨て去ることができる。
だが、そんな腑抜けた考えは敵対者である、少女の一括により吹き飛んでいった。
「――ふざけるなよ」
「――――」
何を、言っているのか分からない。
安吾は困惑したように目の前で対峙する少女を見る。
その端正な顔は、深い憤怒によって彩られ、猫のようだった双眸は剣のように細く、鋭くなっていた。
「――どういう、どういう意味だよ」
身勝手なメイルの憤りに、逆に安吾の頭が熱くなってきた。
何故、軽蔑するような眼差しを向けるのだ。
生に縋ることが、そんなにもくだららないことなのだろうか。
侮蔑の視線に激高し、安吾は声高に吠える。
「――まさに、獣だな、なのだ」
「はぁ? 何が……」
「恥を恥と知らぬ小童め。 お前の目は戦士なんかじゃない。 ――ただの、豚なのだ」
「――――‼」
その言い分に激高し、拳に魔力を込め、忌々しいこの女を黙らせようと猛然と突進してくる安吾を、氷のような冷たい眼差しが射抜く。
「見るに堪えん、なのだ」
「――――」
「一体どのようなカラクリがあるかは知らんが、おそらく魔力を切ると何らかの形でお前は復活するのだろう」
「何故、それを――」
「――その醜悪な顔を見れば、吐き気と共に誰もが理解できるのだ。 そんなことに気が付かないほどの愚者と思ったか、豚?」
黙れ。
何をしてもい。
だから、頼むからその口を開かないでくれ。
そう魂が悲痛な叫び声をあげるが、目の前の少女は更に弾劾する」
「理解してなお、お前が憎々しい。 何故そうも生に縋るのだ? 矜持という概念を知らない、豚に聞いても仕方がないと思うのだが、なのだ」
「黙れ黙れ黙れェ!」
何度も何度も拳を振るうが、そんな拳は少女に掠りもしない。
ただ、目の前の存在を否定したい、なんていう感情に身を委ねるような畜生に、辿り着ける場所なんて無いだろう。
それを世界が肯定するかのように安吾の拳は見切られ、いつのまにやら メイルのカウンターを受けてミンチのように変貌している。
やがて――戦場は沈黙する。
「――ぁっ」
「醜悪、極まりない姿なのだ。 まぁ、豚畜生の類にはお似合いなのだ」
どういうわけかどれだけ安吾のHPが低下しようと、彼は粒子となり、再度生を授かるkぉとはなかった。
もはや、体は体としての機能を発揮せずに、褐色の肌は、今や一つの肉塊のように歪み果てている。
死にたい、でも死にたくない。
そんな得体の知れない感情が渦巻く。
そして、
「そんなに死に腐りたいのなら、好きにするといい。 ――この、痴れ者が」
戦士の矜持を気づ付けた男は、顔面を蹴り飛ばされ、隕石のように上空から落下し――死んだ。




