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VRMMОで異世界転移してしまった件  作者: 天辻 睡蓮
一章・「赫炎の魔女」
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龍に愛された少女


 れをるさん今更ながら最高すぎる











「ぐはっ」


 空中で吹き飛び、激烈な威力に盛大に溶けるするメイル。

 何だこの凄まじい威力は。

 先刻の全力より、尚も強かな拳だ。

 その威力は、まさに『傲慢』レギウルスにすらも匹敵しているのだろう。


「――――」


 メイルは、何とか空中に足場を作り落下死という未来を回避。

 そして、体制を整え、忌々しい敵を睥睨し――再び吹き飛んだ。


「何、がぁっ」


 音速すらも上回る勢いで迫った拳を目を剝きながら、再び大量の血液を胃液を吐き出し、嗚咽するメイル。

 骨が折られたような――実際折られていた――、そんな激痛がメイルを苛む。

 だが、苦痛に浸る暇すらメイルには無かった。


「――その程度か、幹部」


「くっ……!」


 何とかほぼ反射的に拳を逸らすことは成功した。

 次撃すらももろに直撃、なんていう無様な避けられたようだ。

 もしレギウルスの前でそのような醜態を見せてしまえば、メイルはまず迷うことなく自害を選ぶだろう。


 直撃は避けた。

 だが、それでも掌に痺れるようなそんな苦痛が拡散される。

 

「何をしたのだ……!」


「その優秀な脳味噌で考えてみるといい――!」


 踏み込み、目が覚めるような拳骨と蹴撃が無造作に放たれる。

 そこに至るまでの一連の動作、その全てに一切の無駄が存在しなかった。

 洗練された一撃でメイルへ次々と攻撃を決める。

 その事実に歯噛みしながらも、メイルは防戦で精一杯だ。


「――――!」


「おいおい、俺はこんな雑魚にボロボロにされたのかァ!?」


「クソっ、なのだっ」


「ハッ!」


 形勢は一気に逆転。

 先刻までひたすら苦痛に顔を歪ませることしかできなかった安吾が、一方的にメイルを攻めている。

 そこに至るまでの要因は一つ、術式改変とやらだ。


 否、それはあくまで些事。 

 メイルはひたすら安吾の拳を躱し、いなしながらも彼から感じる違和感に首を傾げていた。

 凪いでいる、そんな様子ではない。

 ただ、明らかに彼から圧倒的な異質感を感じるのだ。


 まるで、世界から隔絶されたような、そんん感覚。

 比喩表現ではない。

 本当に、魂そのものがそうと感じるとしかいいようがない。

 この感覚は、どこか魔の力にそっぽ向かれたレギウルスと似たり寄ったりである。


(いや、そんなこと今はどうでもいい)


 今真っ先に考えるべきことは唯一無二。

 当然、目の前の男の吠え面を拝むまでの構図である。

 反撃は、無理、筋力が足りない。

 ならば――、


「――〈龍化〉」


 そして、現世に龍が顕現する。
















――龍。


 かつて、何度も何度も人々の安然を脅かしてきた、まさに天災と言うべき存在なのである。

 当然、そんな龍は人族魔人族問わず、それどころかそこらの小動物ですら本能的に嫌悪し、忌々し気に感じている。


 そんな龍に、子供ができた。

 その赤ん坊は龍からすると小石のような質量をもつ存在だが、それでも一万年先も愛せると自身を持って言える存在だ。

 そして、その赤ん坊こそメイルその人だ。


 龍は、強くあることを望んだ。

 例えどのような苦難が待ち受けようとも、それでもたくましく生きていけるような、そんな力である。

 だが、それでも親心としてどうしても拒絶してしまう。


 故に――龍は、同じ赤ん坊を攫った。


 黒髪の、赤ん坊ながらも目つきが刃のように鋭い赤ん坊だ。

 この赤ん坊はメイカ家の血筋を継いでおり、おそらく彼は未来かの英雄とい同じ、否、それ以上の実力差となるだろう。

 だからこそ、龍は少年と少女を二人一緒にあの路地裏に捨て去った。


 全ては、愛のために。

 愛に報いるために。

 

「――くだらない」


「なっ……」


 眼前で立ち尽くす男がどれほど驚愕しているのか、手に取るように分かった。

 それもそう。

 なんせ、先刻まではシミ一つない柔肌が、今や龍の鱗のような、幾つものの硬質な物質によって覆われているのだ。


 綺麗に切られた爪は、今や野獣を彷彿とさせるような有様となっており、その瞳孔は猫のように細くなっていた。

 

「おいおい、一体どういうワケだ」


「――龍。 その言葉を知っているのか?」


「――――」


 沈黙は、無言の肯定。

 メイルは目を細め、淡々と語る。


「メイルは、龍と魔族の混血なのだ。 まだ完全とはいえないが、このように龍の恩恵を一時的に借り受けることができるのだ」


「そいつはちょっとばかり卑怯だろうがァ……」


「戦場に、卑怯もクソもないのだ」


「違いねェなァ」


 そう苦笑いしながらも、メイルの突然の変化に警戒し、目を光らせる安吾。 

 刹那――メイルの姿が、ブレた。


「――――ッッ‼」


「遅い、なのだ」


 刹那、爆撃と聞き間違えてしまうような、そんな爆音と共に隕石でも激突したかのように衝撃が安吾を襲う。


「――――」


 その圧倒的な打撃に、体の自由を奪われた安吾は衝撃に身を委ねながら、猛烈な勢いで水平に吹き飛ぶ。

 もはやただの打撃で、拳が体を貫通し、ドパドバと、口元や胸から幾筋ものの血筋が溢れかえった。


「さぁ――終焉を味わうのだ」


「――クソ喰らえ、だ」


 

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